各年の状況に応じて「年末調整、確定申告、住民税申告」を使い分けよう

各年の状況に応じて「年末調整、確定申告、住民税申告」を使い分けよう

  • マネーの達人
  • 更新日:2023/01/25

例えば個人事業主については、1月~12月の事業収入の合計額が確定したら、その翌年の2月~3月頃に税務署などで、確定申告(自分で所得税を計算したうえで、その金額を納付する制度)を実施します。

この後に年収などのデータは、税務署から個人事業主が住んでいる市区町村に送られ、それを元にして各市区町村は、1年分の住民税を計算します。

つまり確定申告が実施されると市区町村は、年収などのデータを把握できるため、事業収入があった年の翌年3月頃までに、住民税申告(市区町村に前年の年収などを申告する制度)を実施する必要はないのです。

また住民税の計算結果は毎年6月頃に、個人事業主に送付されるため、その金額を納付書などによって、一括または分割で納付します。

一方で会社員(正社員、パート、アルバイトなど)については、1月~12月の給与収入の合計額が確定するのを待つのではなく、勤務先は1月以降に支払う給与から、概算の所得税を控除します。

また年内最後の給与が支払われる段階になると、1月~12月の給与収入の合計額が確定するため、勤務先は1年分の所得税を計算するのです。

この1年分の所得税と、1月以降の給与から控除した概算の所得税の合計額を比較し、前者の方が多かったら勤務先は、追加で控除を実施します。

一方で後者の方が多かったら勤務先は、取り過ぎた分を従業員に還付します。

このように勤務先が従業員に代わって、所得税の過不足を精算する手続きが年末調整であり、これを受けた方は原則として、確定申告を実施する必要はありません。

年末調整が終わった後に勤務先は、住民税の計算に必要な年収などのデータを、各従業員が住んでいる市区町村に送るため、原則として住民税申告も実施する必要はありません。

また住民税の計算結果は年末調整が実施された年の、翌年5月頃に勤務先に送付され、それを元にして勤務先は給与から住民税を控除するため、毎年6月になると控除額が変わるのです。

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確定申告を実施するとお得になる3つのケース

会社員に対して課税される所得税は、次のような手順で計算する場合が多いのです。

(A) 1月~12月の給与収入の合計額-給与所得控除=給与所得

(B) 給与所得-所得控除の合計額=課税所得

(C) 課税所得×税率-税額控除の合計額=所得税

こういった仕組みのため、例えば次のような状況が生じた時には、その翌年以降に確定申告を実施すると、お得になる可能性があります。

(1) 住宅ローン控除の対象になる住宅を購入した

所定の要件を満たす住宅を購入した時には、(C) に記載した税額控除の一種である、住宅ローン控除を受けられます。

この住民ローン控除は年末調整で受けられますが、控除を受ける最初の年だけは確定申告が必須になるのです。

(2) 支払った医療費が高額になった

一定額以上の医療費を支払った時には、 (B) に記載した所得控除の一種である、医療費控除を受けられます。

また扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除などの所得控除は、年末調整で受けられますが、医療費控除は確定申告を実施しないと受けられないため、この手続きが必要になるのです。

(3) 年末調整の書類に記入漏れがあった

その他の所得控除としては、生命保険の保険料を支払った時に受けられる、生命保険料控除があります。

またiDeCo(個人型の確定拠出年金)の掛金を拠出した時に受けられる、小規模企業共済等掛金控除があります。

これらの所得控除は年末調整で受けられますが、勤務先に提出した年末調整の書類に記入漏れがあって、控除を受けられなかった場合には、確定申告で控除を受けるのです。

以上のようになりますが、こういった税額控除や所得控除を受けると、給与から控除された所得税が還付されるため、お得になるというわけです。

また所得税の還付を受けるための確定申告(還付申告)の期限は、これらが生じた年の翌年1月1日から5年になるため、混雑している2月~3月頃に実施しなくても良いのです。

確定申告を実施する必要がある3つのケース

会社員は原則として確定申告の必要がないのですが、例えば次のような状況が生じた時には、その翌年に確定申告を実施する必要があります。

(1) 年収が2,000万円を超えた

1月~12月の給与収入の合計額が2,000万円を超えると、年末調整はできないからです。

(2) 副業の所得が年間で20万円を超えた

雇用されない内職などの副業の場合、1月~12月の収入の合計額から、その収入を得るために使った必要経費を差し引いたものが、年間の所得(雑所得)になります。

こういった副業による給与所得以外の所得が、年間で20万円を超えた場合には、確定申告を実施する必要があります。

(3) 生命保険の満期保険金や解約返戻金を受け取った

一時金で受け取った生命保険の満期保険金や解約返戻金は、一時所得として取り扱われる場合が多いのです。

また満期保険金や解約返戻金から、これらを得るために支払った保険料と、特別控除額の50万円を差し引いたものが、一時所得になるのです。

ただ (2) に記載したように、給与所得以外の所得が20万円以下なら、確定申告の必要はありません。

そのため満期保険金や解約返戻金から、支払った保険料を差し引いた段階で70万円以下の場合、ここから特別控除額の50万円を差し引くと20万円以下になるため、確定申告を実施しなくても良いのです。

なお配偶者控除の対象になっている妻が、満期保険金や解約返戻金を受けった場合、その年だけは妻の所得が上がるため、一時所得の金額によっては、夫が配偶者控除を受けられない場合があります。

もし要件を満たしていないのに、夫が年末調整で配偶者控除を受けていた場合には、確定申告で夫の所得などを訂正する必要があるのです。

以上のようになりますが、 (2) や (3) に記載したように、給与所得以外の所得が20万円を超えなければ、確定申告の必要はありません。

しかし20万円を超えなくても、住民税申告は必要になるため、所得税と住民税でルールが違うのです。

住民税申告だけは実施した方が良いケース

年の途中で会社などを退職し、その年の12月まで無職だった場合、年末調整を受けていないため、自分で確定申告を実施して、所得税の過不足を精算する必要があります。

退職した年の翌年も無職だった場合には、収入を得ていないため、確定申告の必要はなくなります。

また住民税申告の必要もないのですが、配偶者の扶養に入っている場合などを除き、住民税申告だけは実施した方が良いのです。

その理由としては市区町村が、収入の状況などを把握できないため、次のような恩恵を受けられない場合があるからです。

・ 国民健康保険の減免、国民年金の免除

・ 住民税非課税世帯を対象にした給付金(商品券)

・ 保育所などの保育料の減免

・ 高額療養費制度の自己負担限度額(負担する医療費の上限)の引き下げ

無職の場合には住民税申告の際に、収入などを記入する必要がないため、書類の記入は簡単に済むと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

木村 公司

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