ラジオ番組『セケンテー/ぼくらは囚われない』(ラジオ関西)の2023年5月6日放送回に出演したのは、「一般社団法人生命の食」で代表理事を務める吉田哲也さん。現在、世界や日本で起こっている「食」に関わる動向とこれからについて語った。
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一般社団法人生命の食・代表理事の吉田哲也さん
地球温暖化に歯止めがかからない現状、世界各地で山火事や砂漠化、洪水、干ばつが発生している。多くの人口を抱える中国は災害による食糧難が著しく、食べ物を確保するためにブラジルとパートナー契約を結び、アマゾンに農地を作っている。
アマゾンの農地では化学肥料や農薬を使用する「慣行農業」を行っており、これは日本の99.4パーセントの農家が採用している手法である。この農法は一定の品質と安定した供給が見込みやすいため商品としての農産物を提供できる反面、土に住む微生物を死滅させて土壌を汚染してしまう可能性があるという。
本来の「食」の目的は、自然界の植物と土の世界に答えがあると語る吉田さん。植物は光合成によって作った炭水化物の半分近くを根から土の中に放出しているという。それは、植物が生きていくために必要な微生物を生かすため。微生物の主たるエサは植物が生成する炭水化物であり、そして炭水化物を摂取することで植物に必要な栄養分を作っているのだ。
およそ100兆個以上もの腸内微生物が生きている人間の腸でも、同様の働きがみられるそう。吉田さんいわく、炭水化物を食べることで腸内微生物が人体に必要なものすべてを作ってくれるという。つまり、人体に必要なものを作り出すことこそが食事の目的なのだと語り、「微生物を殺してしまう化学肥料も農薬も、人の手が介入する水やり、畑を耕すことも必要ありません」と付け加えた。
しかし、このような自然農法に取り組んだことのある人々は「うまくいかない」と口々に語る。形やサイズ、虫食いの有無など、商品としての規格に合うものができないからだ。この意見について、「食の目的は命の糧(かて)なんです。腸内細菌のエサになるものを食べることが本当の食事の意味なので、大きさとか形とかは関係ないんですよ」と目的の違いを指摘した。
パーソナリティーのCEOセオ(連続起業家兼アーティスト)は吉田さんの意見に同意し、さらに持論を述べた。
「社会の構造とすごく似ているなと思う。たとえば、顔・肌がきれいといった、いわゆる憧れの象徴になるようなことって社会の評価じゃないですか。生きていくうえで必要かというと、別に必要じゃないですよね。本質ではないんです。本質よりも社会での立ち場に重きを置くということは、社会に食われちゃってるんです。本質を見失っているということなんですよ」(セオ)
商売という観点からみても、大多数が採用している慣行農業の持続性には疑問符がつくという。
「国際金融資本の株主たちが化学肥料メーカーから資金を引き揚げていることをうけ、世界的に化学肥料が作られなくなっているんです。基本的に化学肥料は天然ガスから作られていて、作る工程で大量の電気を使用する。つまり、地球温暖化の最たる原因なんですよね。彼らはそこから資金を引き揚げ、『炭素(カーボン)クレジット』(温室効果ガスの排出削減量をおもに企業間で売買可能にする)という新たなもうけの仕組みを作ったんです」(吉田さん)
今後、食の安定した供給が不安視されるなか、我々はどうしていけばいいのだろうか。
セオは「もう概念を変えなければいけないんですよ」とひと言。さらに、「一家に一畑みたいに、買うんじゃなくて自分で育てるということ。ビジネスではなく『自分で食べるものは自分で育てる』というエコシステムにしていかないか、というのが吉田さんの提唱」とコメントを残した。
「いわゆる自給自足の時代に入った」と吉田さん。「自分たちにとっての本当の意味での食材、つまり腸内細菌のためのエサを食べませんか、という啓蒙活動を行っております」と、改めて同法人の目的を明言したうえで「(人体に必要なものを)作るのは微生物ですからね。人間ができるお手伝いはたったひとつ。野菜の邪魔になる雑草を刈ってやる、それだけです」と語った。

一般社団法人生命の食・代表理事の吉田哲也さん(写真中央)、『セケンテー/ぼくらは囚われない』パーソナリティーのCEOセオ(同右)と田中大貴(同左)
※ラジオ関西『セケンテー/ぼくらは囚われない』2023年5月6日放送回より
ラジオ関西