「そろそろ酒やタバコは控えたら」そんな医者や友人のアドバイスは適当に無視したほうがいい

「そろそろ酒やタバコは控えたら」そんな医者や友人のアドバイスは適当に無視したほうがいい

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2022/05/14

健康のために酒やタバコは控えたほうがいいのか。生物学者の池田清彦さんは「35年以上、毎日酒を飲み続けているが、僕は元気だ。アルコールの分解能力には個人差が大きいので、自分の体で判断することが大切だ。医師に言われたからと酒を我慢してストレスがたまったら、かえって健康を害する」という――。

※本稿は、池田清彦著『病院に行かない生き方』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Seiko※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Seiko

連続飲酒記録1万2806日でも元気

僕は35歳の頃から毎日酒を飲んでいる。記憶している限り、最後に酒を飲まなかったのは、1987年の2月のことだ。

この日、肝臓がんで入院していたおふくろの見舞いに行ったのだけど、しばらくして急に容態が悪くなり、そのまま朝まで付き添うことになった。だから酒が飲めなかったんだよね。もちろんその晩は酒のことを考える余裕などなかったけど、翌朝になると幸いにもおふくろは持ち直し、ほっとひと息ついたその時にふと、「ああ、昨日は酒を飲まなかったなあ」と気づいたわけだ。

それ以来、今日まで酒を飲まなかった日は一日もない。連続飲酒記録はすでに35年1カ月以上、日数に換算すると1万2806日以上続いている。最近は、この記録を伸ばすことに意地になっているような気がしないでもないのだけれど、記録が伸びているということは、ずっと健康に過ごせているということの証でもある。自分で言うのもなんだけれど、これはなかなかすごいことではないかと思う。

毎日飲むといっても、60歳を過ぎる頃からは大量に飲むことはなくなった。350ミリリットルの缶ビール1本に日本酒少々、ワインを少々、焼酎を少々、という程度だからたいした量ではない。日本酒に換算すれば2~3合というところだろう。それくらいの量は、僕の体のアルコール分解能力の範囲内に十分収まっていると見えて、二日酔いはしたことがない。

それなのに、「週に2日は休肝日を作ったほうがいい」などと、わざわざ助言をしてくる人がいる。僕は滅多に医者には行かないが、行けばそういう話になりかねない。だから自分のほうから酒の話をすることはない。医者に聞かれても、のらりくらりとかわすようにしている。

おせっかいな助言をしてくる人や医者は、口を揃えて「体のためですよ」などと言ってくる。でも、毎日飲んでいたって体に不調はないんだから、別に問題はない。

むしろ、酒があるおかげで元気でいられると僕は自認しているし、もっといえば僕にとって酒を飲むことは生きることなので、それを制限されてしまったらストレスを抱える可能性だってあるし、寿命が縮まってしまうかもしれないんじゃないかと思うくらいだ。

医者は「平均的なこと」しか言わない

ただし、これはあくまでも僕の話である。「休肝日など作らずに毎日酒を飲むのが正しい」と言いたいわけではない。中には毎日1合程度酒を飲むせいで体調を崩す人もいる。例えば、アルコール分解酵素が十分分泌されないタイプの人は、アセトアルデヒドの分解が遅れ、二日酔いになりやすかったり、食道がんになりやすかったりする。

そういうタイプの人もいるというだけで、誰もがそのリスクにさらされているわけではない。人間には個人差というものがあるのだから当たり前だ。

一方、医者というのは平均的なことしか言わない生き物だ。

酒の飲みすぎに注意して、週に1日か2日は休肝日を作っている人のほうが、平均的には健康を維持しやすいというのは正しいかもしれないけれど、だからといってすべての人がそうだというわけではない。平均値を盾に、同じことを全員に当てはめようとするのは、マイノリティを抑圧しているに等しいと僕は思う。

個人差を無視したアドバイスを鵜のみにするのは危険

僕みたいに毎日好きな酒を飲んでいても取り立てて問題などない人もいるし、僕以上に浴びるくらいの量を飲んでも平気な人だっている。そうかと思えば、ちょっと酒を飲んだだけで具合が悪くなってしまう人だっているのだから、絶対の正解などないはずだ。タバコに関しては、若い頃は1日60本から多い時は90本くらい吸っていたが、33歳の時、一切やめた。タバコを吸うと止まらないほどの咳が出るようになり、「このまま吸い続けているとそのうち死ぬかもしれないな」と思ったからだ。

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写真=iStock.com/ChrisAt※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ChrisAt

ただし、これももちろん僕の話である。「酒はいいけど、タバコはやめたほうがいい」ということでは決してない。例えば、友人の養老孟司は僕とはまったく逆で、体に合わなくなったと言って、60歳くらいの頃に酒を飲むのはやめたようだが、タバコはずっと吸っている。

酒もタバコも健康の敵のような言われ方をするが(一般的にはタバコのほうが分は悪そうだ)、それが本当に敵であるのか、仮に敵だとしてどの程度の敵であるかは人によって違う。世の中で健康の常識とされていることはさまざまあるが、そんなものは平均的にいえばそうだという単なる一般論であって、誰にでも当てはまるわけではない。

自分が少数派のほうである可能性だってあるのに、平均的な話でしかない医者のアドバイスや世の中の情報をただ鵜呑みにすれば、かえって逆効果ということだってあり得ると思う。

自分の体で判断しよう

自分の体にとって、何がよくて何がダメなのかを最終的に判断する基準は、医者とかメディアとかが引っ張り出してくるデータなんかじゃない。だって自分の体の一番の専門家は自分なんだから。それなのに、世の中の平均値ばかり気にして、自分の体で本当に起きていることにあまり目を向けない人がびっくりするほど多い。

自分の体からのSOSが出ていないのなら、医者になんと言われようと無理してそれに従う必要なんかない、と僕は思っている。もしもタバコをやめた時と同じように「このまま飲んでたらそのうち死ぬな」と感じたり、明らかに酒が原因の病気になってしまったら、さすがにやめるかもしれないが、とはいえ僕はもう33歳ではない。好きなものを我慢してまで長生きしたいかと言われたら、そうでもない気もする。

実は養老さんも、2020年の夏に心筋伷塞を患って一時入院し、その際に軽い肺気腫も見つかったので、タバコはやめるようなことを言っていたが、2021年の夏に会った時にはまた吸い始めてたよ(笑)。

多少、体にガタがくるとしても、うまいと感じているうちは好きな酒を飲み、適当なところで死んだほうが、無為に長生きするより幸せだ。そんなことを考えながら、僕は今日もうまい酒を飲む。

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写真=iStock.com/JohnnyGreig※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JohnnyGreig

ストレスのほうが体に悪い

健康診断というものも、僕はもうかれこれ20年近く受けていない。他人のデータと比べられて、その平均値から外れているからって、ごちゃごちゃ言われるなんて冗談じゃない。

風邪をひいてうっかり医者に行った時、「一度くらいはやっといてください」としつこく言われてしまい、渋々血液検査に応じたことがあるのだけど、すぐにそれを後悔した。僕のHDLコレステロールの値が160mg/㎗くらいあって、検査技師が「こんな人は見たことがない」と言ったようだ。男性の基準値だと上限が86mg/㎗だから驚くのは当然かもしれないけど、見たことがないと言われてもねえ(笑)。

そもそもHDLコレステロールというのはいわゆる善玉コレステロールなので、数値が多少高くても特に問題はない。でも、検査技師や医者にとっては、「平均から大きく外れている」ことは大問題らしく、「もしかしたらお酒のせいかもしれないから、2週間断酒して、そのあと、再検査しましょう」なんて言ってきた。

それで数値が下がれば「数値が高いのはお酒のせいだから、これからもっと控えましょう」などと言い出すに違いない。健康上の問題はないのに、なんで数値を下げるだけのために、食生活を改めなきゃならないのか僕にはさっぱりわからない。

それから医者には行っておらず、もう5年以上が経過しているが、特に数値を下げるための努力など何もしていないから、おそらくHDLコレステロールの値は相変わらず高いままだろう。それでも、この通りピンピンしている。

もしも医者の言いなりになって生活を改めていたら、数値は正常の範囲内に収まったかもしれないが、酒が飲めないストレスでむしろ別のところで具合が悪くなっていたかもしれないよね。痛風持ちの知り合いは、尿酸値が上限値ギリギリの時に痛みが一番出て、上限値を少し超えると痛みがすっとなくなるらしい。でも、上限値をちょっとでも超えたらすぐに数値を下げる薬を飲まされるから、結局、痛みが増すのだそうだ。わざわざ薬を飲んで“正常値”にしたら具合が悪くなったなんて悪い冗談みたいな話じゃないか。

「統計的異常=不健康」ではない

例えばたくさんの人の血圧を測り、横軸に低いほうから高いほうまでの血圧をとって、縦軸にその血圧を示した人数をとれば、グラフはだいたいベル型の正規分布という形になる。これはつまり、平均値あたりの血圧の人が人数的にはもっとも多いということだ。統計的な判断としては、中心あたりにいる人が「正常」で、極端に低い数値や高い数値が出た両端のほうの人は「異常」である。つまり、平均値から外れれば外れるほど、「異常」だというわけだ。

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池田清彦著『病院に行かない生き方』(PHP新書)

中央から外れた10%を異常とするか、5%を異常とするかは、単に趣味の問題だからそれは別にどちらでもよい。

ただし、これはあくまでも統計的な「異常」であり、それが異常だからといって「健康ではない(あるいはその可能性が高い)」という話ではない。

「平均から外れている」こと自体は、統計上の「客観的事実」だといえるけれど、健康か病気かの絶対的な基準なんてものは実は存在しない。その方面の権威とされる団体(学会など)が「この辺から先は病気ってことにしよう」と恣意(しい)的に決めたものを「基準」ということにしているだけだ。

「基準」から相当外れていても(血圧が極端に高い)異常を自覚しない人もいるし、さして外れていない(血圧が少し高め)のに頭痛がひどいという人もいるよね。つまり、医者がいう「基準」による「異常」と、健康状態における「異常」は必ずしも一致しないというわけだ。

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池田 清彦(いけだ・きよひこ)
生物学者、評論家
1947年、東京都生まれ。東京教育大学理学部生物学科卒。東京都立大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。専門は、理論生物学と構造主義生物学。早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」への出演など、メディアでも活躍。『進化論の最前線』(集英社インターナショナル)、『本当のことを言ってはいけない』(角川新書)、『自粛バカ』(宝島社)など著書多数。
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池田 清彦

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