
すべてが超一流の大谷翔平(時事通信フォト)
成績のみならず、注目度、契約額からその一挙手一投足に至るまで、すべてがMVPの称号に相応しいと言えるだろう。エンゼルスからフリーエージェント(FA)となり、12月上旬にも来季の所属先が決まりそうな大谷翔平(29)。ストーブリーグの決着より一足先に世間を驚かせたのが、「総額6億円グラブ」の寄贈だった。
【写真】明るいブラウンと黒のツートンカラーのグラブ。大谷翔平が日本国内のすべての小学校に寄贈したもの
大谷は日本国内のすべての小学校、約2万校に低学年用グラブを3個ずつ配布することを自身のインスタグラムで発表(右利き用2個、左利き用1個)。今年12月から来年3月にかけて順次配送されるという。スポーツ紙のMLB担当記者が語る。
「大谷の次の契約は、総額10年6億ドル(約900億円)規模になるとみられています。実現すれば、米国4大スポーツ史上最高額となる。
ただし本人はどこまでも野球一筋で、手にした大金の使い道がほとんどない。寄贈したグラブの価格は非公表ですが、1個1万円程度で総額約6億円とされる。とはいえ、来季からの年俸に比べれば大した金額ではないのでしょう」
グラブは、今年から大谷が契約を結んでいるニューバランス製。国内スポーツメーカーの営業担当者は、寄贈の“経済効果”は大きいと話す。
「小学生の低学年用グラブだと、軟式用で定価は5000~1万円程度ですが、原価は2000~3000円程度。6万個で1億2000万~1億8000万円と見積もれます。仮にニューバランスが寄贈の主体になったり、その金額を広告費として投じたりしても、これほど大きな宣伝・広告効果は得られなかったでしょう。スポーツ紙やテレビ局がこぞって報道しましたからね」
大谷はプロ入り前の花巻東高校時代からアシックス製のグラブ、デサント製のウエアを使用してきた。昨年まで契約していたアシックスに代わってニューバランス製のスパイクを着用したのは今春のWBCからだ。
「今年2月に発売されたニューバランス製のスパイクは大谷人気で高校球児の注目を集め、高野連の規定で高校野球の公式戦では使えないことが騒ぎにもなった。今後は大谷モデルのグラブも発売されるとみられ、そちらも間違いなく売れる。アシックスは地団駄を踏んでいるはずです」(同前)
お金だけでなく名誉も
経済効果だけではない。今回のグラブ寄贈は「大谷の一流メジャーリーガーとしての覚悟の表われでしょう」と指摘するのは、メジャーリーグ評論家の福島良一氏だ。
「億単位の寄付は日本では珍しいかもしれませんが、一流選手が慈善団体などに寄付することはメジャーでは伝統的に行なわれています。
慈善活動でよく知られるのが、元パイレーツのロベルト・クレメンテ(1934~1972年)です。出身地のプエルトリコやラテンアメリカ諸国に、野球道具や食料品などを提供して尊敬を集めましたが、1972年の大晦日にニカラグア地震の被災者に支援物資を運ぶ際、チャーター機がカリブ海に墜落して還らぬ人となりました」
メジャーでは古くから、最も社会貢献をした選手に「コミッショナー賞」を授与してきたが、クレメンテの没後、その功績を称えて「ロベルト・クレメンテ賞」と改名。同賞の受賞は、MVPに匹敵する名誉とされる。
すでにメジャーMVPを手中にした大谷だが、慈善活動にも熱心だ。メジャー1年目の2019年オフには、米国で心臓移植手術を目指す心臓病の少年を見舞ったことで多額の寄付金が集まった。2021年、選手会が選ぶ年間MVPとア・リーグMVPに輝いた際は、賞金7万ドル(約1050万円)全額を、闘病中の子供たちを支援する団体「ミラクルズ・フォー・キッズ」に寄付している。
「メジャーの一流選手は寄付に熱心で、親族を代表とする基金を立ち上げるなどしてチャリティー活動にあたるケースも多い」(スポーツジャーナリスト・友成那智氏)というから、大谷もその系譜を意識するのだろう。
世界の“超一流”たろうとする大谷。その移籍先候補として、MLB公式サイトは「8球団」を挙げて特集した。
「メッツでの千賀滉大(30)との日本人コンビも期待されましたが、可能性の相場観は2割程度と低そうです。マリナーズ、ジャイアンツ、パドレス、レンジャーズも候補だが、なかでもロサンゼルス・ドジャースが最有力で3割程度でしょうか。エンゼルス残留の可能性もあるとみられています」(前出・友成氏)
最有力のドジャースにせよ、エンゼルス残留にせよ、米西海岸の大都市・ロサンゼルスのファンは歓喜するに違いない。メジャーのトップたる超一流選手に相応しい活躍の舞台となるだろう。
※週刊ポスト2023年12月1日号
NEWSポストセブン