
相撲ドラマ『サンクチュアリ』が話題(Netflixシリーズ『サンクチュアリ ─聖域─』独占配信)
「角界をぶっ壊す!」──Netflix日本オリジナルドラマ『サンクチュアリ ─聖域─』が日本のドラマ界で“番狂わせ”を巻き起こしている。配信からわずか4日間で累計視聴時間900万時間を記録、世界50以上の国と地域で「今日のシリーズトップ10」入りを果たした。業界からも絶賛の嵐。本作の魅力を、コラムニストの今井舞さんに語ってもらいました。
【物語のあらすじ】
主人公はカネのためだけに入門した、大相撲に一切興味なしの力士「猿桜」。やる気もなく稽古もさぼり気味、先輩に盾を突くクズっぷり。しかし、自分の才能に自信をつけ、次第に大相撲にのめり込んでいく──土俵の世界を取り巻く熱き人間ドラマが“ガチンコ”で展開。
【語ってくれた人】
今井舞/週刊誌を中心に活躍するコラムニスト。歯に衣着せぬ批評で注目を集める。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)など。
大相撲を舞台に、極限までリアルを追求した作品『サンクチュアリ-聖域-』。この作品について今井さんは、
「正直いわゆる女性好みの作品ではないと思います。主人公は暴力的でモラルゼロ。画ヅラも汗と血と砂だらけで、見ているだけで口の中に鉄の味がしてきそう。胸を強調したホステスの恋人など、女性の描かれ方も、地上波ではまず見られないスタイル。でもこうした点を『タブー』扱いし、気を使いながら作品作りをしているのは日本の地上波ドラマだけ。
海外では、『面白い作品を作る』という当たり前の目標に向かって心血が注がれます。配役も作品にふさわしい俳優を選んで当てはめていく。『今度の月9の主演は〇〇』なんちゅう、主役ありきで進めていく日本の地上波ドラマじゃとうてい適わない、作り手の本気が伝わってくる中身の濃さ」(今井さん・以下同)
と語る。
今作の特筆すべき点は、配信開始直後からの海外での評判の高さだろう。
「外国人の“スモウレスラー”への関心は高く、土俵の上の神様を奉るシーンや、親方たちが集う会合、特殊な稽古の様子や食事のとり方など、画ヅラの一つひとつがエキゾチックでミステリアスに映っているのではないでしょうか。
ストーリーの進み方のテンポもよく、説明せりふなしでも人間関係や過去などが見る側にきちんと伝わる。エピソードの要素の入れ方、意外性の演出、伏線の張り方と回収。すべてにおいてお見事。緻密な計算のもと構築された筋書と、腕に覚えありの役者たちによる渾身の演技は、視聴者を経験したことのない世界に誘ってくれます」
『サンクチュアリ』のここがすごい
今回のために古い体育館を改装し、まるまるセットとして作られた。
「劇中では『国技会館』となっていますが、まるで本物の国技館のような空間作りになっています。相撲部屋のごちゃついた雰囲気づくりもリアルの一言。各部屋のお金のあるなしが、情景ひとつで伝わってくるのも素晴らしいです」。
肉体改造から撮影まで、2年半もの時間をかけて作られた本作。猿谷役の澤田賢澄(写真)は、九重部屋の元力士。
「力士の体のぶつかり合いの音からしてすごい。砂と汗と血まみれの肉弾戦を縦横無尽に捉える土俵上のカメラワークも斬新」
オーディションで選ばれた役者たちは、本物の力士に近づけるため肉体改造と稽古から始めたという。
「回を追うごとに一ノ瀬ワタル(猿桜)の体が出来上がっていき、1話と8話では仕上がりのレベルが違います。擦り傷や肌荒れ、サポーターの巻き方のリアルさも相まって、全員ホントに力士にしか見えない」
・名俳優たちで脇役をがっちり固めた名演技も見逃せない!
「最高の作品を作り上げるために演者全員が100%の力を出し切れる現場がそこにある。
見ている側にも伝わってくるその熱量と演技力に、圧倒されることうけあい」
自由奔放な猿桜の母親役を余貴美子が熱演。
「ベージュのオバサンパンツが大開脚で丸見えになる乱闘シーンにしびれました。自分をきれいに見せようという気が1ミリもない女優魂が、ただただカッコいい」
龍谷部屋のタニマチ・伊東役を笹野高史。
「記者を“脅す”場面。常に柔和な笑みを浮かべ、穏やかな口調で、恫喝するような言葉は一言も発してないのに相手を震え上がらせる。こういう脇のキャラクターの見せ方も実に秀逸」
染谷将太演じる清水は、相撲愛にあふれながらも体格に恵まれずもがく。
「誰より主人公を理解し寄り添う、猿将部屋になくてはならない存在。先輩力士の断髪式で、相撲甚句を謳い上げるシーンは、思わず胸が熱くなります」
猿将部屋を目の敵にする犬嶋親方役の松尾スズキと、馬山親方役のおむすびのコンビに太鼓判。
「嫌〜な小悪党になりきった松尾さんと、子分扱いしている巨漢のおむすびさんとの凸凹コンビの掛け合いの小ネタがたまらない!」
※女性セブン2023年6月8日号
NEWSポストセブン