アップルは本当に電気自動車を作るのか

アップルは本当に電気自動車を作るのか

  • ASCII.jp
  • 更新日:2021/01/14
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Jp Valery

本連載「“it”トレンド」では、情報技術、コミュニケーション、特に我々の生活に密着するテクノロジーについて触れております。できるだけミライを見据えながら、我々が新しいアイデアを生み出すサイドに立てるよう、一緒に考え、議論していければと思います。

ということで、新年最初は自動車の話題です。

●米国ですらクルマを持たない生活もありえた

筆者は米国で初めてクルマを手に入れるまで、東京で過ごしている限りにおいては自家用車を持っていませんでした。しかしUber普及以前にカリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアに引っ越したこともあり、クルマのある生活を送ってきました。

筆者はテクノロジーを中心に記事を書いていますが、こどもの頃からクルマが大好きで、高校時代「自動車部」なる部活に所属し、高校1年生の頃からキャンパス内のコースで乗用車に乗っていました。そんな私ですら、もしも2012年以降に引っ越していたら、確実に自家用車を持たない生活をしていたと思います。

日本の半分以下の金額とはいえ、駐車場の費用もバカになりませんし、そのコストで10回は街中を移動できるわけで……。また別にお酒がそこまで好きではない方ですが、お酒を飲んだら運転できないわけで、せっかくナパバレーなどのワインどころが近いのに、雰囲気を楽しんで帰ってくるだけじゃ、さすがに切ないですよね。

それぐらい、Uberが普及した米国のクルマ社会は、「クルマを持たなくてもなんとかなる社会」に変貌してしまったわけです。

米国から東京に戻った後も、結果的には引き続きクルマを持つ生活をしているわけですが、日本と米国では、道の広さを筆頭に、一度の移動距離の長さ、そして代替手段の有無など、自動車事情の違いがありました。

日本の場合、一度の移動距離が長い場合に自動車が登場し、短い場合は徒歩や自転車、電車、バスなどで用事が済みます。日本では車が使えなくてもなんとかなりますが、米国ではどうにもならない場面が少なからずあるわけです。

たとえば果樹園のある街のど真ん中では、タクシーはもちろん、Uberをつかまえることも難しく、動けなくなることもありえます。代わりに、道端に止めてある自動車を利用できるインスタントなカーシェアサービスも存在していて、代替手段については一長一短です。

●テスラ躍進

2020年、テクノロジーと自動車の話題で最も注目すべきは、テスラの躍進でした。

イーロン・マスクCEOは5年前に、2020年に50万台を製造し、顧客に届ける(デリバリー)という目標を立てました。結果、2020年末までに50万9737台を製造し、49万9550台をデリバリーしたことを報告しています。デリバリーはわずかに450台欠け、目標達成ならずという結果ではありました。こちらは速報値とのことで、今後修正される可能性もあります。

目標未達とはいえ、わずか450台。そもそも5年前には、テスラが継続して拡大していくこと自体、懐疑的に見られていたことからすれば、大きな成果を得ることができたと言えるのではないでしょうか。

今年は角張った特徴的なデザインのピックアップトラック「Cybertruck」、乗用車最速をうたう高級セダンModel Sの高性能バージョン「Plaid」、そして上海で製造される小型SUVのModel Yと、次々にリリースが進んでいきます。また、昨年10月には完全自律運転(Full Self-Drive、FSD)のベータ版をリリースしました。

人気を博す車種の登場と自動運転に近づいていくその性能で、テスラの魅力が高まっていくことが考えられます。

●Car as a Service

テスラはFSDを実現するハード自体は備えていて、顧客がオプションとしてそのソフトウェアを有効化するという選択肢を与えています。2020年7月には、その価格を1000ドル近辺まで引き上げましたが、イーロン・マスク氏はこの機能を「7000ドル以上の価値があり、将来10万ドル相当になる」としています。

そもそも、自動車の機能をソフトウェアのオプションで設定すること自体がユニークである点は、かねてから指摘されてきました。

自動車は基本的にオプションとカスタマイズのオンパレードです。ベースのモデルをできるだけお手頃にして、マーケティングをする際の最初の価格を低く宣伝できるようにする手法があります。エンジンのグレード、電動●●の追加などで価格が数十万円単位で上がっていく仕組み。しかも、買うときにそれを選ばないと、後付けできないオプションもたくさんあります。ボディカラーとか……。

一方、社格と価格は連動するという発想から、「小さくても高級車」を標榜する上級ブランドの小型車の場合、スタートの価格は高くても、その分装備が充実しているパターンもあります。結局、何がついていて、何がついていないのか、精査しなければ分からない、というのが実際のところです。

そういう売方を、ソフトウェアでやっているのがテスラです。ハードウェアは備えていて、オプション料金を払うとその機能が使えるようになる仕組みに、先述のFSDも含まれていて、その価格は年々上昇している、というわけです。

●Apple Carのアイデア

年末、アップルの自動車が2024年にもやってくる、というニュースが出てきました。また、実はテスラがアップルによる買収を持ちかけていた、という話も。とにかくシリコンバレーでは、アップルと自動車を結びつけたがっている印象すらあります。

確かにシリコンバレーでは、レクサスRXにセンサーをたくさん積み込んだ、アップルの自動運転車の試作版が走行している様子が目撃されています。しかしアップルがどこかの砂漠に自前のテストコースを用意したり、アップルブランドの自動車を作り始めているというニュースはまだ目にしていません。

筆者は、アップルが本当に自動車を作るのか、依然として懐疑的な見方をしています。

というのも、数年前、「アップルがテレビを作っている」という話が出ました。確かに2019年のWWDCでは「ProDisplay XDR」という、60万円のプロ向けディスプレーは登場しましたが、テレビではありませんでした。 一方、2019年3月のイベントで、Apple TV+を発表した際、ソニー、Vizio(米国の低価格テレビのトップブランド)、Samsung、LGといったスマートテレビに直接Apple TVアプリを用意し、セットトップボックスとしてのApple TVがなくても、アップルの映像コンテンツが楽しめる環境を整備しました。

アップルはハードウェアではなくソフトウェアを作ることで、同等の体験をより広く展開する戦略を採ったのです。 自動車についても、このパターンを採用し、Apple Carアプリが動作する自動車を拡大させていく戦略が現実解になりうると考えました。その際、アプリが自動車のどの程度の深度まで入っていくのか? が注目です。

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筆者紹介――松村太郎

1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログTAROSITE.NETTwitterアカウント@taromatsumura

松村太郎 編集● ASCII

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