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自分から本を手にとってほしい、どの本を選んだらいいのかわからない……。読書にまつわる、さまざまな親の悩みについて小学校の司書歴24年の金澤磨樹子先生に答えてもらいました。発売中の「AERA with Kids 2023年春号」(朝日新聞出版)から一部抜粋してご紹介します。【写真】ミュージシャンの坂本美雨さんが子どものころどっぷりはまったという本はこちら
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Q いつまでも絵本ばかり読んでいていいの? 絵本から幼年童話に移行するタイミングと、おすすめの幼年童話を教えてください!
A 1・2年生には絵本を。幼年童話はシリーズものがおすすめ
まず前提として、小学校1・2年生には「絵本を読んでね」と伝えています。親御さんは早く文字の多い本を読んでほしいと思ったり、長めの本を借りたがったりする子もいますが、うちの学校では「借りられる3冊のうち、2冊は絵本、1冊は好きな本」がルール。
理由は二つあります。一つは自分だけで最後まで読み終わるものを読んでほしいから。もう一つは、子どものときに絵を見て空想の世界で遊んでいないと、字ばかりの本に挫折しやすいからです。
なので、小学生になったから幼年童話を読ませなきゃと思わなくて大丈夫。文字からだけでなく絵本の絵を見ていろいろなことを感じとっている時期を大切にしてほしい。子どもが「これ読みたい」と絵本を持ってきたら、「もっと字が多いものにしたら」と言わずに尊重してくださいね。
読み聞かせも同じ。親は大変ですが、子どもが自分から「もういい」と言うまでは卒業しなくていいのです。読んでもらうと子どもは絵に集中して、いろいろな発見をする。何度もかみしめたいところもある。字を読む練習をしているわけじゃなく、目に見えない世界を想像できる子になってほしいと思って読み聞かせします。
そして、3年生くらいになって、幼年童話も楽しめそうだなと思ったら、シリーズものがおすすめです。おもしろいと思えば次々読みたくなり、本にハマるきっかけにもなる。字も絵も大きく、ストーリーは単純であることがポイント。本のかたちをしているので、読み終わると自信がつきます。
Q ゲームやYouTubeに夢中で、読書にまったく興味がありません。本のおもしろさを教えられるような本はありませんか?
A 低学年は言葉遊び、中高学年は「科学」がキーワード
どのご家庭でも、ゲームやYouTubeとの付き合い方は試行錯誤の真っただ中。動画やSNSから紙の本に連れていくのは、至難の業です。だから苦肉の策ですが、ここでは「遊び」の本を中心に紹介します。
低学年には、「お話」というよりも言葉遊びみたいなものからどうでしょうか。ページを開いて絵をじっと見たくなるもの、つい言葉を口に出したくなるもの。最初は興味のあるページだけ、親子で一緒に読むことがおすすめです。
中学年以降になったとき、読書をすすめるうえで効果的なのは、親以外の人のおすすめです。友だちや担任の先生が「これ、おもしろかった」と言ったものは、読んでみたくなるもの。周りの友だちに「好きな本ある?」と聞いてみたり、図書館で「〇年生におすすめ」というコーナーに寄ったりしてみてください。
高学年になったら、よく見る動画の好きな分野の本や、映画化された本を提案してみてください。また、最近は「科学」がキーワード。科学ものの本は、うちの学校でもすぐに借りられてしまう人気ぶりです。
私は24年前から子どもたちに本をすすめる仕事をしていますが、SNSの有無に関係なく、家に本のない環境の子は、何もしなければどんどん本から離れます。ただ、子ども時代に本に触れてきた子は、大人になってもYouTubeや動画を楽しむのと同じように、本も読む。子どものときは興味がなくても、本に触れた経験はちゃんと体に残ります。
Q 小3男子のジャンルの偏りが気になります。別の分野をすすめるときのポイントはありますか?
A 身近な他人に、おすすめの本や好きな本を聞いてみる
一緒に図書館に行って、3年生におすすめの本を司書に聞いてみたり、友だちと好きな本を貸し借りしてみたりするのはどうでしょうか。他人からのおすすめは興味がわきます。私からの具体案としては、図鑑しか読まない子は物語よりノンフィクション好きのことが多いので、図鑑のような児童書がおすすめ。例えば写真絵本 『タコとイカはどうちがう?』(ポプラ社)など、知識が詰まった本を。歴史漫画しか読まない子は、好きな時代の別の人物を主役とした本や、タイムスリップものを。いま6年生では『白狐魔記 源平の風』(偕成社)が大人気です。ただ、本の味わい方は自由。好きな分野をじっくり読めることは、ひとつの才能です。
※「AERA with Kids 2023年春号」ではこのほか、幼児童話のあと無理なく手にとれる児童書や、読書が苦手な子が楽しめる本などを紹介しています。
(取材・文/AERA with Kids編集部)
〇かなざわ・まきこ/東京学芸大学附属世田谷小学校司書。週に1度、図書の授業で児童に本を読み、読書を習慣化する。いかに子どもたちに本を手にとってもらえるかを考え、本好きの子も本が苦手な子にもそれぞれに合った本を紹介している。
AERA with Kids編集部