
金属製部品の多いクルマにはサビがつきもの。小さなサビなら特に問題ないと思いがちだが実はそうではない! 今回はクルマにとっていかにサビが危険なのかを知り、サビ防止策やサビてしまった部品のケアを考えていきたい。
文/長谷川 敦、写真/Adobe Stock、写真AC
■そもそも「サビ」とはなんなのか?

金属のカタマリともいえるクルマ。そして鉄を多く使っているためにサビやすいという宿命がある。少々雑に扱っていると、アッという間にサビだらけになってしまう(mino21@Adobe Stock)
まずはサビが発生するメカニズムを簡単に説明する。
クルマに使われている素材で最もサビやすいのは鉄。鉄はフレームやエンジン、ボディなどのさまざまな部分に使用されている。
金属は空気中の酸素や水分と化学反応を起こして酸化し、酸化物となる。これが「サビ」だ。鉄で発生した赤サビは、そのままにしておくと内部でも進行して穴あきの原因になることもある。
酸化が起こるのはなにも鉄だけではなく、アルミやマグネシウムはむしろ鉄よりも酸化しやすい。だが、アルミのサビでは素材そのものに穴があくような事態にはなりにくく、鉄に発生する赤サビのほうがアルミやマグネシウムのサビより厄介だといえる。
クルマが雨などで直接濡れて、さらにそれを放置しておけば一気にサビてしまうが、ガレージに置いておくだけでも空気中の水分などでサビる可能性があるのは知っておいてほしい。
■クルマがサビるマズい条件

ガードレールを擦るなど、ちょっとした接触でできた傷でもそのままにしておくと一気にサビが進行する。だからこそ、サビが小さなうちに対策を行いたい(Markus@Adobe Stock)
では、クルマのサビはどの部分にどのような原因で発生するのか? ここから具体的に紹介しよう。
●ボディにできた傷から発生
うっかりガードレールや壁を擦ってしまったり、あるいは走行中に飛び石が当たったりなど、ボディの一部が傷つくことはままある。それによって塗装がはがれていると、表面に露出した場所がサビてしまう。
●潮風によるサビ
海岸沿いに停めているクルマはサビやすいという話を聞いたことはないだろうか? これは都市伝説ではなく、実際に潮風が原因でサビが発生することはある。
潮風には海水由来の塩分が多く含まれているが、この塩(塩化ナトリウム)がサビの発生を促進する。塩分は吸湿性が高く、空気中の水分も取り込んでしまうため、最終的にサビの原因になる。
●融雪剤もサビの原因に
道路に積もった雪を融けやすくして、走行を可能にする融雪剤(凍結防止剤)。この融雪剤に含まれる塩化カルシウムも吸湿性が強く、クルマの表面を濡れたままの状態にする。
融雪剤によるサビは、主にクルマの下回りで発生する。そのためサビの進行に気づきにくいというのも問題だ。
ここで紹介したもの以外にもクルマをサビさせる要因は多数あるが、次項ではクルマがサビるとどういう問題が起こるのかを見ていこう。
■放置しておくとこんなにアブナイ! クルマにできたサビの恐怖

小さな傷から生じたサビは、やがてその面積を広げていく。最後には鉄板に穴をあけてしまうケースもあるので注意が必要。早めにサビを除去するのが得策(Trik@Adobe Stock)
まずはボディの一部がサビてしまったケース。
これはなにより見た目が悪くなる。サビ=劣化というイメージはどうしてもあり、サビが生じたクルマが古臭く見えてしまうのは否めない。さらに赤サビは進行するものなので、そのまま放置するとサビの面積は増えていく。
続いてブレーキ回りの鉄部品がサビた場合だ。
これは当然ながら制動力の悪化につながる。ブレーキディスクがサビて摩擦力が低下したり、サビによってブレーキの動作部品の動きが悪くなったりなど、制動が利かなくなったクルマは危険きわまりない。
サスペンションを構成するパーツのサビも危険に直結する。サスペンションは車体を支える重要なパートであり、これがサビて劣化すると、本来の性能を発揮しないばかりか破損してしまう可能性もある。
排気管やその周辺パーツのサビも脱落の可能性があって危険だ。最近ではあまり見かけなくなったが、以前は排気管を保持するパーツのサビによってマフラーが脱落し、それを引きずりながら走るクルマの姿もあった。
もし走行中に排気管が脱落すると、後続車を危険にさらす可能性も十分に考えられる。
■自分でもできるサビ防止の方法とサビの除去

サビてしまったボディのリペア。まずはサンドペーパーを使って表面のサビを削り落とす。そこからサンドペーパーを徐々に細かいものに変えて表面を平滑にする(Ekaterina Varnakova@Adobe Stock)
最後はクルマをできるだけサビさせない方法と、サビができてしまった場合の対処方法を考えていこう。
サビは金属が空気中の水分と反応して起きるというのは先に説明した。つまり、クルマを保管する際は、なるべく乾燥した状態にしておくことが望ましい。
そのため貴重なクラシックカーなどは空調完備のガレージに保管されることが多いが、一般のドライバーにとってこれは現実的ではない。
屋根付きガレージでクルマを保管するのが理想的だが、屋外駐車、特に海辺に停めている場合は、なるべく頻繁にクルマを真水で洗車するのがお薦め。
凍結防止剤が撒かれた路上を走行した後は、特にクルマの下回りを水で洗浄しておきたい。これをやるとやらないのとでは大きく違う。
しかし、努力むなしく愛車にサビが生じてしまったときは、状況に応じてケアを行いたい。
ボディが傷ついて、そこからサビてしまったケースでは、まずはサンドペーパーや市販のサビ取り剤を使ってサビを除去する。
続いて露出したボディの金属表面をコンパウンドで磨き、タッチペイントなどでボディと同じ色に塗装する。カラーペイントの前にサビ止めペイントを塗っておけばなおよい。
ボディと同じ色でペイントするのは、見た目を元どおりにするとともに、サビの再発生を防ぐ効果もある。サビた部分が大きく、うまく塗装できないのであれば、専門業者に依頼するのが確実だ。
問題はクルマの下回りやブレーキにできたサビで、これは一般ドライバーにはいかんともしがたい。ブレーキクリーナースプレーで簡易的なクリーリングはできるものの、これで万全とはいいがたい。
もし、下回りや足回りのサビを発見したら、やはりディーラーや整備工場などの専門家に相談するのがベスト。もちろん料金はかかるが、安全にはかえられない。
マフラーのサビは、表面だけならサンドペーパーとサビ防止剤で対応できるが、サビの侵食が進んでいる場合は新品への交換が無難だろう。
ちょっとだけだと思っていても、クルマにできたサビから重大なトラブルが生まれるケースもある。常日ごろから愛車のコンディションには注意を払い、必要に応じてケアをしておくことが、自分だけなく周囲への安全配慮にもなる。
【画像ギャラリー】見つけたら即対処!! サビの放置は命取り(13枚)
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