
高知空港(画像:写真AC)
既存施設改修で対応
高知県は、訪日客の増加を見込み、高知空港に国際線ターミナルを整備する方針を固めた。
【画像】えっ…! これが60年前の「高知空港」です(計11枚)
2025年開催予定の大阪・関西万博を見据え、既存施設の改修をメインにした整備を行い、同年10月の運用開始を目指す。国内線との共用施設として活用していく方針で、整備費用は19億4800万円を見込む。高知空港は現在、国際線に必要な施設がなく、台湾との定期チャーター便の就航では、仮設の施設で入国審査などの業務を行っている。
高知龍馬空港・航空ネットワーク成長戦略検討会議が取りまとめたアクションプランによると、現ターミナルビルでの国際線の受け入れに向け、地方空港での水際対策に関する税関・出入国管理・検疫所の各官署の対応についての情報収集や、国内線・国際チャーター便運航時に対応可能なグランドスタッフ体制の構築・維持に向け、人員のマンパワー不足の解消を急務としている。

高知空港(画像:写真AC)
国内線も活用可能なターミナル
現ターミナルビルの課題として同検討会議は、
・さらなる国際チャーター便の受け入れが困難である
・そもそも国際定期便を受け入れる施設がない
ことを挙げている。
国際線の需要喪失リスクを踏まえ、施設整備では可能な限り簡素化し、国際線を主体としながらも国内線も活用可能な新ターミナルを整備する。同検討会議整備部会では
「県民の理解を得るためには、事業規模がひとつの論点になる。必要最小限の施設として、どのような施設が整備できるか検討したい」
といった意見や、
「国際線が週1~2便利用し、それ以外の時間帯は国内線に利用できる施設等、現ターミナルの窮屈さ解消にもつながる方向で検討できればよい」
といった声が上がっている。

高知空港(画像:写真AC)
恒久的な施設整備
高知空港に国際チャーター便が就航する場合には、ターミナルビルに国際線用の施設機能がないことから、通常国内線で使用しているターミナルビルの一部を間仕切りで区切って運用している。
待合スペースや検査スペースが不足するといった旅客利便上の課題のほか、旅客間仕切り対応のため、国際線専用のターンテーブルや保安検査機がない、間仕切りの設営撤去にマンパワーを要するといった、施設の制約から生じる課題もある。新たな仮設施設を別の場所にまとめて整備することで、乗客の利便性を高めたり、スタッフの作業の効率性を上げたりする。
また、
・すでに多くの海外からの乗客を受け入れている
・当面も受け入れる見通しがある
ことから、仮設とはいえ、従来より相当充実した体制を整える意向だ。浜田省司知事は
「2年後の万博の年以降は、恒久的な施設整備に切り替えていくことを視野に、当面の対策として、今のチャーター便の受け入れを念頭に置いた体制の充実を図っていきたい」
としている。

高知空港(画像:写真AC)
インバウンド誘致で需要創出
国際チャーター便の誘致目標について同検討会議は、運航目標の年間200便(100往復)に対して、他県の事例を参考に、収支計算の最低ラインを
「年間100便(50往復)」
程度と想定。海外の航空会社が定期便化の転換点としている100便(50往復)以上の需要を確保するために必要な、国際定期便にも対応可能な新たな施設の整備が必要であるとの認識を示している。
また、国際定期便化への取り組みとして、県産業振興計画で掲げる外国人延べ宿泊者数の目標である30万人の達成に向けた一層のインバウンド誘致により、路線の定着と安定した需要の創出を目指す。
このような狙いから、国際チャーター便の受け入れ拡大に向けた新ターミナルビルの整備に関しては、国際線の就航見通し等に不確実性があるため、リスクヘッジの観点から、さまざまな整備手法の検討を進めてきた。

高知空港(画像:写真AC)
国際チャーター便の定期便化実現化
高知空港の国内線発着路線の搭乗実績は、2022年4月以降回復傾向にあり、2022年度は2021年度比
「182.1%」
となっており、コロナ禍前の2019年度と比較しても
「82.8%」
となっている。
同検討会議は、国際チャーター便の受け入れに必要な最低限のターミナルビル機能を整備し、その後の航空需要を見ながら、追加の整備を検討していく。空港関係者からは
「現状は国内線も混雑するなかで、国際線の受け入れ業務を維持していくことは難しい」
といった声も聞かれる。県は、チャーター便を当面続け、できるだけ早く定期便化を実現するためのハード面の整備を進める。

高知空港(画像:写真AC)
23年度乗降客数125万人を見込む
乗降客数は、1997(平成9)年度の195万人をピークに高速バスなどとの競合や路線の廃止などにより減少が続き、2011年度には東日本大震災の影響でジェット化後ボトムの115万人となった。
大阪線は1995年度の89万人をピークに自動車利用者の増加等により伸び悩み、格安航空会社(LCC)就航や神戸線の就航にも関わらず2019年度は33万人と大幅に減少した。
一方で、東京線は成田へのLCC就航もあり、2011年度以降右肩上がりで増加、2019年度は106万人となった。結果、2019年度の乗降客数は、新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、156万人の利用があった。2020年度の乗降客数は、新型コロナの影響が続き、開業以来最低の対前年度比108万人(69.3%)減の47万人にとどまった。
2021年度も、相次ぎ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されたことで搭乗客数の回復は思わしくなく、2019年度比84万人(54.3%)減の71万人となった。2022年度は全国旅行支援事業などもあり、対2019年度比37万人(23.9%)減の118万人。2023年度の乗降客数は、対2019年度比30万人(19.6%)減の125万人を見込んでいる。
矢沢幸彦(交通ジャーナリスト)