「SDGsの“夢”に敗れて...」 地検特捜に狙われたテクノシステム事件の「全貌」

「SDGsの“夢”に敗れて...」 地検特捜に狙われたテクノシステム事件の「全貌」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/10
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SBISLに業務停止命令

金融庁は、6月8日、SBIソーシャルレンディング(SBISL)に業務停止命令を出した。同社は、再生エネルギー会社のテクノシステム(横浜市)に、ネット経由で集めた投資家の資金を貸し付けていたが、テクノ社は募集時の資金使途とは違う用途に流用、金融庁は金融商品取引法違反と断定した。

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photo by gettyimages

既に、東京地検特捜部は、4月末までにテクノ社と関連先を家宅捜索、5月27日、同社の生田尚之社長(47)を、融資詐欺の疑いで逮捕している。現在、詰めの捜査を行なっており、6月16日の勾留期限までに、別ルートの融資詐欺事件や政界ルートを見据えた事件に伸ばすか、あるいは起訴して事件を一度、中断するかを決める。

テクノ社事件は、特捜案件になったことと、小泉純一郎元首相を広告塔に使っていたことで話題を集めたが、それに加えソーシャルレンディング(SL)という金融形態に、事実上の“引導”を渡す結果にもつながった。

SLは、業者がプラットフォーム上に太陽光発電、不動産開発などの事業を開示、10%内外の利回りを謳うもの。数万円から投資可能ということで投資家の人気を集め、ブームとなった17年には業者が乱立、1年間で1300億円を集めた。

しかし、高利を約束し、それだけの金利を払って事業を成し遂げ、売却するか金融機関の融資に切り替えられる案件は多くない。SBISLの前にも、みんなのクレジット、ラッキーバンク、エーアイトラストといったSL業者が金融庁の行政処分を受けて退場。

18年7月、SLを最初に立ち上げた業界最大手のmaneoマーケットも業務改善命令を受け、SLという金融業の最後の“拠り所”となったのが、SBIホールディングスの信用力をもとにしたSBISLだった。

だが、5月24日、SBISLはテクノ事件を受けてSLからの撤退を表明。約150億円の特別損失を計上して、投資家への未償還元本の償還など残務整理に入っている。

業務停止命令はダメ出しともいえるもの。事件化以降、SBISLはもちろんSL業界にも甚大な影響を与えた生田容疑者は、無節操な事業展開、高級クラブでの豪遊、海外カジノでの蕩尽などが報じられ、「詐欺会社のとんでもない経営者」と、批判されている。

だが、生田容疑者を会社立ち上げの頃から知る経営者は、「水処理から始めて食に行き、エネルギー分野に進出してSDGsに行き着くまでは目の付け所が良かった」という。

「発明家で事業家の父親の後を継ぐつもりで学生時代から各種資格を取るなど“頑張り屋”だった。詐欺事件を起こして、『SDGsはカッコだけ』と批判されるが、本人は真面目に取り組んでいた。問題は太陽光などを始めて急成長、いろんな人間が寄ってきて制御しきれなかった。それも本人の経営者としての能力不足ではあるけど、会社にいい人材を集められず、SBIなどに利用された」(同)

事業の成長と“孤独”

生田容疑者は、日大工学部を卒業後、10年間、大手電気会社で働いた後、09年、テクノ社を設立する。

父親が特許を持つ特殊ポンプ技術を応用、海水淡水化装置を作ってシリーズ化。次に充填ポンプの活用などで、カレーやシチューなど具の入った料理に対応可能な施設 「デリシャスサーバー」を開発する。さらに「水」と「食」の事業費を稼ぐために事業化していた太陽光パネルの設置を、太陽光発電ビジネスとして大規模化、「電気」の分野に進出した。

『SDGsが地方を救う』という著書を著し、会社パンフレットに会社の使命を<水、食、電気を安心・安全に提供し続け、社会貢献することです>と謳い、日経新聞で小泉元首相と<自然エネルギーには夢と希望がある>と題して対談するのは、年商160億円を達成、上場を目指していた生田容疑者の「SDGsで会社をブランド化する」という作戦だが、本気で取り組もうとしたのも確か。

ただ、設備IDや地主の承諾書などを材料に、再生エネルギーとSLで、いくらでもカネが集まる仕組みにハマって、転落を始める。

老舗太陽光業者が解説する。

「投資家はネットを信じ、SL業者は事業会社にカネを貸し付け、金利を取ればいいから、まともなチェックをしない。いい加減な事業計画がまかり通り、事業規模だけはドンドン大きくなり、配当を支払うために事業をデッチ上げる自転車操業に陥って破たんする。その“ワナ”にテクノもハマったということ」

設立後、4~5年は、売上高数億円で推移していたものが、太陽光などに本格進出した15年頃から急伸して売上高100億円を突破、16年に105億円、17年に117億円となり、18年と19年は160億円だった。テクノ社元幹部は、急成長に社内体制が追いつかず、「まるで統制が取れていない状態だった」という。

「急速に人員が増えて横の連絡がつかない状態。途中入社の幹部には生田社長より年配者が多く、経験も積んでいるので自転車操業で危ないことはすぐにわかる。でも、みんな『個人保証を入れ、最終的に責任を取るのは生田社長』と、自分の仕事をこなすだけ。会社の将来なんて、誰も考えていない」(同)

「オーナー会社なんてそんなもの」といえばそれまでだが、生田容疑者は孤独だった。

生田容疑者の「言い分」

SBIホールディングスが、「取引先(テクノ社のこと)の重大懸念」を公表、「調査のために第三者委員会を設置する」と発表したのは2月5日だが、それからしばらくして、筆者は生田容疑者に会った。

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写真はイメージ(photo by iStock)

「言い分」を聞くためだが、その際、生田容疑者は粉飾や流用など、現在、指摘されている不正を否定したうえで、SBIグループとの親密さを強調した。

「SBISLの窓口となっているのは、コンサルタントの玄海(インベストメントアドバイザー)で、そこにもSBISLにも管理料や顧問料などの形で、十分な支払いをしています。SBIエナジーは物件の買い手になってくれるハズだったし、SBI証券は上場の際、幹事証券になる予定でした。

SBISLの焦げ付きを肩代わりしたこともあります。北尾(吉孝SBIホールディングス社長)さんにも会い、グループ全体とお付合いしていた。ウチだけが悪者なんて、とんでもない話です」

その証言をもとに、筆者はSBIホールディングスに質問書を送った。しかし、SBIは「第三者委員会が調査中」と答えず、4月28日に公表された「報告書」は、織田貴行SBISL社長の責任は重いとして解任したものの、それは営業を優先したあまりの行為で、虚偽表示への関与など刑事責任を問われるものはなかったとした。

罪は「テクノ社」というわけである。

政界とのつながりは…?

政界ルートは、SDGs同様、テクノ社に泊をつけ、「イザ」という時に頼み事をするためのものだろう。

小泉元首相は広告塔で、俳優で長男の孝太郎氏とはスポンサー契約を結び、ホームページや会社案内に登場させていた。その先には、次男の進次郎環境相との関係を期待していたのだろうが、それほど深い関係は取り結べなかったようだ。

「進次郎環境相と近いようなことをいうので、『会わせてくれよ』と頼んだけど、実現しなかった。言い訳していたけど、結局、親しくはないみたい」(知人)

とはいえ、親しさを見せる政治家も。再生エネルギー業者が証言する。

「彼の店で一緒に食事していて、『誰か頼りになる先生はいないか』という話になり、『これから遠山(清彦・前公明党代議士)先生が来るから紹介するよ』といわれ、実際、紹介されたことがある。会社にはいろんな政治家と一緒に写った写真が飾ってあったけど、結構、本当なんだな、と思った」

彼の店とは、銀座・ドンピエールのこと。麻生太郎財務相、ビートたけしなどが通い、かつては高倉健なども常連だったという著名フレンチで、生田容疑者は17年に会社買収の形で手に入れた。

生田容疑者は、この他「代官山いく田」という高級和食の店を持ち、政治家接待に使うことも。そのあたりも、通常なら警視庁などが担当する融資詐欺に、地検特捜部が乗りだした理由である。

「再生エネルギー事業には、許認可が絡むことが多く、政治家への頼み事が多くなる。資金繰りは相当、苦しかったので、金融機関への口利きを期待したこともあるだろう。生田と親しい政治家には、小池(百合子)都知事、原田(義昭)前環境相、麻生財務相、遠山前財務副大臣などの名があがっていて、それなりに職務権限がある。特捜の狙いもそこだろう」(司法担当記者)

政治家との交際は、最強の捜査機関が乗り出したという意味では、むしろマイナスに作用した。また、かつての仲間が次々に離反、検察の捜査協力者になっている。生田容疑者は、逮捕前の5月7日、「関係者の皆様へ」と、自筆で「詫び文」を残しており、そこで「迷惑をかけた」と、頭は下げているものの、文章はSBIグループ、玄海社、そして自分を裏切った仲間たちへの恨みに満ちている。

幹部も含めて社員は散り散りになった。まとめて面倒を見ているのは、社外取締役だった加藤智治、小池正樹の両氏だ。

レストランはドンピエール、いく田を含め、13店舗を持っていたが、そうしたフード事業の責任者や社員らが、加藤氏が社長、小池氏が副社長となって設立した「まん福ホールディングス」に、大挙、入社した。

逮捕前の5月17日、テクノ社は負債総額150億円で経営破たん。生田容疑者は民事再生法の適用を申請する意向だが、逮捕され法廷で裁かれる以上、破産による法的整理となる可能性が高い。

そうなれば、SDGsにかけた“夢”はもちろん、築いた事業はすべて失われる。事件の行方はまだ見えないが、その顛末は、ぜひ本人に語ってもらいたいものである。

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