猫と人間の暮らし──私たちは工夫次第でもっと幸せになれる

猫と人間の暮らし──私たちは工夫次第でもっと幸せになれる

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/07/13
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コロナ禍で保護猫の引き取り手が増えているというニュースに目がとまった。前編では、こうした社会情勢とともに、私たちはなぜペットとして猫を求めてしまうのだろうか、という問いを探ってきた。後編ではさらに深掘りし、私たちだけでなく、猫にとっての「幸せ」にも目を向けたい。

ペットの不変性で、コロナ禍の不安を解消

帝京科学大学生命環境学部准教授の濱野佐代子さんは、新型コロナによる社会不安という大衆心理も踏まえ、よりマクロな視点で分析する。

「マスコミやインターネットの情報も影響していると思います。毎日、新型コロナの関連ニュースがたくさん報道される。そうした中で、動物を扱う番組やインターネット動画が増えてきています。これは、やっぱり人間は不安を喚起されると、解消するための行動に走るからではないでしょうか。番組や動画を見て、不安が癒される機会が増えたりする中で、もともと潜在的にペットを飼いたいと思っていた人たちの行動が喚起されるのではないかと思います」

「大衆不安によってペット需要が増加し、犬よりも飼いやすいと言われる猫の人気が高まっているのでは」という仮説は説得力がある。

濱野さんがもう一つ、コロナ禍におけるペット特有の魅力として挙げるのは、コロナ以前からの不変性だ。

「新型コロナと言っても、猫や犬はそんなこと知らないですよね。人間は過去を思い出して悩んだり、未来を恐れて不安になって落ち込んだりしますが、動物はいつもと同じように生活しています。

動物は、今のことしか考えません。例えば猫が事故で足を失ってしまったり、病気になってしまったとしても、痛みがあるうちは激しく鳴いたり怒ったりするかもしれませんが、痛みが消えたらもうそのことは考えない。明日からどうやって生きようかと悩んだり、こうすれば良かったと後悔したりはしないんです。

社会全体がコロナ情報であふれ、みんなが不安になってしまう中、猫や犬は普通に暮らしている。その姿を見ることで、日常を取り戻すことができているのではないでしょうか」

こうした「今を生きる」「この瞬間に気づく」というような考え方、つまりマインドフルネスを基にしたカウンセリングは、うつ病治療にも効くとされ、海外で取り入れられているそうだ。

私たちが「人間にとって猫とはなんぞや」といった小難しいことに頭を悩まそうと、猫たちはつゆほども気にかけない。そんな姿が人間を夢中にさせているのだろう。

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人間の悩みや社会情勢について、猫は気にかけるはずもない (Unsplash)

猫は気軽に飼えるのか?

いくら「猫は手間がかからず飼いやすい」と言っても、当然、相応の準備は必要だ。ペットテックのスタートアップ「トレッタキャッツ」(神奈川県藤沢市)の松原あゆみさんと嬉野千鶴さんは、準備不足のまま飼育を始める人たちが増えることに対する懸念も抱いている。

「以前から飼いたかった人が飼い始めているのであれば嬉しいんですが、ただ寂しいからという理由でペットショップなどで買おうとする人がいるなら、ちゃんと長く猫を愛してくれるのかなと心配です」(松原さん)

「(以前働いていた保護猫カフェ)ネコリパも、就職で上京したばかりで寂しいから猫を飼いたいという理由で来る人も多いんです。でも中には2、3カ月くらいで仕事を辞めちゃう人もいる。保護主さんからすると、そういう時に猫の世話はどうするつもりなんだろうと心配です」(嬉野さん)

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これまで200頭以上の保護猫の譲渡に携わってきた嬉野さん

特に嬉野さんが強調するのが、「飼い主の生活の安定」だ。

「例えば保護猫譲渡の際は、去勢費用やノミ・ダニ駆除の費用などの医療費3万5000円程度を新たな飼い主さんに負担してもらっているのですが、審査の最終段階でその程度の医療費を支払えないということが判明することもあります。また、書類に書いてある住所を調べてみると、ペット不可の物件だったり、ゴミ屋敷のような家だったり、ということもありました」

新型コロナによって、飼い主と猫が一緒に暮らす時間は増えたし、新たに猫を飼い始める人も増えた。

これまで以上に丁寧に世話をする人も増える一方で、準備不足や知識不足、そして覚悟不足のまま猫を飼う人も増えるだろう。

そういう意味では飼い主の愛情を享受できる猫と、できない猫の二極化が進むと言えるかもしれない。

猫は飼い主を選べない

松原さんに、猫と人間の幸せな関係とはどんなものなのか、聞いてみた。

「幸せの定義はいろいろですが、猫にとっての幸せは、『健康で長生きすること』だと思います。それを実現するための取り組みの1つが、トレッタ(猫専用スマートトイレ)です」

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トレッタキャッツ取締役の松原さん。リモート取材中に、愛猫も登場

「自分の子供なら、バランスの良いご飯を食べさせたり、定期的にワクチンをうったりしますよね。でも猫の健康をそこまで考えている人は少ない。猫が泌尿器疾患になりやすいことなど、飼い主の方が猫の性質を理解し、何をすべきかを当たり前に知っている状態を作りたいなと思っています」

猫は様々なプラスの影響を私たち人間に与えてくれる。だがそれは本来、猫から人間への一方的なものであってはならない。

京都大学野生動物研究センターの荒堀みのりさんによれば「猫は薄明薄暮性だが、(睡眠などの)生活パターンは人間に合わせてくれている」のだそうだ。

私たち人間も、清潔な環境の提供など、責任感を持って世話をすることで、猫の幸せに寄与できる。

そうした健全なサイクルを作り出せるかどうかは、飼い主の手にかかっている。

前編:猫と人間の関係性──私たちはなぜコロナ禍で彼らを求めてしまうのだろう?

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