“違い”はモードのスパイスです

“違い”はモードのスパイスです

  • SPUR
  • 更新日:2020/11/20

俳優、ミュージシャン、作家、起業家……。 8名がファッションを通した“共感”について語る

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もし、あの人がパブリックイメージと異なるファッションに挑戦したら?「こんなスタイルも似合うんだ」「いつもの自分と違う!」とSPURが提案する最新モードをまとい価値観を揺さぶられる体験を楽しんでもらった。見慣れた自分から変わってみることで“違い”に対する想像力をはばたかせる。私たちが忘れかけている“共感”とは何かを、ファッションを通して、いま問い直す。

HIRONA YAMAZAKI

初めて触れる価値観を 常にリスペクトして いろんな角度から眺めてみる

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「オードリー・ヘプバーンみたいに王道で可愛い女性像も大好き」と山崎さん。今回はサンローランのジャケットスタイルでキリリとマレーネ・ディートリヒ風に変身。

ジャケット¥380,000、ブラウス¥170,000(参考価格)、ネックレス¥105,000(参考価格)、パンツ¥135,000(参考価格)、ベルト¥55,000、帽子¥105,000、ブーツ¥270,000(参考価格)/サンローラン クライアントサービス(サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ) 中に着たキャミソール、帽子につけたチュール/スタイリスト私物

2021年にハリウッド映画デビューを果たす女優の山崎紘菜さん。172㎝の身長でハイモードを難なく着こなす。

「クールなイメージと思われがちなんですが実はカジュアルやガーリーな服が好き。今日のような装いは、服やメイクアップの力を借りて武装したような気分になりますね」と山崎さん。自分ではない誰かを演じる俳優という仕事を通して気がついたことがある。「私の場合、自分と違うものに出合うとき、拒絶や否定よりも興味や驚きに変換されることが多いです。自分にとって、異質なものや受け入れがたいことに出合う感覚って、美術館で絵を見ることに近い。とりあえず作品をリスペクトして、近くから、遠くから眺めてみる。それでも理解できないこともありますが、否定ではなく『どうしてこんな色なんだろう?』という疑問だけが残るというか。時を経てまた見に行ったら違う考えになるだろうし、また行こうと思える。こういうふうに考えられることが、実は俳優の仕事には役立っています。疑問から新しい自分を見つけられたと思えるので。得な性格なんですね、きっと」

山崎紘菜

1994年、千葉県生まれ。女優、モデル。2011年の第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞。翌年女優デビュー。2021年にはポール・W・アンダーソン監督『モンスターハンター』や人気漫画を原作とした『ブレイブ-群青戦記-』の公開が控えている。

MERU NUKUMI

共感すること、自分の 意見を伝えること 両方を試して 勉強しているところ

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「高校卒業と同時にデニムアイテムのシンプルな着こなしが好きになってきました」というめるるさん。重厚なセットアップにヘルシーな甘さを加えて着こなした。

ジャケット¥401,000、ブラ¥71,000、スカート¥186,000(すべて参考価格)、ブーツ(参考商品)/マーク ジェイコブス カスタマーセンター(マーク ジェイコブス)

多忙を極めるタレント・モデルの生見愛瑠さん。“めるる”の愛称で親しまれる彼女はマーク ジェイコブスのランウェイルックでマチュアなムードに挑戦した。

「ハイブランドの服を全身で着る機会があまりないのですが、写真に写る自分を見て驚きました。個人的には可愛いよりも、かっこいいほうが好きなので、こんなに変身できるんだってびっくり! コンタクトレンズやマスカラでもっと盛りたいところを、今回はあえてマイナス。眉毛も薄くして、引き算することを学びました」。めるるさんは今年の春に高校を卒業したばかり。自分の意識を変えているところだと語る。「仕事の現場では私よりも年上の方々と出会う機会が多いです。実はとても人見知りなのですが、もっと視野を広げたくて自分から声をかけるように心がけています。そのときに、考えすぎるとうまく話せないので、あまり考えずにやってみようとか。一日の終わりには、自分を褒めてみる、とか。この考えに行き着いたのは母のアドバイスがあったからなんですけどね」

生見愛瑠

2002年、愛知県生まれ。モデル、タレント。TOKYO GIRLS AUDITION 2015で見いだされ、『Popteen』専属モデルとして絶大な人気を誇る。今年のテレビ番組出演本数は130本を超え、幅広く活躍中。

JUN FUBUKI

人のいいところを拾い上げて 自分の気持ちも開く。 キャッチする力を持つこと

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「60代になってからは、元気でいたいのでカラフルな色のものを選ぶように。今日のジル サンダーは素材やディテールを上手に生かしていますよね。細かいタックやハリ感が計算されていて、とても遊びの幅のある服」

ベルトつきドレス¥245,000、ブーツ(参考商品)/ジルサンダージャパン(ジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー)

黒はほとんど着ないという風吹ジュンさんにSPURが提案したのは、バルーンスリーブがドラマティックなジル サンダーのドレス。普段とイメージの異なるアイテムを大きな笑顔で包み込んで着こなしてくれた。

「自分とまったく違う価値観に相対したとき、まずは相手を解放してあげないといけないと思うんです。相手も自由に自分を表現できるように、こちらが受け止める心構えが大事。聖書の一節に“アガペー”という言葉があります。それは無償の愛を意味します。子どもを育ててわかったのですが、すべてが初めてのことだから、自分の持っている業みたいなものを捨てていかないと新しいことが吸収できないんですよ。この経験を経て、改めて謙虚に自分を見つめ直してみたときに、そういうやわらかさを持っていたいなと気づいたんです。そして、まずは楽しむ気持ちがあれば、共感ってできるんじゃないかな。原宿で突飛なファッションを楽しむ人々を見て、楽しいんだろうな、こちらも楽しんでみてみよう、とね」

風吹ジュン

1952年、富山県生まれ。女優。70年代初頭に女優としてデビューし、数々のドラマや映画大作に出演している。『浅田家!』が公開中のほか、10月23日より公開中の『きみの瞳が問いかけている』にも出演。

ERNESTO MARTINEZ

日本で感謝の意味を 改めて知る。愛から つながる共感の世界

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「ロエベの洋服は、スペインにいるときから大好きです。母や祖母も持っていたし、ハグされるとロエベの香水や革の香りがしたんですよ」。仕立てのよいシャツやすべて革で作られたチェーンベルトのクラフツマンシップにマルティネスさんも感激。

シャツ¥126,000、パンツ(参考商品)、ベルト(参考商品)/ロエベ ジャパン クライアントサービス(ロエベ) ネクタイ/スタイリスト私物 ピアス/モデル私物

「浅田真央サンクスツアー」のキャストを継続しながら、今季からは男子シングルで強化選手の木科雄登さん、女子シングル選手の白岩優奈さんの振り付けを手がけるなど日本での活躍の場を増やしているのがプロフィギュアスケーターのエルネスト・マルティネスさん。実は大のモード好きと聞きつけ、SPURで初のファッション撮影をオファー。

「フィギュアスケートの衣装はフィットしているので、自分の体で頑張って表現しないといけないのですが、今日のオーバーサイズの洋服は面白い。自分の体以上の生地があることで、風を生かして翼のように表現できますね」と美しいムーブメントを披露してくれた。 「僕たちのサンクスツアーのテーマは日本全国に感謝を届けること。浅田真央が選手としてハイレベルまで到達し、引退してからいまでも感謝を伝えたい相手がファンや周囲の方々でした。僕らが彼女のそばで学んだのは、すべては愛に動かされて行動しているということ。お互いの共感が足りないと思うときって、自分自身の内側の声を聞けていないのかもしれません。まず自分自身とのつき合い方をうまく保ち、そこから生まれた余裕があれば他人に対しても気持ちをかけることができます。共感ってそういうことかなと思うんです」

エルネスト・マルティネス

1998年、スペイン生まれ。プロフィギュアスケーター、振付師。浅田真央に憧れ、18歳でスペインから練習拠点を日本に移すも怪我で競技人生に区切りをつけた。知人のすすめで応募したアイスショー「浅田真央サンクスツアー」に合格しキャストに。ツアーは3年目。

UKON ONOE

しなやかな反骨精神と 共感力の両方携えて 多くの人に伝えていく

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普段のスタイルはモードな黒の装いが多いという右近さん。「スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』では主演の代役に抜擢され、大舞台に上がるときの気持ちを後押ししてくれたのがファッションでした」と語る。モダンなパンクには、ノーカラーコートとレオパードのつけ襟をレイヤードして。

パールネックレス〈K18WG、南洋真珠 黒蝶〉¥771,000/TASAKI コート¥144,974、チェーンネックレス¥26,972、ブーツ¥72,000/ドーバー ストリート マーケット ギンザ (ラフ シモンズ) 中に着たベスト¥189,900、つけ襟¥32,900、キュロットパンツ¥129,900/タカヒロミヤシタザソロイスト.アオヤマ(タカヒロミヤシタザソロイスト.) 中に着たTシャツ、ソックス/スタイリスト私物

今回のテーマはパンクですが、キュロットやパールをミックスして捻りがきいています。パンクの激しさがありつつ、居心地、着心地まるでよし、という感じで意外でした。歌舞伎でお役を演じている際、心の中には滝のように流れる情熱がありますが、わかりやすくは表現しないこともあります。そのほうが観ている方にシビアに伝わることもあるんです。好きなようにやるけれど、わかる人にはわかるということも重要です。そういう意味ではパンクと歌舞伎は似ていますね。個人的にはブラックパールには輝かしい裏にディープな表情もあり、独特のヴァイブスを感じました」と右近さん。もともとファッションが好きなので、普段のスタイルとは違っていても、まったく抵抗がないと笑う。「歌舞伎とは常軌を逸している“傾く(かぶく)”というのが語源です。パンクの精神と近いところもあります。一方で役者は、いろいろな人たちの気持ちを代弁する立場として共感性も必要とされていると思います。両方のバランスがあって、一緒に頑張ろうぜ、ついてこいよという愛にあふれた演技につながるのかもしれませんね」

尾上右近

1992年、東京都生まれ。歌舞伎役者。7歳で『舞鶴雪月花』の松虫で初舞台。12歳で『人情噺文七元結』の長兵衛娘お久役ほかで、二代目尾上右近を襲名。2018年1月清元栄寿太夫を襲名する。近年では古典作品に限らず、ラジオ「KABUKI TUNE」のメインパーソナリティー、映画『燃えよ剣』の公開が控えている。

NAMICHIE

自分のなかの正義を疑い 常にフラットな状態に。 魂の筋トレが心を育む

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「ぬいぐるみって生命体の形を模していることから、何か精神が宿っているように感じる。身包みは魂の形を表す作用もあると、着ぐるみ作家をしながら 思います。そして筋トレを始めたことで自分の肉体と精神の距離を把握することができました。それがなければこの白に着られていたかもしれない」

ニットベスト¥90,500、ワンピース¥105,500、チュールラップスカート¥60,000/ドーバー ストリート マーケット ギンザ (シモーン ロシャ) 下にはいたドロワーズ¥22,800/ケイティ ブーツ¥34,000/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン(ドクターマーチン) ソックス/スタイリスト私物 【ヘッドピースで使ったぬいぐるみ】うさぎ(青)¥4,200、うさぎ(茶)¥7,800/ヴィンテージDeco ユニコーン(白)¥4,400、うさぎ(黄)¥3,500、うさぎ(紫)¥3,000、犬(茶)¥3,200/yakusoku イルカ(ピンク)¥2,000/KIKI2 うさぎポーチ(青、茶、白、黄)各¥5,900、リボンピン(大)¥4,800、(小)¥3,200/ケイティ

普段はごくベーシック、ステージでは兄がデザイナーを務めるミニマルなブランド「G.I.」を着るという、なみちえさん。あえてフリルやリボンをふんだんにあしらった可愛いスタイリングに挑戦してもらった。

「白は黒を着るよりも緊張する色ですね。頭にぬいぐるみのヘッドピースをつけていたので、たくさんの別の思考を持つ、仲間たちがいるみたい、私の頭の中の具現化だ! 最近よく考えているのが、“正義の押しつけ合い”により他者と自分とで、共感できなかった溝についてです。なぜ共感できないかということを考えて、自分で掘り下げることで自分の持ち合わせているさまざまな意識、自己矛盾さえ気づくことができるから大事な時間だと思います。何かひとつの物事に対して、対立しているものへのお互いの歩み寄り方っていっぱいあると思うんですよね。だけど、共感できない部分に共感する、というディスタンスはわりと私は好きなんです。また、新型コロナウイルスにより人類は共通の孤独を感じていますよね。 最近筋トレを始めて、 (筋トレは究極の孤独に向かう自己内対話である)筋肉と同時に精神、魂が鍛えられています。人類の共通言語は愛と健康かなと思います」

なみちえ

1997年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。ラッパー、着ぐるみ作家、美術家。東京藝術大学先端芸術表現科首席卒。美術・音楽活動のほか、文芸誌に寄稿、テレビ出演など多岐にわたり活動を行う。ソロ活動とバンド「グローバルシャイ」、クリエイティブユニット「TAMURAKING」でも活動中。ソロアルバム『毎日来日』もデジタル配信中。

NATSUKI KOYATA

他者には入り組んだリアルがある。 一つひとつを肯定するよりも、 存在を許すことが大事

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古谷田さんが選んだのは生地をたっぷりと使ったコットンのロングドレス。「普段着ないような服を着ることは、スペシャルな経験です。自分はこういうふうに見えるんだ、こんな気分になるんだと、想像のつかないものですね」

ドレス¥165,000/ステラ マッカートニー カスタマーサービス(ステラ マッカートニー)

近著『神前酔狂宴』では日本における結婚式の制度を、2017年の『リリース』では同性恋愛が一般的となった国家をテーマにするなど、社会への違和感を問い続ける作家の古谷田奈月さん。普段の服選びは「自分が着ていて心地よいかどうかが一番。自分自身が納得して着ているかが重要」と語る。「今回のテーマは“共感”ですよね。とても重要な、同時に難しいテーマだと思います。これは服を通しても見ることのできる現実ですが、他者を尊重し、多様性を認め合う社会というのは、ムードとしてはさほどピースフルではないと私は思うんです。だって私がこの服を好きでも、ほかの人はそうではないかも。誰かが狂おしいほど愛している服に、私は嫌悪感を抱くかも。それを、いやそんなふうに思うのはよくない、みんなそれぞれ素敵なんだとポジティブに受け入れることを求められ、本心とは違う態度を取らなければならなくなったら、結局また悪感情が生まれます。その流れを断つ方法は、何もかも気に入っているふりをしなくてもいいから、嫌いなものを攻撃しないということ。要するに、『ほっとけ』ってことです。それで十分、共感的な態度といえると思います。だって、相手が自分と同じように存在することを受け入れるということですから」

古谷田奈月

1981年、千葉県生まれ。小説家。2017年、『リリース』で第34回織田作之助賞受賞、2018年、「無限の玄」で第31回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」で第159回芥川龍之介賞候補に。2019年には『神前酔狂宴』を上梓した。

ROLAND

価値観を強要して 束縛しなきゃいけない愛は 本物じゃない

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普段の全身黒のストイックなスタイルから、今回はカラフルなチェックをまとって登場。「いまの自分とは正反対のものを着て鏡に映ると、自分を客観視できますね。グッチのルックは上質なホスピタリティを感じさせます」

ジャケット¥350,000、ニットトップス¥85,000、シャツ¥75,000、パンツ¥120,000、アイウェア(参考商品)、ローファー¥102,000/グッチ ジャパン(グッチ)

ホストを経て実業家として成功したローランドさんは“共感”をこう読み解く。

「何事においても、強制されてやることに価値ってないと思うんです。共感もそう。共感できないことは悪ではない。共感=賛同することと思われていますが、世間って面白いもので、何か新しいことをやったり、いままでの概念にないことをやると批判するものですよ。だから、共感されないことって、実は新しいことをやっていたり、独創的なものを提供している状態なのかも。自分自身は誰かに共感してもらおうと思って生きてきているわけではないので、そう考えています」。その思想は7月に発表した自身のブランド「CHRISTIAN ROLAND」にも息づく。「ひと言で表現すると“最小限にして最高級”がコンセプト。今日の私服に合わせている靴は5年間愛用していて、傷や穴があいたこともあるけれど、手をかけて履いています。この靴であの場所に行ったな、つらい時期を乗り越えたなと、自分にしか伝わらない魅力が蓄積している。自分のブランドもトレンドを追いかけるよりも、100年変わらず愛されるぐらいのものを作りたい。質がよくて、長くつき合うほど、魅力が増すと思えるブランドでありたいし、俺自身もそういう存在でいたいな」

ローランド

1992年、東京都生まれ。現代ホスト界の帝王と称されるが、2018年に現役は引退。その後、モデル、タレント、実業家と多彩な顔を持つ。2020年7月より自身のファッションブランド「CHRISTIAN ROLAND」をスタート。美しいジャケットがシグネチャー。

SOURCE:SPUR 2020年12月号「“違い”はモードのスパイスです」
photography: Takemi Yabuki 〈W〉 styling: Tomoko Iijima (HIRONA YAMAZAKI, ERNESTO MARTINEZ), Kayo Yoshida (MERU NUKUMI, NATSUKI KOYATA), Tamao Iida (JUN FUBUKI, UKON ONOE, NAMICHIE, ROLAND) hair: Koichi Nishimura 〈angle management〉(HIRONA YAMAZAKI, MERU NUKUMI, ERNESTO MARTINEZ, NAMICHIE), ASASHI 〈ota office〉(UKON ONOE), TAKU 〈CUTTERS〉(ROLAND) make-up: Masayo Tsuda 〈mod’s hair〉(HIRONA YAMAZAKI, MERU NUKUMI, ERNESTO MARTINEZ), fusako 〈ota office〉(UKON ONOE), YUKA HIRAC〈D-CORD〉(NAMICHIE, ROLAND) hair & make-up: Taeko Kusaba (JUN FUBUKI), Nico (NATSUKI KOYATA) edit: Michino Ogura

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