東大発ベンチャー現役CFOが教えるデットファイナンス入門 第38回 融資と出資の違い(2)

東大発ベンチャー現役CFOが教えるデットファイナンス入門 第38回 融資と出資の違い(2)

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/10/16
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前回は融資金利の相場について情報提供をいたしました。今回は第3回でも触れた融資と出資の違いについて、内容を補足します。

融資金利の相場について(2)

過去の記事では、出資と融資の違いについて4点列挙いたしました。(1)期間の違い(資金提供者との関係性は、出資が無期限で融資が有期)、(2)資金提供者への報い方の違い(出資は株価向上か配当で高リターン、融資は金利で低リターン)、(3)調達可能な金額の違い(1兆円規模の資金調達は、要求収益率の観点から出資では取り組みづらい)、(4)調達可能なタイミングの違い(出資はいつでも構わないが、融資はタイミングが限定されている)です。さらに追加で2点、紹介いたします。
○法人格の要否

エンジェルやベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、株式会社の枠組を利用するため、必然的に法人格を取得しなければなりません。一方で、金融機関から融資を受ける場合、法人だけではなく個人事業主も契約することができます。法人格は必須条件ではないのです。都市銀行(いわゆるメガバンク)においても、個人事業主を支援する部署を設けているケースがあります。

融資を申し込む個人事業主の例として、士業の事務所や開業医、飲食店、商店が挙げられます。個人事業主向けの資金調達についてWebで検索すると事業用カードローンの記事を見かけることが多いですが、資金用途が明確であれば法人と同様に証書貸付を申し込むことが可能です。

参考までにリースに関しても触れますと、大手リース会社との契約については「決算を3期迎えた法人」もしくは「金融機関との融資契約が存在する個人事業主」が検討対象となるようです。2020年時点では個人事業主がリースで業務用パソコンを調達しようとしても、融資契約がなければリース契約も成立しない商慣習となっています。
○事業規模の違い

ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合、諸説ありますが18か月のランウェイ(会社が潰れるまでに残された期間/手元資金が尽きるまでの期間)を確保するように資金調達することが現在の相場です。金融機関から融資を受ける場合も様々な尺度はございますが、ひとつの目安として月商の2~3か月分の金額を調達できると言われます。2,000万円を調達すると仮定して、両者を比較してみましょう。

出資を受けるケースでは、2,000万円を18か月で割って、毎月のコストが約110万円の規模の事業だと言い換えることができます。融資を受けるケースでは、月商の3か月分が2,000万円だとしたら年商は8,000万円です。利益が10%と想定すると年間の費用は7,200万円ですから、毎月のコストは600万円の事業規模になります。簡単なシミュレーションですが、融資が出資よりも金額ベースで計った事業規模が5倍以上大きいことが分かります。

起業家の感覚では、出資を受けても融資を受けても同じ2,000万円に見えるかもしれません。しかし、資金提供者の視点からは出資のケースと融資のケースで事業規模に明確な差が存在します。双方の間に隔たりが存在することを、資金調達する企業の財務担当者は理解する必要があります。出資と同じイメージで融資の相談をすると、申込金額が過大だと評価される可能性が大きいです。

融資と出資の違いについての補足説明は以上です。次回は起業家が「あえて創業融資を利用しないケース」について考えます。

千保理 せんぼただし 株式会社情報基盤開発CFO(最高財務責任者) ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学経済学部経済学科を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業である株式会社情報基盤開発にCFOとして参画。財務と広報を兼務し、融資を受けた金融機関向けに経営状況を伝えるデットIR(Investor Relations)と、報道機関を介して社会全体へ情報発信するPR(Public Relations)を担う。Microsoft Innovation Award 2015にて、株式会社情報基盤開発のデータ入力業務支援ソフトウェアAltPaperが優秀賞を受賞した際のプレゼンター。未上場企業の融資による資金調達を得意としており、弥生株式会社やベンチャーキャピタルが主催する起業家向けの財務経理セミナーの講師を務めている。著書(共著)に千保理・滝琢磨・辻岡将基『~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務』(第一法規、2019)がある。 この著者の記事一覧はこちら

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