山田裕貴も驚嘆!『ペンディングトレイン』徹底的にリアリティを追求したセットの舞台裏

山田裕貴も驚嘆!『ペンディングトレイン』徹底的にリアリティを追求したセットの舞台裏

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  • 更新日:2023/05/26
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●細部まで作り込んだつくばエクスプレスの車両セット

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都心へと向かう電車の車両が、突如、未来の荒廃した世界にワープしてしまうという奇想天外な設定のTBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(毎週金曜22:00~)。主演の山田裕貴らキャストは、その世界観を見事に再現したセットのクオリティにも舌を巻いたとか。とことんリアリティを追求したセットや小道具のこだわりを本作の美術スタッフに聞いた。

『恋はつづくよどこまでも』(20)などの人気脚本家・金子ありさ氏のオリジナル脚本をドラマした本作。飛ばされた未来の世界では、乗客たちがそれぞれの知恵を駆使して、過酷なサバイバル生活を繰り広げていく。主人公のカリスマ美容師・萱島直哉役を山田が、正義感溢れる消防士・白浜優斗役を赤楚衛二が、高校の体育教師・畑野紗枝役を上白石萌歌が演じている。

インタビューに答えてくれたのは、美術プロデューサーの二見真史氏と、美術デザイナーの野中謙一郎氏だ。二見氏は「昨年の7月末から企画書を見ながら打ち合わせをスタートし、いろいろな規模感を決めたあとで、年末から野中さんに入ってもらい、具体化していきました。正直、最初は、普通の連ドラでここまでの規模のものをやれるかな? と思いました」と当時を振り返る。

「あまりにも荒唐無稽な話なので、バスや図書館、カフェなどに設定を変更した方がいいんじゃないかという話も出ました。打ち合わせを重ね、最初の企画意図を大事にして、電車のままで行くことになりました」

その後、電車は「つくばエクスプレス」に決定し、車両を借りつつも、緑山スタジオには広大なオープンセットも建てられたと、二見氏が経緯を話す。

「駅での撮影もあるし、電車を借りる必要があるということでいろいろと交渉し、つくばエクスプレスさんが企画に乗ってくれたのが11月頃です。それで使ってない電車のパーツの中身をまるっと外して、緑山スタジオに移築する方法をとることにしました」

野中氏は「トータルにしてオープンセットの建て込みは約1カ月かけて作りましたが、よく短い期間であそこまで作り込めたなとは思っています」と自負する。

「外装はうちで作りましたが、パンタグラフの部分も含め、なるべく本物に似せたものにしました。他にも樹海の岩や木などには苔などもちゃんと施しました。本作はSF要素が多いので、画としてのリアリティがないと、視聴者が見て冷めてしまうと思ったから、とにかくリアルに近いものにしたいと思いました」

二見氏も「時間があればあっただけ使っちゃう人たちなので(苦笑)」と野中氏の職人気質について前置きしたあと「電車のセットは3Dモデルを起こし、3Dプリンターででかいものを出して、けっこう細かいところまで作り込んでいます。与えられた期間は1カ月でしたが、最低限の期間で一番見栄えのいいものを狙えたかと」とセットのクオリティを満足気に話す。

完成したつくばエクスプレスの車両について二見氏は「かなりフォトリアルなものを設計したので、そこは間違いないなと思いました」と太鼓判を押す。

「でも、僕が出来上がった車両を見て不安だったのは、ちょっと土に埋もれすぎているというか、車両に傷がついているから、それを見てつくばエクスプレスさんが心象を悪くするんじゃないかと思ったことです」

車両の傷とは、電車ごと未来に飛ばされるという設定だからこそ、敢えて与えたダメージのことだ。

二見氏は「実は最初に完成した時は、今よりももっとダメージが施されていたので、僕はちょっとやりすぎだなと思ったんです。でも、つくばエクスプレスさんに来てもらったら、中に入って『これってもう本物じゃないですか!』と、すごく喜んでもらえたのでよかったです」と胸をなでおろしたとか。

オープンセットの広さについて、野中氏が「200坪ぐらいです」と言うと、二見氏が「僕たちが手を加えたところが200坪ですが、実はその先に緑山の元々の地形を使った山みたいなところも使っています」と補足。野中氏も「それを入れると600~800坪くらいです」とうなずく。

二見氏は「僕が携わった作品で緑山にオープンセットを建てたのはTBSドラマ『天皇の料理番』(15)以来です。野中さんもTBSドラマ『この世界の片隅に』(18)以来かと。まさに数年に1回しかできない規模です。地面にもともとあるように見える木も、近い距離で撮影しているものは、ほとんど美術スタッフが植えているので、カメラマンでさえ『これも植えてるの!?』と驚くほどです」とのこと。

●山田裕貴「テレビドラマのクオリティを超えてる」

第4話では新たに6号車の乗客が登場した。二見氏は「6号車の人たちは村みたいなところで暮らしているという設定なので、千葉の山奥に村を作ってロケをしました。外装自体はいろんな地形を利用し、あとはCGで合成して6両目を作っています」と解説。

野中氏は「車両自体はほぼ5号車と変わらないけど、運転手席があるので、そこはパネルを追加して、変わったように見せています。台本のト書きに『仕切りがあって、そこに住んでいる』とあったので、自然木で電車の中を区切り、5号車とは全く違う印象の作りにしました」と語る。

また、5号車と6号車の違いを出すうえで、効果的に使われているのが風景を映し出す幅17メートル、高さ4メートルのLEDパネルだ。

「5号車では樹海の風景をLEDで表現していますが、その利点を生かして、6号車では、違う風景を映しているから、電車自体は同じでも、全然違う場所にあるように見えます」

二見氏も「今回は電車の天井がパカッと外れるので、真俯瞰に入るという面白い撮り方もできました」と、いろいろな角度からの撮影にも臨機応変に対応できるセットならではの利点も明かした。

美術部が作り込んだセットについては、山田たちキャストからも大きな反響があったという二見氏。

「みなさんがオープンセットに入るなり『わあ!』となりました。その後、オープンセットとスタジオのセットとで、同じシーンを行ったり来たりして撮影することになりましたが、オープンセットがあまりにも良くできていたので、最初は『スタジオだと電車の片面だけになっちゃうから、なるべくオープンセットで撮った方がいいかも』という話が出ました。でも、その後、緑山スタジオのセットに入ったら、主演の山田さんが「すごい。テレビドラマのクオリティを超えてる」と言ってくれたのが聞こえてきて、すごくうれしかったです」

二見氏はセットだけではなく、小物や小道具などについても、サバイバル監修と話し合いながら作り上げていったと言う。

「たいまつがよく出てきますが、木の棒にタオルを巻いて火をつけても、油が染みてないとすぐに燃えつきちゃいます。そこはサバイバル監修の方と話して、車輪のパーツに塗ってある潤滑油のグリスを拭い取るという設定にしました。実際にそういうカットも入っています」

とはいえ、その油がずっとあるというのも不自然ということで、その後もサバイバル監修の意見を取り入れて、たいまつをアップグレードさせていったというから芸が細かい。

「たいまつって漢字で“松”に“明るい”と書きますが、実際にファットウッドという、松ヤニがたくさん染み込んだ木があると聞きまして。それを燃やすだけで、ずっと長い間、燃え続けるんです。その木を見つけたという設定にして、途中からはたいまつとなる竹筒の上にファットウッドがついている形のたいまつになっています」

セットから小道具まで、大掛かりな作り込みが必要だったため、本作ではあらかじめ、全体の世界観を表すコンセプトアートを用意したことが功を奏したと言う二見氏。

「最初に監督やプロデューサーにコンセプトアートを見せて、こういう世界観でやりたいということを、美術部からも提案してやっていけたことが良かったです。ビジュアル面でいうと、むしろこちらから発信したもののほうが多かったので、そこは我々としても自信を持っています」と胸を張る。

二見氏はさらに、オリジナル脚本ならではのやりがいをこう明かす。

「原作があるドラマは迷った時に漫画などを読み直します。でも、今回はそれがないから、台本と企画書を見ますが、そうなると監督やプロデューサーと話し合う時間が長くなります。そこがまたよくて、自分たちの意見が取り入れられやすくなるから、そういう良い文化の中で、すごくいい作品作りができた気がします」

美術部の職人技が冴えるセットや小道具たちは、きっと山田たちキャストの熱演をより一層引き出しているに違いない。キャストとスタッフが一丸となって作り出した渾身のドラマを引き続き堪能してほしい。

(C)TBS

山崎伸子

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