なぜ2人の中国人女性はDMMグループ4000人のトップに立てたのか

なぜ2人の中国人女性はDMMグループ4000人のトップに立てたのか

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/09/18
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2020年6月17日。DMM.comをはじめとする全国のDMMグループで、オンライン表彰イベント「DMMアワード2020」が開催された。

DMMアワード2020とは、日々の業務における成果を讃えるべく、グループ20社、計4000人を対象に、事業の成果や挑戦を評価する社内表彰イベント。組織改編後、約3年ぶりに実施された今年の表彰イベントでは、総額1000万円の賞金が用意された。

同グループ初となるリモートでの表彰イベント当日、約2500名のDMMグループメンバーが画面越しに注目するなか、33ある賞の大賞に選ばれたのは、林(りん)ショウブンさんと肖軍(しょうぐん)さん。ふたりとも、来日時には日本語が話せなかったという、中国出身の女性だ。

言葉や文化、そして日本社会に根強く残るジェンダーの壁を乗り越え、なぜ4000人の中から大賞に選ばれるに至ったのか。DMMアワード大賞を受賞した林ショウブンさんと肖軍さんに話を聞いた。

DMMアワード2020について

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DMMアワード2020は、大賞を2名の個人、しかも中国出身のメンバーが受賞する、という大きなサプライズで幕を閉じた。

そもそも、今年の表彰イベントは、計画段階から例外続きだったという。実は当初、DMMグループ20社の社員4000名を一同に集め、東京で社員総会を行い、その式典の中で表彰式も開催する予定だったのだ。しかし、計画はコロナの影響で一度白紙に。急遽、表彰イベントだけをオンラインで実施するよう計画が練り直された。

2020年4月より、全国のDMMグループに表彰イベントの概要が伝えられ、受賞候補者を自薦・他薦で募集。名前があがった候補者を事務局が精査し、8名の審査会で審査した後、最終的には亀山会長をはじめとする経営層で受賞者が決定された。全社でリモートワークを実施していたため、募集から審査まで全てオンラインで行われたことも例外の1つである。

こうして、個人やチーム、事業部に33の賞が贈られることが決まった。「DMMアワード2020大賞」や「個人特別賞」「チーム特別賞」をはじめ、「ヤンキーなのに日経載っちゃったで賞」や「プラネッツコロナで大変だけど応援してます賞」など、用意された賞はどれもユニークで、実績だけでなく挑戦やチームワークを称えたものも多い。

受賞者には事前に表彰されることが知らされたが、何の賞を受賞するのかは当日のお楽しみだったという。イベント当日、受賞者はオンライン会議システムの待機室に集められ、受賞が発表されるたびに社員の前に受賞者の顔が映し出されるという流れだ。

受賞式当日を振り返り、林さんは「大賞の発表は最後だったので、待っている間、ずっと緊張マックスでした」と言う。先に林さんが大賞を受賞したのを受け、まさか大賞が2人選ばれると思っていなかった肖さんは、「林さんが大賞を受賞されたので、私はどこかで名前を呼ばれるのを忘れられたのだと思いました」と笑った。

受賞理由について

さて、大賞を受賞したこの2人、一体どのような成果をあげたのだろう。

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林(りん)ショウブンさん

林ショウブンさんは、2018年にDMM.comに入社し、現在はエナジー事業部に所属。太陽電池、パワコン、架台電材など、太陽光発電所に関わる関連部材の国内営業を担当している。

取材中は小さく笑い、優しく控えめな印象を受けた林さんだが、その営業手法は実に泥臭い。1日の電話は60件、メールのやりとりは150回。これを毎日繰り返しているというので驚きだ。商品の価格や性能を徹底的に調べ上げ、「絶対に損はさせない」提案を心がけているのだそう。このようにして、日本国内の取引先と着実に信頼関係を築いている。

今年は単価が下がるメガソーラー事業において、前年と比べて2倍以上の商品販売を達成。新規取引先を獲得するだけでなく、取引がなくなっていた、いわゆる「休眠状態」の取引先にも積極的にアプローチし、既存取引先の売上を前年比173%に向上させることにも貢献している。事業部の売上と粗利益の大幅アップに多大なる貢献をしたとして、見事他薦で大賞に選ばれた。

二児の母でもある林さんの活躍を、同じく子育て中のメンバーは「子育てしながら働くパワフルさと、言語の壁を言い訳にしないタフさがずば抜けている」と称えている。受賞について、林さんも「今まで自分が何か特別なことをしたと思ったことはなかったけど、表彰されて自信がつきました」と喜んだ。

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肖軍(しょうぐん)さん

一方、肖さんは2016年にDMM.comに入社。現在は、エンターテイメント本部で、アニメのライセンスを海外のコンテンツ配信会社、ゲーム会社などに販売する仕事を担当している。クライアントは、中国企業や欧米企業など。海外全域が担当エリアだ。

「私は中国語が母国語だから、中国企業と円滑にコミュニケーションがとれるのは当然ですよ。決してすごいことではない」と謙遜する肖さんだが、チームの業績向上に彼女が大きく貢献したことは、審査会でも全員一致で認めたほどだ。

明るく快活なキャラクターと親しみのある笑顔は人気で、取引先からお褒めの言葉が届くという。アニメをはじめとするコンテンツの海外番販の売上実績や番販スキームの達成という実績だけでなく、肖さんの人柄がDMMと各社のアライアンスを深める大きな一助になったとして、他薦で大賞に選ばれた。

受賞は自分ひとりの力ではないという肖さんだが、チームからは「自分のメインの仕事以外にも顔を出して笑顔で取り組む姿勢がありがたい。いつも周りのおかげという肖さんですが、自信をもって受賞を受け止めていただきたい」というメッセージが寄せられた。

ふたりが日本に来た経緯

優秀で謙虚な二人だが、日本へ来た経緯や時期、その理由は異なる。

来日が早かったのは、林さんだ。安徽省(あんきしょう)出身の林さんは、高校卒業後、両親の勧めで日本の大学へ留学するために日本へやって来た。来日した当初は、全く日本語を話せなかったという。

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来日した最初の日について、林さんはこんなエピソードを話してくれた。その日、林さんは吉祥寺にある家まで歩いて帰ろうとしたところ、道に迷い、気づけば三鷹まで来てしまった。道がわからず、雨まで降り、今にも泣きそうなときに、地元の日本人が優しく助けてくれたのだ。家まで送ってくれ、お菓子やお茶までくれたその方の優しさを感じ、「日本人って優しいな、日本に来てよかった」と感じたことを鮮明に覚えているそうだ。

こうして林さんは、日本での生活をスタートさせた。両親の勧めとは言え、自分で決めた日本行き。教育費を捻出するために一生懸命働いてくれた両親のためにも、「何があっても我慢して頑張る」と決心しての来日だった。

一方、肖さんの来日に対する考えは正反対だ。

肖さんが日本へ来たのは、大学を卒業してから。もともとはエンジニアを目指してコンピュータサイエンスを専攻していたが、海外で働くことに興味をもち、日本企業が中国の大学や大学院から新卒者を採用するAHPR(Asian Human Resoure Project)というプロジェクトに応募。見事合格し、日本行きの切符を手に入れた。

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林さんと同じく、当時全く日本語を話せない状態だった肖さんだが、行ったことのない日本に、まずは旅行気分で行ってみようと考えた。もし仕事がうまくいかなかったら、その時は中国に帰ればいいと思っていたという。

しかし、いざ日本企業に入社してみると、みんなが優しく接してくれた。入社した企業では、外国人の新卒採用は初めてで、人事担当者はお父さんやお母さんのように温かかったという。お正月には、社員の実家に招かれて、おせち料理を食べさせてもらったことも。「超親切でした」と、肖さんも温かい日本人に囲まれ、中国に帰ることなく日本の生活をスタートさせた。

DMMの魅力

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大学卒業後、新卒で日本企業に入社した林さんは、その後2度の転職を繰り返し、DMMへ入社した。日本企業も外資系企業も経験した林さんだが、DMMはその2つのメリットを併せ持つのが良いところだという。

たとえば、日本企業には基礎を大事にする文化がある。新人研修は丁寧で、電話のかけ方やメールの書き方、話し方に至るまで、一からビジネスマナーを学ぶことができるので、1社目で日本企業に入って良かったと感じているのだそう。

DMMは、そのような基礎を大事にする日本企業の良いところや社内のコミュニケーションが多く、助け合う文化をもちながらも、日本企業には珍しいスピード感ある意思決定と新規事業に次々とトライするチャレンジ精神を併せ持っている。

自身のことを飽き性だという肖さんも、常に新しいことにチャレンジして進化を続けているところが面白そうだという理由でDMMに入社した。社員同士の関係性がフラットなところも、DMMの魅力のひとつだ。「会長でさえ、気軽にいつでも話しかけることができますよ」と言う。服装が自由なのも気に入っているようだ。

ITをベースにしながらも、違う領域のトレンドもキャッチアップする柔軟性。希望する仕事があれば、誰でもチャレンジに手を挙げることができる寛大さ。社員がのびのびと働くことができるDMMを、林さんは「無限な会社」と表した。

肖さんも、仕事でいろんな業界の人と知り合ったり、常に新規ビジネスに携われることを楽しんでいる。

DMMには、外国人と日本人、男性と女性、などというカテゴリーはないようだ。平等にチャンスが掴め、正当に評価される風土が真に醸成されていると感じた。

2人が大賞を受賞できた理由

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いくら社内では外国人や女性も働きやすい環境が整っているとはいえ、2人に国境の壁、言語の壁、文化の壁、既成概念の壁があるのは事実だろう。その壁を乗り越え、なぜ林さんと肖さんは大賞を受賞できたのか。

DMMで自信をもって仕事ができている理由について尋ねたところ、肖さんは入社後すぐに担当した仕事の小さな成功体験が大きく影響していると教えてくれた。

肖さんがDMMに入社したのは、2016年10月。最初に配属された仕事は、アニメ企画製作の新規事業部の海外営業担当だった。新しく立ち上げられた部署なので、当然、社内に経験者はおらず、ほとんどが手探り状態。そのなかで肖さんは、翌年に配信を予定しているとあるアニメ作品の海外バイヤーを見つけ、わずか3カ月で契約をまとめるという仕事を任され、結果、無事成功に導いた。

肖さんは「当時が1番大変だったけど、3カ月頑張れば結果が出ることがわかったので自信につながった」と言い、続けて、「会社が外国人である自分を信用して仕事を任せてくれたおかげで一人前に近づけた」と言った。今では、どんな新規案件がきても、怖いものはないのだそう。それほど、最初の案件で大きな自信を得ることができたのだ。

また、あえて「ジェンダーの壁」について尋ねると、林さんは、「たしかに男性よりも女性の方が下に見られることはあると思う」と答えた。実際に、営業を担当した最初の頃には、若い女性の声というだけで取引先から厳しい意見をもらうこともあったという。しかし、真摯に向き合い、愚直に取り組むことで、中国人である、女性であるということに関係なく認めてもらうことができたのだそう。「林さんがいてくれて助かりました」と言ってもらえたときが、仕事のやりがいを感じるときだ。

2人の魅力について、DMMのメンバーは「当たり前のことを、ちゃんとやる。やり切って、さらに高みを目指すところ」をあげた。2人が大賞を受賞できたのは、テクニックや小手先のTipsではなく、地道に、愚直に努力を積み重ねた結果だろう。

林さんは、「中国は、世界一人口が多い国です。1クラスは70人〜100人、1学年に1000人以上の生徒がいる学校に通っていたので、幼い頃から競争心が身についていました」と、自身のルーツである中国についても話してくれた。良い学校に入るために、朝7時半から夜10時まで勉強するのが日常だった。そのため、日本に来てから「すごいね」と言われる努力は、林さんにとっては「当たり前」なのだという。

「努力できるのも才能」というが、その才能に本人が気づかないほど、努力することが当たり前になっていることこそが、言葉や国境、ジェンダーなどのあらゆるチャレンジの壁を乗り越えた要因のひとつに思う。

最後に今後やってみたいことを聞くと、林さんは、「未来の子供たちに青い空と青い海を残すため、エコ事業に取り組みたい」。肖さんは、「日本のデザインは素晴らしいので、日本人の建築家やデザイナーと中国企業をつないで、中国に日本のデザインを広めたい」と話してくれた。どちらも、何にでもチャレンジできるDMMらしい、新たな取り組みだ。そしてきっと、2人は本当にチャレンジするだろう。

冒頭、「中国出身のメンバーが大賞を受賞する、という大きなサプライズで幕を閉じた」と書いたが、実際のところ、DMMグループは、それをサプライズとは思っていない。DMMグループでは、外国人が活躍することも、女性が成果を出すことも、そしてそれが評価されることも、当たり前なのだ。

そんなDMMグループで働く、林さんと肖さんをはじめとした4000人のメンバーの皆さんは、次にどんな面白いものを見せてくれるのだろうか。

企業だけでなく、そこで働く人々にも一層興味をもつきっかけとなる、DMMアワード2020だった。

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