「陰謀論信奉集団」Qアノン、ついにアメリカ議会の議席を獲得...!

「陰謀論信奉集団」Qアノン、ついにアメリカ議会の議席を獲得...!

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/11/20
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トランプ支持の陰謀論グループ

アメリカの共和党はトランプ後を模索し始めている。

過去、共和党は大きな思想的変遷を繰り返してきた。1960年代にバリー・ゴールドウォーター上院議員が共和党を保守主義の政党へと変える切っ掛けを作った。1980年代に自ら保守主義者を名乗るレーガン大統領が保守革命を行い、同時に新自由主義政策を打ち出した。そしてニクソン以来の南部戦略を実現させ、民主党支持だった南部を共和党の地盤に変えた。

そしてトランプ大統領の登場である。伝統的な保守主義に行き詰まりを突いて、ポピュリズムを共和党に持ち込み、共和党をポピュリズムと陰謀論に支えられる「トランプの党」に変えていった。

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photo by Gettyimages

だがトランプ大統領の敗北で、共和党は新たな展開を迫られている。再び伝統的な保守主義に回帰するのか。それともトランプ大統領が敷いた路線を突き進むのか。党のアイデンティティをどう確立するのかが問われている。

そして、トランプ大統領を支持してきた陰謀論グループのQAnonは生き残るのか。

今回の選挙で明らかになったことは、QAnon支持グループが共和党内に確実な基盤を構築したことだ。政治サイトのFiveThirtyEightは「QAnonは2020年の選挙で議会を奪うことはできない。だが共和党の中にホームを発見した」と題する記事を掲載している(2020年10月29日)。

QAnon、都へ行く

1939年に製作された映画「スミス氏、都に行く」はアカデミー賞受賞の名画である。英語のタイトルは「Mr. Smith Goes to Washington」。偶然に上院議員に選ばれた地方出身の青年が、地元で政治家と企業家が結託して不正を働く事実を暴露する話である。

若者は上院でフィルバスター(議事妨害)の手法を使って不正を訴えた。何日も演説を続ける。最初は田舎出の何もしらない青年だと無視されるが、その情熱に動かされ、人々は次第に彼の告発に耳を傾け始める。最後は、不正を働いていた上院議員の自殺で終わる。若手政治家の感動的な正義の物語である。

なぜ、こんな古い映画を持ち出したかというと、政治サイト「Roll Call」に「QAnon goes to Washington: two supporters win seats in Congress」(11月5日)という記事を発見していたからである。同記事の副題は「Deep State陰謀論を信じる者が権力の殿堂に入る」である。

筆者は何度もQAnon (10月19日公開の「トランプを支える謎の運動QAnon、その驚愕の『陰謀の世界観』」参照)について記事を書いてきた。今回の選挙で、多くのQAnon支持者や同調者が共和党連邦議会予備選挙に立候補したことは知っていた。おそらく奇妙な陰謀論を支持する政治家を、有権者が選ぶことはないだろうと考えていた。

だが3人のQAnonを支持する女性候補者が連邦下院選挙で当選したのである。州議会ではもっと多くのQAnon信奉者が議席を得ただろう。

共和党に、そして議会に足場を作った

QAnonは、世界がリベラル派の陰謀組織である「Deep State(影の政府)」に支配されていると主張するグループである。特定の組織は持たないが、SNSを通してコミュニケーションを図り、トランプ大統領を支持し、Deep Stateに対する反革命を主張する集団である。

メンバーの間で暗号を使ってコミュニケーションを図り、過激な主張を展開していた。だが今年の夏ころから公の場に姿を現すようになった。アメリカのメディアは、「QAnonが政治の舞台に登場」と一斉に報じた。中には「QAnonが政治の主流派に」と書いたメディアもあった。それが実現のものになりつつあるのだろうか。

投票日前から、QAnonの行動は、ぱったりと止まっていた。FacebookなどがQAnonの書き込みを制限したことが響いたのかもしれないが、不気味な沈黙であった。そしてQAnon支持者の候補者2名が連邦下院議員選挙で当選したという情報が入ってきた。

「Roll Call」の記事は「QAnonが議会に向かう。根拠のない陰謀説を信じるトランプ支持者のマージョリー・テイラー・グリーンがジョージア州の連邦下院選挙で勝利した。そしてローレン・ボーバートもコロラド州で連邦下院議員の勝利を宣言した」と書いている。

さらに「これらの勝利は、Deep Stateがトランプ大統領の転覆を図り、リベラル派が子供を誘拐している、という様々な根拠ない主張を、公然と支持する共和党員による最初の勝利である。彼らは『Qに関心を抱く』共和党議員の会議のホストになるだろう」と書いている。

さらに「グリーンの勝利は驚きではない。彼女は強敵のいないジョージア州第14選挙区から立候補し、APが選挙当日の午後9時16分に勝利を報道したとき、74.8%の票を獲得していた」と伝えている。同選挙区で立候補したのは、グリーン候補と民主党のケヴィン・ヴァン・アスダル候補の2人である。グリーン候補の圧勝である。ちなみに得票数はグリーン候補の22万7364票に対して、アズダル候補はわずか7万6539票であった。

グリーン候補は、1974年生まれの46歳。建設会社の経営者である。ジョージア大学を卒業しているが、ジョージア州以外に住んだことはないローカルな人物である。

2017年にSNSにビデオをアップし、「Qは愛国者だ。私たちは、それを確信している。悪魔を崇拝する国際的な秘密結社を根こそぎする千載一遇のチャンスだ。私は、トランプ大統領がそれを実現すると信じている」と語るなど、熱狂的なQAnon信奉者である。

同候補が共和党予備選挙で勝利したとき、トランプ大統領は彼女を「共和党の将来の星」と絶賛している。グリーンは、人種差別主義者、反ユダヤ主義者、反イスラム主義者である。

当選者の横顔

ボーバート候補はQAnonを支持しているが、グリーン候補ほど熱狂的なQAnon信奉者ではない。

QAnon信奉者のアン・ヴァンダースチールが司会を務めるオンライン・ショー「Steel Truth」に出演した際、「QAnonについては良く知っている。QAnonの理論は真実だと思っている。その理論が意味するところは、アメリカがより強く、より優れた国になることだ。そして人々が保守主義の価値に戻ることだ」と語っている。またQAnonの主催するYouTube番組「Patriot Soapbox」にも出演している。

ただ共和党予備選挙で当選して以降、選挙を意識してQAnonとは距離を置き始めている。

1986年生まれの34歳で、ウエイトレスが銃を携帯する「シューター・グリル」と呼ばれるレストランの経営者である。妊娠したため、高校は中退している。

ボーバート候補はコロラド州第3選挙区では、民主党のダニエル・ミッチ・ブッシュ候補と競い、最新時点の得票率は51.3%、21万5279票を獲得し、ブッシュ候補の45.1%、19万0655票に大差をつけて当選を果たしている。

遅れて、もう1人のQAnon信者が、下院議員に当選した。ユタ州第4選挙区のバーガス・オーエンズ候補である。民主党の候補者ベン・マックアダムスと最後まで競り合い、得票数17万7170票(45.5%)を獲得し、逃げ切った。

同氏はディープ・サウス出身の黒人で、フットボール選手として活躍、保守派のテレビ局のフォックス・ニュースにもたびたび出演している人物である。同氏は「自分がQAnonを支持するオンライン番組に出演しているのは保守主義のメッセージを送る努力の一環だ」と語っている。

いかに深く浸透するのか

当選を果たしたQAnon信奉者の候補者は3人だが、選挙に立候補した数はもっと多い。「Media Matters」によると、共和党予備選挙を勝利して本選挙に出馬したQAnon信奉者は27人である(31人としているメディアもある)。

カリフォルニア州から5名、ジョージア州から4名、フロリダ州から3名、イリノイ州とアリゾナ州、デラウエア州からはそれぞれ2人、コロラド州、ネバダ州、ハワイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ロード・アイランド州、オレゴン州、オハイオ州、テキサス州から各1人である。注目されるのは、立候補した地域が全国にわたっていることだ。

落選したオレゴン州で上院議員に立候補したジョー・レイ・パーキンスは、「QAnon支持者の誓い」を掲示し、「私はQとQAnonチームと共にある」と、QAnonに対して熱狂的なメッセージを送っている。

ピュリッツア賞受賞者の著名なジャーナリストのマシュー・ローゼンバーグ氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に「QAnonの支持者が共和党内に新しい拠点を獲得した」(”A QAnon Supporter is Headed to Congress“,2020年11月3日)と書いている。そして「問題は、今回の選挙がQAnonの政治的な台頭の始まりを示すのか、ピークを示すのかである」と、問いを投げ掛ける。すなわち、QAnonはトランプ大統領という陰謀論の核心を失っても、影響力を維持し、拡大することができるのかということである。

ローゼンバーグ氏は「QAnonは信じられないほど弾力的で、その予言が実現しなくても、古い予言を吸収し、何度も蘇ってきた。QAnonの支持者は、バイデン前副大統領の勝利を、Deep Stateが強力な影響力を行使して大統領を打ち負かした証拠と見るだろう。QAnonの将来は、QAnon運動が共和党内にいかに深く浸透できるかどうかに掛かっている」と指摘する。

着実に、着実に

では共和党は、QAnon議員や運動を受け入れることができるのだろうか。

決して大きな流れではないが、共和党内部にQAnonを受け入れるグループが確実に存在している。ケリー・ローファー共和党上院議員はグリーン候補を支持し、「ジョージア州でQAnonのやっていることを気にする人はいない」とグリーンを擁護している。

またグリーン候補が同上院議員を支持する声明を出した時、ツイッターで「彼女が正式に私の選挙を支持した。私は、この強力で、保守的な闘士がチーム・ケリーに加わったことを誇りに思う」と書いている。

テネシー州のスーザン・リン州下院議員は自分のフェイスブックに星条旗とQを組み合わせた旗を掲載し、QAnonのスローガンである「The Great Awakening(大覚醒)」のハッシュタグをつけてツイートしている。連邦議会だけでなく、州議会でみればQAnon支持者は相当な数に上るだろう。

QAnonを容認する動きは保守派や共和党内に着実に増えている。

保守派の人々の間には、民主党と共和党のエスタブリッシュメントは腐敗しているという根強い意識があり、そうした腐敗したエスタブリッシュメントからアメリカを救う必要があり、それを押し進めているのがQAnonであると受け止めている。

グリーン候補が当選したジョージア州上院選挙の立候補者は「QAnonは共和党の本当の底流になっている」と語っている。QAnonの支持者が共和党内の少数派であるが、重要な存在になりつつあることは間違いない。

割れる共和党

それを裏付ける事実がある。10月に連邦下院でQAnonを非難する決議案が提案された。その決議案には、選挙でQAnon支持の候補者の当選を阻止する狙いがあった。同時にFBIにQAnonの捜査を促す文言も含まれていた。

決議案を提案したトム・マリノウスキー議員は、共和党議員の協力を得て超党派の決議案の成立を目指した。決議案は371対17と圧倒的な数で可決されたが、共和党議員17名が反対票を投じている。

反対投票をした共和党議員は、反対理由に「極左のAntifaに言及されていない」ことを挙げていたが、QAnonに同調していることは間違いない。QAnon支持者がマリノウスキー議員の個人攻撃を始めると一部の共和党議員もそれに同調している。

ピュー・リサーチ・センターが行った調査(2020年9月16日)では、47%の人々がQAnonについて聞いたことがあると答えている。3月段階では、その比率は23%に過ぎなかった。QAnon運動が表面に顔を出した8月以降、その存在はアメリカ内で急速に認知されるようになっている。

共和党内でみると、この間に認知度は39%から55%へと急速に高まっている。その比率がQAnonを支持することを意味する訳ではないが、共和党支持者の間にQAnonの存在が認知されていることを示している。

11月14日、ワシントンで、トランプ支持者の極右グループのプラウド・ボーイなどによる、「Million MAGA March」と呼ばれるデモが行われた。BLMのデモ隊と対立し、乱闘場面も見られた。

トランプ支持派のデモの中にグリーン氏の姿があった。彼女はデモ隊に向かってQAnonを支持する演説や人種差別的発言を繰り返し行い、デモ隊参加者に最高裁に向かおうとアジを飛ばしていた。

かつて草の根のティーパーティ運動があり、共和党の地方組織に着実に浸透し、選挙で候補者を擁立し、共和党内に確実な勢力を確立した。QAnon支持者も、現実に対応しながら、共和党内に一定の勢力を確立する可能性は否定できない。

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