ao、深みのある歌唱で築く“普遍的な居場所” RADWIMPS新曲へのフィーチャリング、サマソニ出演......2023年は飛躍の年に

ao、深みのある歌唱で築く“普遍的な居場所” RADWIMPS新曲へのフィーチャリング、サマソニ出演......2023年は飛躍の年に

  • Real Sound
  • 更新日:2023/05/26
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先月リリースされたRADWIMPSの新曲「KANASHIBARI feat.ao」を聴いて、「この女性のシンガーは誰だろう」と驚いた人は多かったはず。もしかしたら、そのアーティスト名を、昨年1月にSpotifyが発表した「RADAR: Early Noise 2022」(Spotifyが選出した2022年に活躍を期待する次世代アーティスト)のラインナップで見た覚えのある人もいるかもしれない。彼女の正体は、現在17歳のシンガーソングライター ao。この記事では、近年、確実に活躍のフィールドを広げながら、次々と新たな支持を獲得しつつあるaoの音楽活動について紹介していく。

まずはじめに、彼女のプロフィールについて。aoは2021年9月、当時15歳、中学3年生のタイミングで「Tag」でメジャーデビューを果たしており、2022年3月には、小学6年生からの4年間で制作した楽曲を収録した1st EP『LOOK』を発表した。多くの人は、そのメジャーデビューの早さに驚いたかもしれないが、2016年、当時12歳でデビューを果たした同い年のグレース・ヴァンダーウォールの活動を追い続けてきたというao本人にとっては、その早さはそこまで特別なものではないのかもしれない。いずれにせよ、学業と並行しながら、楽曲制作をはじめとした音楽活動を積極的に展開し続けてきた彼女のバイタリティには驚かされる。

次に、aoの音楽性について。メジャーデビュー曲「Tag」を聴いてまっ先に驚かされたのは、深淵な響きを帯びたトラックのダークなムードと、軽やかに英語詞を歌いこなす彼女のしなやかな歌唱スキルであった。日本語詞と英語詞の差を意識させないような流麗な歌い方は、上述したトラックのムードとも相まって、当時15歳とは思えないほどの奥深い魅力を放っている。

また、ティーンエイジャーが胸の内に秘めるリアルな心境をトレースした歌詞も素晴らしい。「Tag」では、〈自分らしくいたいの邪魔をしないで/負けはしないよ I win this time, this time〉という切実な一節が耳を惹きつける。また、高校生になり初めて制作したという「リップル」では、晴れやかなメロディに乗せて〈もう自分を信じてみたいんだよ〉という希望に満ちたポジティブなフィーリングを共有する。

ao - Tag (Official Video)

特筆すべきは、1st EP『LOOK』の中でも特に大きな反響を得た「you too」だ。彼女は同曲について、辛い気持ちを抱えながらも笑顔で頑張る友達の姿を見て、「みんな頑張っているから自分も頑張ろうと思って書いた曲」(※1)であると明かしている。そうした不安や希望が入り混じる10代特有の心情について、aoは〈分からないものだけ集めて答え合わせして/不規則に揺れる目的地だけ見つめていよう〉といった言葉で輪郭を与えてみせた。一聴して、メロディーメーカー、トラックメイカーとしての才能に惹きつけられるが、こうした繊細にしてアンビバレントな感情を、平易な言葉で的確に表す作詞家としての才能もすでに大きく花開いていると言えるだろう。英語詞のナチュラルな響きに耳を奪われた人も多いかもしれないが、彼女が大切にしている日本語特有の美しい語感にも、ぜひ改めて耳を澄ませてみてほしい。

ao - you too (Official Video)

また、「you too」が象徴的なように、それぞれの楽曲では、ao自身の等身大な想いを重ね合わせた言葉が綴られているが、その一方で、具体的なワードに寄せすぎず、リスナーへの解釈の余地を広くとった言葉遣いがなされている点もポイントだ。「RADAR: Early Noise 2022」のスペシャル映像のインタビューの中で、aoは、曲作りで心がけていることについて次のように語っている(※2)。

「あんまり自分の思っていることを書きすぎないこと」

「自分が本当に思っていることと、こうでありたいみたいな理想のバランスを気をつけてます」

「誰かの居場所になったりとか、疑問とかを投げかけられる場所になりたい」

「私の曲は私が考えていることだから、きっと誰かが考えていることとは違うし、それを指摘してもらいたいというか、コメント欄とかに『いや、私はこう思います』とか、いろんな人が話せる場所になりたいなって思います」

こうした発言からは、aoの音楽観がすでに明確になっていることが分かる。彼女にとっての音楽は、自己表現の手段というだけではなく、リスナーにとっての「居場所」でもある。おそらくは、上述した作詞における言葉遣いも、そうした彼女自身の音楽観に基づいているものなのだろう。「いろんな人が話せる場所になりたい」というaoの深い想いが、それぞれの楽曲に豊かな普遍性を与え、そして実際に今、彼女の楽曲は10代、20代のリスナーを中心に支持を拡大しつつある。

ao - 幻想 (Official Video)

2022年3月の1st EP『LOOK』のリリース以降も、Yaffleがサウンドプロデュースを手掛けた快活なロックチューン「チェンジ」や、「リップル」の続編として制作した「幻想」など、様々な楽曲を発表することで、自身の音楽世界を拡張し続けているao。そのタイミングで実現したのが、冒頭でも挙げたRADWIMPSの新曲「KANASHIBARI feat.ao」へのフィーチャリングゲストとしての参加だ。新進気鋭のアーティストを大胆にフックアップする野田洋次郎の先見の明には改めて驚かされるが、同曲において、中盤のパートを堂々と担うaoの存在感も凄い。何より、「絶望的なラブソング」として制作されたこの曲の中で、凛と澄み渡った響きを高らかに届ける彼女の歌声に強く心を動かされる。

RADWIMPS - KANASHIBARI feat.ao [Official Music Video]

4月から放送されている東京・大阪・名古屋国際工科専門職大学のCMでは、未発表の新曲「ENCORE」がCMソングとして起用されており、また、同タイミングで放送が始まったハーゲンダッツのCMで、aoはクラシックの名曲「月の光」(クロード・ドビュッシー)にオリジナルの歌詞を乗せたカバー曲を歌っている。このように今、彼女の歌声は、これまでの活動とは異なるスケール感をもって多くの人の耳に届き始めていて、また先日には、8月の『SUMMER SONIC 2023』の『Spotify RADAR: Early Noise Stage』に出演することもアナウンスされた。2023年が、aoにとって大きな飛躍の年になることは間違いないだろう。テレビCMやフェスをはじめとした様々な場所で彼女と出会った時は、ぜひその新たな才能に注目してみてほしい。

ハーゲンダッツTVCM「本日、とろけ曜日。」篇30秒

※1:https://realsound.jp/2022/04/post-1004800.html
※2:https://youtu.be/HzrPCI9ezRc

ao 公式サイト

松本侃士

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