「勝てるGK」ケイロル・ナバス、驚きのタイトル数。乗り越えた試練も多数

「勝てるGK」ケイロル・ナバス、驚きのタイトル数。乗り越えた試練も多数

  • Sportiva
  • 更新日:2021/05/01

サッカースターの技術・戦術解剖
第56回 ケイロル・ナバス

<大舞台に強い>

◆【写真】今、世界トップレベルのサッカースターたち

ケイロル・ナバス(パリ・サンジェルマン)は、現代のベストGKの一人だ。

アリソン・ベッカー(リバプール)、ティボー・クルトワ(レアル・マドリード)、ダビド・デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)、エデルソン(マンチェスター・シティ)、ヤン・オブラク(アトレティコ・マドリード)など、安定して高い評価を得ているGKたちとの比較で、ナバスが図抜けているのはビッグタイトルの数である。

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これまで数々のビッグタイトル獲得に貢献しているケイロル・ナバス

レアル・マドリードでは2015-16シーズンから3年連続でチャンピオンズリーグ(CL)優勝を果たしている。CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)のプレーヤーとしてヨーロッパで最多16の優勝を勝ちとった。メキシコの英雄でありバルセロナで活躍した、ラファエル・マルケスを抜く最多優勝回数である。

もちろんGKとしての能力も図抜けている。とくにシュートストップにおける技術とアジリティはすばらしく、レバンテでプレーしていた2013-14シーズンは、リーガ・エスパニョーラで最多のセーブを記録し、セーブ率は78%。リーグの最優秀GKに選出されている。PKストッパーとしても有名で、およそ半分以上のPKを不成功に終わらせている。

身長185cmはGKとしては大きいほうではない。近年のGKに要求される足下のテクニックは、フィード力ではエデルソンなどには及ばないかもしれない。だが、ナバスはシュートを高確率で防ぎ、高いボールにも強く、何と言っても「勝てるGK」で大舞台に強い。

2014年ブラジルW杯では、コスタリカ初のベスト8進出に大きな役割を果たしている。この大会でナバスは3試合でマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)に選出されているのだ。グループステージのイングランド戦、ラウンド16のギリシャ戦、そして準々決勝のオランダ戦は敗れたにもかかわらずMOMだった。ナバスの存在なしに、コスタリカのベスト8は考えられなかった。

<交換移籍不成立から大活躍>

2014-15シーズンから5シーズン所属したレアル・マドリードでは、12のタイトルを獲得している。

2015-16シーズンではCLで8試合連続のクリーンシートを達成。738分間無失点はイェンス・レーマン(アーセナル)に次ぐ記録だった。しかし、CL3連覇のレアルのゴールを守ったナバスでも順風満帆だったわけではない。

レアルに加入した当初は、イケル・カシージャスの控えという立場だった。フィールドプレーヤーと違ってGKにはポジションが1つしかない。クラブのレジェンドであるカシージャスの存在は、ナバスにとって大きな壁だったに違いない。

そして、カシージャスは次のシーズンにFCポルトへ移籍したが、ナバスにとって真の危機はむしろその時に起きている。

レアルがマンチェスター・ユナイテッドのデ・ヘアの獲得に動いたからだ。世界最高クラスのデ・ヘアはスペイン人でもあり、外国人枠を1つ空けられるのもクラブにとってメリットだった。ナバスは入れ替わりでマンチェスター・ユナイテッドへ移籍することになっていた。

ところが、ナバスとデ・ヘアの交換トレードは意外な理由で破談になっている。ぎりぎりの交渉の末、マンチェスター・ユナイテッドから契約書がファクスで送付されたのだが、LFP(スペインプロリーグ機構)に到着したのが移籍期限の8月31日を越えてしまったのだ。マンチェスター・ユナイテッドは送信履歴が23時59分だと主張したが受け入れられず、デ・ヘアのレアル移籍は不成立となってしまった。

プレミアリーグの移籍期限にはまだ余裕があったので、ナバスをマンチェスター・ユナイテッドに移籍させることは可能だったが、デ・ヘアを獲れなかったレアルがナバスを手放すはずがない。マンチェスター・ユナイテッドもデ・ヘアがいるのにナバスを獲得する理由はなく、この話はこれっきりになった。

カシージャスの移籍で背番号1と正GKの座をつかんだナバスは、このシーズンからのCL3連覇に貢献。2016-17シーズンは5年ぶりのリーグ優勝も成し遂げたわけである。

◆ビッグセーブ連発のなぜ。アトレティコのオブラクが世界最高GKの理由>>

<ポジションを獲って譲らない>

2018-19シーズン、クルトワがレアル・マドリードに加入する。デ・ヘアのケースとは違って、クルトワは無事にレアルにやって来た。

フレン・ロペテギ監督はリーグ戦ではクルトワ、カップ戦にナバスを起用した。甲乙つけがたいGKがいる場合、こうした起用はよく行なわれる。一方、ロペテギ監督が解任されたあとに就任したサンティアゴ・ソラーリ監督は、リーグもカップもクルトワを起用した。

3月にジネディーヌ・ジダン監督が就任すると、ナバスは正GKになっている。クルトワの負傷もあったのだが、監督の考え方1つでGKはポジションを失うし、負傷すれば当然交代は起こる。実力が接近しているGKが2人いる場合、片方が定着するとポジションを奪うのは容易ではない。

このシーズンが終わると、ナバスはパリ・サンジェルマンへ移籍した。パリSGのアルフォンス・アレオラ(現フラム)との交換トレードだ。世界最高クラスのGK2人は、レアルのようなスター軍団でもやはり贅沢すぎたわけだ。

コスタリカの名門デポルティーボ・サプリサでデビューし、10年にスペインのアルバセーテへ移籍した当初、ナバスは第2GKだった。レバンテでも最初は控えである。レアルでもそうだった。ただ、一度ポジションを獲れば譲ることがなかった。

14年、ナバスはコスタリカで初めてのCONCACAF年間最優秀選手賞を受賞している。GKとしても初の受賞。しかも17年にもう一度受賞した。2017-18シーズンはUEFAのベストGKにも選出された。

GKは孤独なポジションではあるけれども、1人でチームを勝たせることもできる。1回の決定機の阻止は、1ゴール決めるのと同じ価値があるのだ。コスタリカ代表では毎試合ハットトリック同然の活躍だったから、CONCACAFでの受賞も頷ける。

西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

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