習近平よ、アメリカはもう許さない...! ここから中国が直面する「マジでヤバい問題」の正体

習近平よ、アメリカはもう許さない...! ここから中国が直面する「マジでヤバい問題」の正体

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/02/22
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アメリカが「習近平を許さない」本当のワケ

バイデン政権がスタートした。

中国はこのチャンスに、米中の関係改善の糸口を探ろうと、サインを送った。だが新政権は、トランプの強硬路線を踏襲する構えだ。

ブリンケン国務長官は、「トランプ政権の対中強硬策は正しかった」と上院で証言した。これからも手綱をゆるめず、中国の態度が変わるのを待とう。「戦略的忍耐」である。

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なぜアメリカは、習近平政権のやり方を、こうも許せないのか。

習近平政権が、信用ならないからか。それもある。武漢に始まったコロナ禍は、中国の責任なのに、情報を隠している。習近平が独裁的だからか。それもある。民主的な政権運営とは真逆のやり方だ。中国共産党が社会主義だからか。それもある。社会主義だから、自由や民主主義といったアメリカ的価値観と合致しない。少数民族を圧迫し、多様性を尊重しない。

だが根本は、こうだ。中国の政治システムが、アメリカや西側世界とまるで違っていること。「法の支配」が成り立たないこと。特定の誰かが権力を握って、人びとを支配すること。このやり方は、文明の反対にみえる。そんな国が、アメリカを差し置いて、国際社会を支配するなどあってはならないのである。

旧約聖書の「出エジプト記」をみるとよい。預言者モーセは、神ヤハウェの命令で、イスラエルの民を率いてエジプトを脱出する。エジプトは異教の偶像を崇め、ファラオが権力を握り、イスラエルの民を奴隷にしている。神ヤハウェと自由を選ぶか、それとも、隷属を選ぶか。−−聖書を読み慣れているアメリカの人びとは、中国を、自由のないエジプトのように思うのだ。

中国の「異常さ」の根幹

ただの専制や独裁ならば、まだ許せる。中国は、神を知らず、自由を知らない。アメリカにとって代わる資格がそもそもない国なのである。

中国にも憲法があるじゃないか。経済は繁栄しているじゃないか。人びとの生活もそれなりに守られているじゃないか。

それを言えば、かつて、大日本帝国もそうだった。でも天皇がいて、軍部がのさばり、国際社会のルールを無視して行動した。アメリカは、放置できないと思った。同じようにアメリカは、中国を放置できないと思っているのである。

軍部が日本のガンだったとすれば、中国のガンは、中国共産党である。

日本の軍部はそれでも、憲法に規定があった。国家機関だった。天皇の統帥権をタテに政府のコントロールを離れただけだ。

中国共産党は、憲法に規定がない。国家機関でなく、任意団体である。その任意団体が権力をもち、人民解放軍の指揮権をもっている。はなから憲法のコントロールを離れているのである。

中国共産党が政権を乗っ取り、政府を樹立し、政府を指導する。これは革命のための、緊急措置である。でもそれが恒常化している。革命はもうやらないのに、共産党は権力を手放さない。これが中国の「異常さ」の根幹だ。

中国共産党、じつは「国家機関」ではない

中華人民共和国憲法をみてみよう(中国の憲法はときどき改正される。いまの憲法は2018年に改正されたばかりである)。

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中国共産党のことは、憲法の本体ではなく「序言」に書いてある。

《毛沢東をトップとする中国共産党は、中国の各民族の人民を指導し、長期にわたる武装闘争などの紆余曲折を経て、ついに帝国主義、封建主義、官僚資本主義の統治をくつがえし、新民主主義革命の偉大な勝利を勝ち取って、一九四九年に、中華人民共和国を樹立した。》共産党がまずあって、国家と政府をうみだしたのだ。

そのあとも、中国共産党の指導がどんなに立派で大事か、延々と書いてある。憲法の本文には、どう書いてあるか。冒頭に、こうある。

《第一条 中華人民共和国は労働者階級が指導し、労農同盟を基礎とした、人民民主専制の社会主義国家である。社会主義制度は中華人民共和国の根本制度である。中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴である。いかなる組織や個人も、社会主義制度を破壊することを禁止する。》

いまの憲法は、1982年版の憲法を、何回か改訂したもの。「社会主義制度は…本質的な特徴である。」の部分、つまり中国共産党に言及してある部分は、2018年の改訂でつけ加えられたものだ。

つまり、中国の憲法の条文には、もともと(そしていまも)、中国共産党に関する規定がない。これは、どういう意味か。中国共産党は、中国の国家機関ではない、ということだ。

憲法が規定していること

この点は、大事である。日本の憲法の、天皇の取り扱いと比較してみるとわかる。

日本の憲法には、天皇についての条文がある。大日本帝国憲法にもあったし、日本国憲法にもある。憲法の条文に定めがあるなら、天皇は、国家機関である。だから美濃部達吉博士は、天皇は国家機関であると説いた。日本中の法学部が、そう教えた。当然の考え方である。

それに異を唱える人びとが出てきた。天皇は、憲法がない時代から、日本の統治者だった。いまでも、憲法を超越した統治者であるはずだ。天皇親政説である。そして、美濃部博士の「天皇機関説」は間違っている、とする。

軍部がこれを支持して大騒ぎになり、美濃部博士は社会的生命を奪われ、天皇機関説は葬られた。天皇親政説が、大手を振ってひとり歩きした。

天皇が憲法を超越した権力なら、天皇に(だけ)従う陸海軍も、憲法を超越した権力になる。軍部の暴走に、根拠が与えられた。

アメリカはこれをみて、日本を許せず、戦争もやむをえないと覚悟した。日本の政治システムは、憲法によってコントロールされない、異質なメカニズムで動いている(だから危険だ)からだ。

中国共産党の「暴走」

さて、中国共産党はどうか。「共産党機関説」はありえない。そもそも憲法に、共産党に関する規定がないのだから。つまり、「共産党親政説」で、中国は一致している。立憲君主制が途中から、軍部の暴走に変わった日本と違って、中国ははじめから、共産党の暴走なのである。

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理性を欠いて、まともな行動ができなかった日本の軍部に比べれば、中国共産党はまだしも合理的に行動してきてはいる。しかし、文化大革命もあった。天安門事件もあった。内モンゴルやチベットや新疆ウィグルで、やりたい放題をやっている。

共産党に対して、憲法は歯止めにならないのだ。憲法が歯止めにならなければ、何が歯止めになるか。

世論は歯止めになるのか。歯止めにならない。共産党は新聞やテレビなど、メディアを握っている。文化部が、プロパガンダを主管している。どういう世論があるかを報道するのは、共産党である。共産党に不都合なことがらを、報道するはずがない。

世論は、選挙に表れて、はじめて力をもつ。でも中国には、自由な選挙はない。政権交替を可能にする選挙は、存在できない。中国の選挙は儀式である。歯止めにならない。

全国人民代表大会も、やはり、民意が反映されているという体裁を整えるための、儀式である。誰が代表となるかも、共産党がお膳立てする。歯止めにならない。

中国共産党をコントロールできるのは…

中国共産党をコントロールできるのは、唯一、外国の圧力だけである。国際社会が結束して、中国に働きかけるなら、中国はそれに影響される。けれどもどれだけ効き目があるのか、疑わしい。

どの国にも、その国の国益があり、利害がある。それを主張するのは、ナショナリズムの正当な範囲である。問題は、その国の行動が、その範囲に収まるのかどうかである。

たとえば北朝鮮を考えてみよう。北朝鮮は核開発を進めている。それは、自国を防衛し人民の利益を守るためなのか。それとも、いまの体制とひと握りの人びとの利益を守るためなのか。人民のことなどどうでもよく、体制を守ることだけが大事なようにみえる。もしそうなら、国際社会は、北朝鮮の行き方を許せないと思うだろう。

中国の場合はどうなのか。中国共産党の看板のもとでいい目をみている、ひと握りの人びとの利益のため(だけ)になっていないか。もしそうなら、やはり国際社会は許さないだろう。

中国の場合はとくに、国のサイズが大きい。国際社会への影響も、北朝鮮の場合とは比較にならない。中国共産党のこの先を予測することは、国際社会にとって緊急の課題だ。

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