幼い犬を突然襲う”恐怖”の理由は? 突然「散歩嫌いになった」犬の驚きの理由

幼い犬を突然襲う”恐怖”の理由は? 突然「散歩嫌いになった」犬の驚きの理由

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/09/23
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子どもよりも多いペットの飼育数

総務省の発表によると2018年調べで15歳未満の子どもの数1,553万人。対して犬と猫の飼育頭数合計は1,855万頭(一般社団法人ペットフード協会調べ)。家庭における子どもの数よりもペットのほうが多いことになる。
今年も9月20日から始まった「動物愛護週間」はそうしたペットを含む「動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深める」ことを目的に環境省が実施しているものだが、「適正な飼養」とはどんな飼い方を言うのだろう。犬も人間と同じように扱うことが「適正」なのだろうか。「犬には散歩が必要」と思われているが、散歩嫌いな犬なら「散歩に行かない」ことが「適正」なのだろうか。

前編「『犬が嫌がるから散歩に行かない』は正解?間違い?「犬の散歩嫌い」の裏にあるものでは動物行動学が専門の高倉はるか先生に、犬が散歩に出るのを嫌がる3つの原因を教えてもらった。後編ではさらなる原因として、幼犬に突然訪れる「恐怖期」や、飼い主への不満から散歩嫌いになるケース、さらにはあまりにひどい生育環境のせいで散歩に行けなくなってしまった犬についてお伝えする。

前編「『犬が嫌がるから散歩に行かない』は正解?間違い?「犬の散歩嫌い」の裏にあるものこちらから。

*以下、高倉はるか先生のコメントです。

何を見ても怖くなる時期がある

以前飼っていたバディというオスのフラットコーテッドレトリーバーの話です。1歳になる直前に突然散歩を怖がるようになりました。
バディは「恐怖期」に入ってしまったのです。

4 「恐怖期」とは

「恐怖期」とは、音やモノなどの刺激を急に怖がるようになる時期を言います。たいていは子犬から成犬になる成長途中で急に表れる症状です(ない子もいます)。それまでは好奇心旺盛で無邪気で無鉄砲なところもあるバディでしたが、ある体験をきっかけに周囲の危険に気づき、急に極端に怖がりになってしまったのです。

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散歩の途中で他の犬に威嚇された恐怖から、恐怖期に入ることもある。Photo by iStock

バディが恐怖期に入ったきっかけとは

きっかけは散歩中によその犬に吠えられたことです。
散歩の通り道にある家の2階からだったため、バディには吠える犬の姿が見えません。びっくりして腰を抜かし、それから外に出るのを嫌がるようになってしまいました。
こうなったら、まずは犬が何を怖がっているのか冷静に見極めることから始めます。無理矢理散歩に連れ出せば、トラウマになってかえって長引くことがあるので慎重に進めましょう。

バディの場合は「見えない何か」に怯えたので、「2階の犬が吠えている」ことを理解させるために準備として「アップ」で上を見るコマンドを教えました。
次に再び外に出られるよう(無理に引きずり出すと悪化する)、家の前で学校の行き帰りの小学生に撫でてもらったり、声をかけてもらいました。バディは子ども好きだったので気分がよくなり、子どもたちと一緒に歩いたり、子どもにリードを持ってもらって少しずつ外を歩けるようになりました。
最後に「恐怖の原因」を教えるため、外に出られるようになったバディを問題の箇所まで連れて行き、吠える犬を指さして「アップ」をさせました。
「見えないところから急に吠えられた」のが怖かったので、「あの犬が吠えている」とわかればもう大丈夫。この恐怖を克服したことで、もとの陽気な散歩好きのバディに戻りました。

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「アップ」で指さした方を見られるようになると、言葉を覚えるうえでも便利でコミュニケーションがより取りやすくなります。Photo by iStock

飼い主の行動がストレスに

5 思い通りにならないから行きたくない

家の中なら飼い主さんが犬の希望をすぐに叶えてくれるのに、外だとままならないから嫌、という内弁慶な理由もあります。

飼い主さんがいつも犬の言うことを聞いてあげていると、犬はだんだんと不満がたまってきます。不思議に聞こえるかもしれませんが、犬は飼い主が出すコマンドに従い、褒めてもらったり、ご褒美をもらうことで「充実感」を味わえるのです。
反対に「餌をくれ」「遊んでくれ」と自分が出す要求に対して、飼い主が「ごはんね、あげますよ」や「遊びたいの? 遊ぼうね」と答えていると、飼い主に対して「従ってもらって当然」という意識を持つようになってしまいます。
家の中にいるときはそれでいいかもしれませんが、外に出れば「信号で待つ」「飼い主の道順に従う」など飼い主が主導しないとなりません。すると犬はいら立ち、結果的に「散歩は不満が募るもの」となってしまうのです。

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飼い主に言うことを聞いてもらうのが当たり前になってしまうと、反対に不満を感じやすくなってしまうという。Photo by iStoc。

どちらがコマンドを出すのか、犬を愛する飼い主にとってはどちらでもいいように聞こえるかもしれません。ですが犬が飼い主のいうことに従わなければ、犬の安全を守ることができません。
コマンドを出すのは人間、従った犬を大きく褒めてあげてもらえたらと思います。

6 散歩の途中で歩かなくなる

散歩には付いてくるのに、途中で歩かなくなるのなら、単に疲れて歩くのが面倒くさくなったのかもしれません。立ち止まれば飼い主さんが抱っこしたり、カートにのせてくれると知っているんですね。
老化や病気が原因ではなければ、とくに肥満気味の場合は、声を掛けて褒めたり励ましながら歩く距離をのばしていけたらいいと思います。
反対に散歩が好きで、帰りたくなくて立ち止まることも。犬は帰り道をちゃんとわかっているんですね。ここを曲がると帰り道、という場所で犬が立ち止まったなら、時間が許す限りもう少しつきあってあげてほしいなと思います。

散歩の楽しさを知らずに育った犬

7 散歩の楽しさを教えてもらえなかった

ここまでのどのケースにもあてはまらず、「家に来た時から散歩が嫌い」というならば、一緒に暮らす前の環境に問題があったのかもしれません。保護犬など飼育崩壊しているところからレスキューされた犬は、部屋やケージの中の世界しか知らず散歩に慣れていません。またペットショップに長くいた場合も、狭いケージ中に閉じ込められているため、外を必要以上に怖がるようになります。

こうした過酷な環境で育った犬は、恐怖心や不安が大きく、飼い主さんが努力してもなかなか慣れてくれないかもしれません。人のあまりいない刺激の少ない場所を探して連れ出すのも大変でしょうし、小さな刺激で驚いて逃げ出そうとすることもあります。
そういう場合はどうしたらいいでしょう。私はそれでも散歩に連れ出してもらいたいと思います。犬の楽しみは、「ごはん」「飼い主にかまってもらう」「散歩」のたった3つしかありません。散歩がなくなれば10~20年の一生を家の中だけ生きていくことになります。人間同様、様々な刺激や運動によって成長できる犬にとって、それは幸せなことでしょうか。

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狭いケージの中に閉じ込められた犬は、散歩の楽しみを味わったことはなく、外に出るのを嫌がる。Photo by iStock

かつて劣悪な環境で繁殖を繰り返していたブリーダーから保護された犬の譲渡の手伝いをした時に、生まれてから一度もケージから出たことのない犬と会いました。以前「「4年間閉じ込められ感情を失ったプードル…劣悪な生育環境の動物虐待『3つの闇』」でお伝えした、ケージの中で繁殖だけさせられてきた犬です。
散歩や遊びの経験など一度もありません。保護した先でケージから出してみると、置かれたそのままの恰好で身動きもできません。ケージから初めて出た犬は、どうしたらいいのかわからなくて、姿勢ひとつ変えられないのです。
この状態を見た時、正直犬らしい生活を取り戻すのは難しいと思いましたが、大学の教え子の前田くんという青年が引き取りました。

それから数年後、前田くんの住む島で驚くべき光景を目にしました。「くるん」と名付けられたあの犬が、前田くんと海岸を駆け回っていたのです。
彼がどれだけ努力をしたかを思うと胸が熱くなりました。
おかげでくるんは犬本来の楽しみを取り戻すことができたのです。

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劣悪な環境で繁殖を繰り返し、結局手に負えなくなって経営破綻したブリーダーから助け出されたくるん。最初はケージから出ることすら嫌がったが、引き取った前田さんの努力があって、現在では毎日海岸を走り回っているという。写真提供:前田暁彦

後に経営破綻した悪質なブリーダーに、水槽の中の魚のようにケージに閉じ込められ、繁殖だけを繰り返させられたくるん。劣悪な環境から助け出されるまでの記事「4年間閉じ込められ感情を失ったプードル…劣悪な生育環境の動物虐待『3つの闇』」こちらから

もしおうちの犬が散歩を嫌がるような時は、まずなぜ嫌になってしまったのか原因を探してあげてください。そして原因を取り除いたら、ぜひ散歩に連れ出してあげてください。
犬のペースで最初は家の周囲数メートルくらいから、慣れてきたら少しずつ距離をのばし、ルートを変えたり歩く範囲を広げていけたらいいですね。そうすると犬も、「あ、なんだ、散歩ってこんなに簡単だったんだ」と気づき、きっと好きになってくれると思います。それが犬が本来の楽しみを取り戻すきっかけとなることを覚えておいていただけると嬉しいです。

◇高倉はるか先生のこれまでの連載はこちらから。
#1動物行動博士が回答。書類やプリントを破く仔猫、どうしたらやめさせられる?
#2遊びはペットとの大事なコミュニケーション。でも犬の「遊んで」に応える時は要注意
#34年間閉じ込められ感情を失ったプードル…劣悪な生育環境の動物虐待「3つの闇」
#4「一人ぼっちは可哀そう」だからともう一匹飼うのは、猫にとってはありがた迷惑?
#5撫でる順番にも意味があった!2匹の犬を飼い始める時に飼い主がやりがちな失敗とは
#6あなたは本当に飼い犬から信頼されてる?「おすわり」でわかる犬からの信頼度

前編「『犬が嫌がるから散歩に行かない』は正しい? 犬が散歩嫌いになる驚くべき理由」はこちらから。

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