菅新内閣発足 目玉なき"居抜き"布陣

菅新内閣発足 目玉なき"居抜き"布陣

  • 西日本新聞
  • 更新日:2020/09/17
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過半数が再任、横滑り

16日発足した菅義偉政権は、安倍政権の閣僚の過半数を再任や横滑りで維持し、「居抜き」に近い布陣となった。派閥均衡による継承と安定に腐心しつつ、自身が掲げる政策の実行役も滑り込ませ、顔ぶれには「菅カラー」もにじむ。急きょ登板した「庶民派宰相」は衆院解散も視野に内外を揺さぶり、混乱する政局の急場をしのぐ構えとみられるが、不安視される国民への発信や国会論戦でつまずけば、不安定な政権運営を強いられかねない。

最大の焦点だった官房長官には曲折の末、加藤勝信厚生労働相が起用された。旧大蔵官僚で手堅く、菅氏が命名した「国民のために働く内閣」の要となるが、政治家として発信力のある印象は薄い。

加藤氏は第2次安倍政権発足から官房副長官を約2年10カ月間務めた。菅氏が期待するのは国会対応や1日2回の記者会見をそつなくこなせる実務能力の高さだ。厚労相時代は新型コロナウイルス対応で「役所寄り」と批判されており、決して「国民受け」する人選ではない。

森友学園を巡る公文書改ざん問題を引きずる麻生太郎副総理兼財務相の続投も「国民受け」とは程遠い。派閥均衡に腐心した顔ぶれは地味な実務派が目立ち、自民党内からは「選挙に打って出る顔ぶれじゃない」「衆院解散は遠のいた」との見方も出始めた。

一方で、党総裁選で掲げた「改革」実現への意識もうかがえる。当選同期で同じ神奈川県選出でもある河野太郎防衛相は行政改革担当相に横滑り。防衛相時代に決断した「イージス・アショア」の計画断念は根回し不足で批判も出たが、菅氏はその「突破力」を高く買う。

「俺はつくる方で(河野氏に)ぶち壊してもらう」。菅氏は周囲にそう語る。記者会見では「私自身、規制改革を政権のど真ん中に置いている」と強調した。早期の衆院解散よりも、政策実行の意欲が先行しているようにも映る。

もっとも、政権運営には不安もある。準備不足のままトップリーダーになった菅氏自身の言動だ。

総裁選の討論会などでは、消費税や憲法を巡るやりとりで発言を修正。用意したメモに目を落とす姿も目立ち、答弁の危うさを露呈した。森友・加計(かけ)学園問題など長期政権の「負の遺産」も背負い、国会論戦で野党の追及を受けるのは確実だ。閣僚経験者は「耐えきれるか。ぼろが出かねない」と真剣に危ぶむ。

さらに党内最大派閥の出身だった安倍氏と異なり、菅氏は無派閥で党内基盤が弱い。政権運営で配慮を欠けば、「安倍1強」からの復権をうかがう党内勢力に足をすくわれかねない危うさも抱える。

官房長官時代は記者会見で無用な発言を避け、「鉄壁」と言われた菅氏だが、首相になれば自らの言葉で語り、粘り強く国民とコミュニケーションを取ろうという姿勢が不可欠だ。「庶民派宰相」の親近感を政策推進のエンジンにできるか。リーダーとしての資質も試されることになる。 (一ノ宮史成、郷達也)

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