“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、『すずめの戸締まり』を観て気絶!「映画でこんなストレスを感じたのは初めてだ」

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2022/11/25

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士が、森羅万象を斬る不定期連載。今回のテーマは、新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』だ。同監督の前々作『君の名は。』を0点(記事参照)、前作『天気の子』を0点(記事参照)と、それぞれ辛口採点した瓜田。「俺は新海との相性が悪いので、今回もまったく期待していない」と言いながら映画館に入っていったが、果たして……。

『すずめの戸締まり』は、 日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語だ。九州、四国、関西、そして東京と、日本列島を巻き込んでいく”戸締まりの旅”。旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所ですずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった――(公式サイトより引用)。

新海監督3年ぶりの新作とあって、平日の昼間だというのに劇場内はほぼ満席状態。そんな中、妻の麗子と並んで着席した瓜田純士は、映画が始まる前からブツクサ文句を言いながら仏頂面だ。「実は夫婦喧嘩の真っ最中でして。不思議なことに、新海作品を観にくると必ず喧嘩が起きる。新海がすべて悪いのかもしれない」と八つ当たりを始めた純士に対し、麗子が「新海監督はなんも悪くない。悪いのはお前のアタマや!」とピシャリ。純士が絶句したところで場内が暗転し、夫婦喧嘩はいったん収まった。“麗子の戸締まり”はひとまず成功した格好だが、果たして『すずめの戸締まり』はどうなるのか。

以下は、映画終了後のインタビューである。

新海作品って「処女膜」なんですよ

――いかがでしたか?

瓜田純士(以下、純士) 気絶しかけました。

――気絶っ!?

純士 はい。これまでいろんな映画を観て、胸が詰まったり、息が苦しくなったり、落涙しそうになったりと、さまざまな感情を味わってきましたけど、今回は気絶という初めてのストレスを体感しました。人間って強いストレスがかかると、そのストレスから我が身を守るために、体にさまざまな反応が出るんですけど、今回は気を失いそうになりました。

――何がそれほどのストレスだったのでしょう?

純士 登場人物に感情移入できないし、ストーリーも面白くないし、絵や音楽も嫌いだし、セリフや細かい描写も嫌い。あの監督の伝えたいことを、ほぼすべて受け入れられないというストレスです。俺にとって新海監督は、天敵に近いんですよ。前作、前々作でも痛い目に遭っていて、若干トラウマが入っているから、今回はかなり構えて鑑賞に臨んだんですけど、始まってすぐに「あ、ダメだやっぱり。これは耐えられない」と、へこたれてしまいました。

――始まってすぐにストレスの種などありましたっけ?

純士 すずめの「ハァ、ハァ、ハァ……」という息遣いから映画が始まったじゃないですか。あれがほとんどAVなんですよ。

瓜田麗子(以下、麗子) 私もそれに文句あんねん! 私もそれがめっちゃ腹立ってん!

純士 あの喘ぎ声のせいで、いきなり嫌悪感を抱いちゃったから、心と体が「これは作品なんだ」とちゃんと認識して受け入れるまでに、さらに時間がかかってしまいました。「少しでも面白くなってくれ」と願いながら観ていたけど、なかなかそうはならないから苦痛で、苦痛で……。プライベートの映画鑑賞なら「観ているフリをして違うことを考える」あるいは「目を閉じる」という現実逃避もできただろうけど、今日は仕事で来ているので目を切るわけにはいかないし、感情移入しづらいストーリーも追わなくちゃならない。そのストレスが俺を気絶させたんですよ。

――感情移入しづらかったですか?

純士 すずめが好きになる草太っていうイケメンのキーパーソンがいたじゃないですか。彼がかなり早い段階で「椅子」になっちゃったもんだから、なんの感情も入らないんですよ。椅子に対して「好き」だのなんだの言われても、全然ピンと来ないっていう。

麗子 あの椅子、なんで3本脚やったんやろ? そこに対する説明がなかったんも気持ち悪く感じたわ。

純士 3.11で流されて壊れたってことじゃない?

麗子 え? そうなん? この映画って、阪神・淡路大震災の話やったんか。

純士 ……東日本大震災ね。それもわからずに泣いているんだから、ウチの嫁はほんとにバカな女だと思いますよ。

――奥様の涙のワケはのちほどお伺いするとして、純士さんの感想を引き続きお聞かせください。

純士 感想というか文句のオンパレードになっちゃいますけど、観ていて邪魔と感じたのは、新海アニメ特有の小技ですね。みんなが一斉にSNSに画像をアップしたりするシーンが多かったでしょう。ああいう「今の流行りをわかっていますよ」「時代にしっかりリンクしていますよ」というアピールがいちいち邪魔だし、クドいんですよ。余計なことすんな、って感じ。緊急地震速報の警報音にしても、しつこすぎる。

そのくせ新海は相変わらず、女のことを全然わかっていない。途中、すずめと同い年なんだけど、ちょっとオマセな民宿の娘・千果が出てきたじゃないですか。そいつがまた、やってくれましたよ。なんと、口紅をしたまま寝るんです。「そんな女、いねーよ!」って腹が立っちゃって。

麗子 『君の名は。』のときも同じようなことで怒っていたな。「入浴後の女がツケマをしているのはおかしい」って。

純士 その千果が、ウブなすずめに対して恋愛のイロハを教えたりするっていう、見ていてしんどくなる展開がありましたけど、新海ってほんと、ああいう「大人の階段を昇る」みたいな描写を入れたがるよなぁ……。でもね、ちっとも甘酸っぱくならないんですよ。新海がやると、「青い痛み」が出ない。一言で言うと、新海作品って「処女膜」なんですよ。

――処女膜っ!?

純士 つまり、すごく初々しくて大事にしなければいけないものなんだけど、双方実はそこに対して「邪魔」だと思っている。わかります?

――なんとなくわかるような気もします。

純士 まだまだ言いたいことはあるけど、疲れたので嫁にいったんバトンタッチします。

――では奥様にお尋ねします。まず、冒頭のすずめの息遣いにご立腹のようでしたが、それはなぜでしょう?

麗子 新海監督の作品は、前作も前々作も大好きだったので、今日はめちゃくちゃ期待していたんですよ。そしたらいきなり、子どもも観るような映画やのに、女の子の喘ぎ声がめっちゃ長いこと続いたじゃないですか。「うわ、何これ、嫌やな」と、しょっぱなから引いちゃいました。それはエッチの喘ぎ声じゃなく、お母さんを必死で探し回る少女の呼吸音だってことはほどなくしてわかるんですが、なんとなく「観客を引っ掛けよう」「売れる作品にはエロい感じのツカミも大事」という監督の下心みたいなもんを感じて、いきなり帰りたくなりました。そのあとの展開も、まったく深みのないシナリオが延々と続くもんやから、「純士、これあと何分続くんかな?」とヒソヒソ話をしたぐらい。

ほんでまた、『呪術廻戦』みたいな妖怪じみたミミズも出てくるわ、『るろうに剣心』や『ルパン三世』みたいな音楽も持ってくるわで、売れるアニメの法則を使って盛り上げてこようとするのもすごく嫌で。……と言いつつまあ、結局は感動して5、6回は泣いたんですけどね。

――十分、元を取っているじゃないですか!

麗子 私ね、途中でわかったんですよ。最初はあざとい小技をいっぱい使ってきたけど、「あ、この監督の伝えたいことは結局、こういうことなんやな」と。それらのメッセージを受け取るたびに、自分の幼少期のことや、自分の子どもやペットのことを思い出して、泣きました。

――どんなメッセージを受け取ったのでしょう?

麗子 最近、人付き合いが希薄な世の中になってきているじゃないですか。だからこそ、行く先々で出会った人々との関係を大事にせなあかんよ、とか。たとえ血がつながっていなくても、人との絆を大事にせなあかんよ、とか。また、殺人や虐待のニュースも多い今やからこそ、愛や情けを大事にせなあかんし、ペットも大事にせなあかん、とか。あとは自殺防止的なメッセージやね。幼少期や思春期には悩みもいろいろあるかもしれへんけど、前を向いて頑張り続ければ笑える未来が待っているよ、とか。

そういうことを伝えたいがために、薄っぺらいストーリーをずっと続けていたんやな。ま、「終わりよければすべてよし」とはこのことか、と最終的には思いました。

――薄っぺらいストーリーでしたか?

麗子 扉を開けて閉めるだけの話やのに、すごく長かったじゃないですか。そんな簡単なストーリーをあんなに引っ張らんでもええやろ、と思いました。

純士 人としてどうなの? と思うシーンもいくつかあったね。たとえばスナックの場面。すずめは、スナックのママやホステスに心配されてかこってもらっていたのに、猫が逃げたという理由で、勝手に店を飛び出しちゃう。結局、やったら、やりっぱなしなんですよ。で、夜遅くにしれっと帰ってくる。普通だったら激怒されて当たり前のシーンなのに、ママやホステスはたいして怒ることもなく、すずめが空腹だと知るなり、「さぁて」と腕を振るって、焼きうどんを作ったりしている。それって大人としてダメじゃないですか。もっと叱るべき場面じゃないですか。

結局、監督のオナニーなんですよ。「そういう大人がイケている」と新海は思っているんですよ。ダメな小娘に説教もせず、「一緒に焼きうどん食~べよ♡」みたいな。それが良き理解者? 全然ちげーよ! ふざけてんのか! って。アニメって子どもも観るものだから、正しい道徳や倫理観も入れてかなきゃいけないのに、そのへんも新海は独りよがりなんだよなぁ……。

――さっきからダメ出しばかりなので、ここらで褒めるべきポイントを挙げてもらえますでしょうか。

純士 良かった点は二つ。まず一つ目は、後半になって、芹澤くんという救世主が現れた点。この作品はほとんど芹澤くんが救ったと言っても過言じゃないですよ。彼は見た目こそチャラいけど、その心は海のように広くて、空のように綺麗なんです。草太を心配して動いていただけなのに、すずめの彼氏と疑われ、すずめのおばさんから「付きまとうな」と怒鳴られる。さらには片道7時間もの長距離を運転させられ、すずめとおばさんの喧嘩に巻き込まれ、挙げ句の果てにはマイカーが土手に転落してドアが大破。その瞬間に、もう用無しとばかりに、すずめとおばさんは「じゃあここで」とか言って、スタコラサッサと去っていってしまう。

普通だったら損害賠償を請求していいレベルの酷い目に遭ったというのに、芹澤くんは「やれやれ」という表情を浮かべるだけで、文句一つ言わないんですよ。そんな芹澤くんが人としてほんとに素晴らしかったです。

もう一つ、素晴らしかったのは、おばさんが豹変するシーン。それまでずっと優しかったおばさんが、黒猫の出現と同時に、心の中に隠していたドス黒い思いを突然吐露し始めましたよね。それまでずっと退屈だったけど、あのシーンで初めてヒリヒリしました。まさに『GANTZ』『寄生獣』『孔雀王』などでも見られるような、日本アニメ独特の「面白くなる瞬間」でした。あの空気感がもっと欲しかった。映画にはそれが必要なんですよ。

――音楽の使い方はどうでしたか?

純士 BGMのセンスがないですね。特にすずめと椅子と猫が追いかけっこするシーンで、東京スカパラダイスオーケストラみたいな音楽が流れていたけど、あれ、場面とまったく合っていないでしょ。

芹澤くんのカーステから、ユーミンや松田聖子や井上陽水などが流れてくるのも、最近、若い人の間で昭和歌謡が流行っているから、めざとくそのあたりを突いてきたなぁと思って鼻につきました。しかもそこで、芹澤くんが「ゲストに合わせて選曲した」というナイスなフリをせっかく言ってくれたのに、それに対しておばさんがノーリアクションだったのも残念。「失礼ね。私はそんなに年齢いってないわよ!」と突っ込めばオチがついて、面白くなったのに。

――あれは車に同乗しているすずめとおばさんが喧嘩中だったから、河合奈保子の「けんかをやめて」を流して、「ゲストに合わせて選曲した」と言ったのでは……?

純士 そうなの? わかりづれぇんだよ、新海って奴は! 頭にきたから音楽に関する文句をもう一つ言うと、「今回はやっとRADWIMPSが外れてくれたか」「育ちの良い学級委員長が歌うお涙ちょうだいソングを聴かずに済んだか」と胸を撫で下ろしていたんです。ところが最後の最後、エンディングの瞬間に裏切られました。「やっぱりお前らか!」と。その瞬間、気絶を通り越して昇天しました。

――この映画、観て良かったですか?

純士 作品を通じて一緒に泣いたり、一緒に笑い合ったりできれば、夫婦喧嘩もなかったことになるんだけど、新海だとすべてが引っかかったままなんですよ……。作品が酷いから。

麗子 主人公のすずめの性格が、純士と似ていたから、なんだか純士を観ているみたいで……。ちょっとしたことを大袈裟に捉えて怒るし、暴れるし、気難しいし、ワガママやし……。純士を忘れて映画を観たいのに「映画でもお前かよ」みたいな。「もうやめてくれよ、映画ぐらいゆっくり観させてくれよ!」と。そんなことを、ひしひしと感じましたね~。

――新海監督、どうかお気を悪くなさらずに!

(取材・文=岡林敬太/撮影=おひよ)

『すずめの戸締まり』瓜田夫婦の採点(100点満点)
純士 3点
麗子 30点

※「“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき」の記事一覧

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