“社員ゼロ”で100店舗達成 お肉専門無人販売所「おウチdeお肉」が「万引きも許容範囲」と話す納得の理由

“社員ゼロ”で100店舗達成 お肉専門無人販売所「おウチdeお肉」が「万引きも許容範囲」と話す納得の理由

  • デイリー新潮
  • 更新日:2023/03/19

日本で初めて「24時間年中無休」の“お肉専門”無人販売所を展開する「おウチdeお肉」。創業からわずか半年足らずで全国100店舗を数えるまでの急成長を遂げ、さらに160店まで拡大する見通しが立っているという。その快進撃の裏には、無人販売所にとって最大のリスクを逆手に取る“常識外の発想”があった。

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“妖しいお店”と勘違いする人も…(大曽根徳川店=名古屋市=)

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おウチdeお肉はスタッフを店内に配置しない代わりに、客が商品を選んでセルフで会計するシステムとなっている。店内に設置されたショーケース状の冷凍庫には、瞬間冷凍技術により鮮度を保持した産地直送の馬肉や牛ユッケ、国産牛肉のほか、ハンバーグや餃子、韓国料理からアイスクリームまで幅広い商品が並ぶ。

実は「株式会社おウチdeお肉」の設立は昨年9月と、事業開始からまだ半年しか経っておらず、さらに“社員”は1人もいないという。事業運営者として代表取締役の林眞右氏のほか、本部スーパーバイザー(SV)の業務を請け負う亀井竜斗氏の2人がいるのみだ。その亀井氏が話す。

「成功の要因を挙げるとすれば、まずは“時代の流れ”にうまく乗れたことが大きかったと思います。私自身、長く営業マンをやっていて夜遅くに食事を摂ることも多かったのですが、コロナ禍以降、夜8時を過ぎると店が閉まり、コンビニに頼る以外にない日が増えた。でも、さすがに毎回コンビニ食ばかりだと飽きがくるので、他の選択肢があればいいなと常々考えていました。同じような思いを抱いていた人は周囲にもいて、また“宅飲み”といった言葉に象徴されるように、自宅で簡単な料理をつくる習慣がこの3年間で広がったこともプラスに働きました」

さらにコンビニやスーパーなどで進むセルフレジの普及の流れも追い風になったという。

24時間営業の理由

「いまや人を介さずに買い物をすることへの抵抗は薄れるどころか、むしろ“無人のほうが気楽でいい”と考える人が増えているように感じます。そういった社会状況や意識の変化に加え、もう一つ見過ごせないのが、世代を問わず広がる“将来への不安感”です」(亀井氏)

おウチdeお肉はフランチャイズ制を取っており、初期費用500万~600万円で始められるというのがウリ。「24時間年中無休」のシステムも、フランチャイズオーナーの負担を最小限に抑えることを狙ったという。

「私たちの理想は、オーナーが本業をやめることなく、“手放し経営”で月15万~30万円程度を稼げるようになること。しかし営業時間を区切ると、店の開閉時にどうしても人の手が必要になる。私たちが掲げるビジネスモデルは“人で売らず、仕組みで売る”というものです。たとえばオーナーのなかには週に数回の業者から店舗への商品配送に際し、その受け取りと陳列のためだけのバイトをスポット的に雇う者もいて、オーナーが実務に介在する余地は最小限にとどめています」(亀井氏)

同社の宣伝戦略はYouTubeなどのソーシャルメディアとSNSに特化した形で行われてきたが、なかでも「前代未聞」と評されたのが“万引き撃退”にSNSを積極活用した点だ。

“万引きしたら拡散します”

無人販売所の最大のリスクとされる万引き防止策として、おウチdeお肉の各店舗には死角を防ぐように4~5台の防犯カメラが設置。セキュリティに細心の注意を払っているように見えるが、意外にも「万引きの発生をアンラッキーとは捉えていない」という。

「店舗内には“万引きは見つけ次第、SNSで拡散します”とのPOPを掲げ、実際、これまで犯行映像をTwitterなどに上げて晒してきました。その拡散効果は侮れず、公開した映像を見て、おウチdeお肉を知ったという人も少なくない。それをまたテレビ局がニュースとして取り上げることで、さらに知名度アップに繋がるという相乗効果を生み出しています」(亀井氏)

話題になればなるほど、“万引きすれば晒される”といった心理的な抑止効果も醸成。「多少の万引きは許容してもプラス面のほうがはるかに大きい」と語るのだ。

「これまで実際にあった万引き件数は20件程度で、そのほとんどで犯人は捕まっています。SNSに上げることでネット上に“特定班”が自然発生し、犯人の素性を突き止めたケースもある。他にも監視カメラの映像だけでなく、指紋から足跡まで採取できる証拠類はすべて警察に提供しており、フルフェイスでの犯行であっても絶対に捕まらないわけではない。そもそも高くて単価4000円程度の肉を万引きして、逮捕や晒されるリスクを負うのは、普通の感覚の持ち主なら“割に合わない”と考えるでしょう」(亀井氏)

肉を選んだワケ

おウチdeお肉といえば、ピンクのネオンで彩られたド派手な内装がトレードマークとして知られ、SNSでも“映えスポット”として注目を集める。目を惹く店舗とすることで自然と宣伝・集客効果が見込めるだけでなく、「ピンクのライトは肉を美味しく見せる効果が最も高い」との計算の上に採用されたという。

同様に「肉」をメイン商品に据えたのにも、合理的な理由があったという。

「日常的に買う食材は他にもありますが、たとえば野菜だと単価が安いため、薄利多売に流れがちでコスパが悪くなってしまう。だったら魚はどうかと考えましたが、仮に瞬間冷凍技術を使っても“鮮度”というウリが薄れるのは否めない。やっぱり魚は市場で新鮮なモノを安く買うのが一番の魅力ですから。それに比べると肉はファンの多さで野菜や魚に引けを取らず、また体積が小さくても単価は高いという利点で際立っていました」(亀井氏)

とはいえ、林社長も亀井氏もこれまで肉を扱ったことはなく、卸ルートの開拓はゼロからのスタート。それでも新ビジネスに夢中になっていたため「苦とは感じなかった」という。ひとまずロケットスタートは切れたが、真価が問われるのはこれからだ。

デイリー新潮編集部

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