年収400万円で「老後資金2,000万円」ためるには?どう貯金すればいいのか

年収400万円で「老後資金2,000万円」ためるには?どう貯金すればいいのか

  • MONEY TIMES
  • 更新日:2023/03/19

数年前に「老後資金2,000万円問題」が大きく話題になったが、高額所得者でなくてもためられるものだろうか?ここでは、1つの目安として年収400万円の人を例に挙げ、老後を迎えるまでに2,000万円をためる方法を検討してみよう。

■金融庁の報告書にある「老後資金2,000万円」の根拠

「老後資金2,000万円問題」とは、2019年6月に公表された金融庁・金融審議会市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」の内容をもとに報道されたものだ。

老後を迎えるまでに2,000万円の資産をためておくことが必要だ、とマスコミが問題提起をして話題になった。そもそも報告書の内容は、どういうものだったのか?

同報告書によると、夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦のみの無職の世帯においては、公的年金をはじめとする収入額よりも支出額のほうが月当たり約5万円多いため、毎月5万円の赤字になるという。

そして、この毎月の赤字額は自身が保有する預貯金を含む金融資産から補てんするので、老後の人生が20~30年間続くと想定した場合、単純計算で1,300万~2,000万円の蓄えが必要になると試算して いる。

「あくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイルなどによって大きく異なる」と注意書きがあるが、1つの目安として参考になる数字といっていいだろう。

■2,000万円を10年間でためるには月16万円超の貯金が必要

2,000万円は大きな金額だが、高額所得者でなくともためられるものだろうか?

単純計算すると、2,000万円を10年間でためる場合、年200万円、月当たりでは16万7,000円の貯金が必要だ。20年間でためるなら年100万円、月当たりで8万4,000円の貯金が必要。30年間でためるなら年66万7,000円、毎月5万6,000円の貯金が必要になる。

手取り年収400万円の人の場合、10年間でためるなら貯金分を引いた残りの約16万7,000円で毎月生活することになる。一方、20年間でためるなら毎月約25万円で生活。30年間でためるなら、毎月約27万円で生活する形となる。

長期間かけてためる場合はそこまで無理な感じはしないが、ためる期間が短いとその分だけ生活費を切り詰めなければならず難易度が高くなる。

■投資を活用すれば準備する老後資金はもっと少額で済む

ここまでのところで1つ抜けている視点が、老後資金として2,000万円が必要だとして、それは必ずしも現金の預貯金でなくてもいいということだ。

投資顧問・資産運用会社「野村アセットマネジメント」の試算に よると、1,300万円相当の投資商品を3%の運用利率で運用した場合、生活資金を補てんするために65歳から毎月5万5,000円を取り崩したとして、約30年間の取り崩しが可能になるという。

つまり、現金の預貯金で2,000万円が必要なところ、1,300万円相当の投資商品で事足りることになる。

■iDeCoやNISAで老後資金を無理なくためる

さらに、1,300万円をためる場合も、税制面で優遇されるiDeCoやNISAを軸にして投資でためていくことで、より目標を達成しやすくなる。

楽天証券のiDeCoシミュレーションに よると、年収400万円の会社員が月2万円の掛け金(企業型確定拠出年金にも加入している場合の上限額)で40歳から25年間積み立てた場合、600万円の積立元金が運用益との合計で最終的に約892万円となる。

その25年間の所得税・住民税の節税額は90万円に達するので、実質的には982万円がたまると考えてもいいだろう。

一方、NISAでは2024年から、「つみたてNISA」が「つみたて投資枠」と名前が変わり、年間の投資上限が120万円までアップする 。

金融庁のNISAサイトの資産運用シミュレーションで 計算すると、2024年以降に上限の月10万円を3%の運用利率で10年間積み立てた場合、最終的に約1,397万円となる。

年収400万円の人が毎月10万円積み立てるのは少々大変だが、20年間かけて積み立てる場合は、月4万円の積み立てで最終的に約1,313万円となる。これなら十分可能なプランといっていいだろう。

■60代の4人に1人は3,000万円以上の資産を持つ

では、世の中の人はいったいどれくらい老後資金を確保できているのだろうか?

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」という資料に よると、金融資産保有額の中央値は30代で390万円、40代で500万円、50代で810万円、60代で1,270万円となっている。

ほとんどの人が定年退職を迎える60代の詳細を見ると、金融資産保有額が1,000万~1,500万円未満の人は10.9%、1,500万~2,000万円未満の人は7.2%、2,000万~3,000万円未満の人は11.1%、3,000万円以上の人は25.6%となっている。

一方、株式会社 ホロスプランニングが2022年6月に日本全国の老若男女500名を対象に実施した「老後2,000万円問題アンケート」に よると、「現在の貯金額(株式含む)が300万円未満」という人は約4割、「満65歳時の預金額見込みが2,000万円以上」という人は約3割という結果となった。

■「2,000万円」のハードルを投資で下げる

実際のデータを見ても、多くの人にとって老後資金2,000万円をためるのが高いハードルとなっているのは確かなようだ。

しかし、投資を活用する前提なら1,300万円をためる形でもよさそうだということになると、老後資金準備のハードルもだいぶ下がってくる。iDeCoやNISAを軸に投資商品を上手に活用すれば、年収400万円の人でも十分な老後資金を確保できる可能性はさらに高くなる。

とはいえ、投資には多少のリスクも伴うので、それがどうしても嫌ならできる限り 若いうちから節約に努めてしっかり貯蓄していく必要がある。

文・モリソウイチロウ(ライター)
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカード分野では専門サイトでの執筆経験もあり。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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