増加する“対バン”ライブ、その理由は? アーティストと観客、それぞれの目線などから考える

増加する“対バン”ライブ、その理由は? アーティストと観客、それぞれの目線などから考える

  • Real Sound
  • 更新日:2022/05/14
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新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とする行動制限がなかった今年のゴールデンウィーク。『ARABAKI ROCK FEST.22』『VIVA LA ROCK 2022』『JAPAN JAM 2022』など、各地で音楽フェスが開催されたが、現時点ではクラスターなどは報告されていない。それは、これまで継続してきた厳しい感染対策、そして出演者、来場者、イベントスタッフらによる努力がもたらした、ライブシーンにおける一つの成果と言えよう。

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未だ予断を許さないが、ライブシーンは少しずつその勢いを取り戻し始めているように思う。そんな中、いわゆる“対バン”形式でのライブやツアーが数多く開催されている。すでに開催中、また今後行われるものも含めると、一部ではあるが以下のようなラインナップが並ぶ。

<主な対バン形式でのツアー/ライブ>(開催月:ゲスト)

・yama×ACIDMAN(5月)
・flumpool(5~6月:sumika、高橋優など)
・サンボマスター(6月:My Hair is Bad、Vaundy)
・女王蜂(6月:氣志團、UNISON SQUARE GARDEN)
・WurtS(6月:PEOPLE 1)
・水曜日のカンパネラ(6~7月)
・HYDE(6~8月:Dragon Ash、THE ORAL CIGARETTESなど)
・崎山蒼志(6~8月:スガ シカオ、折坂悠太など)

そのほか、Da-iCE、04 Limited Sazabys、UNISON SQUARE GARDENらもゲストを招いたツアーを行うなど、まさに対バンでのステージが盛り上がりを見せている。もちろんこれまでにも同形式でのツアーやイベントは頻繁に開催されてきたが、コロナ禍以降、徐々にライブシーンが回復していく中で気になる動きではある。

なぜ今、対バン形式でのツアーなどが盛んに行われているのか。そこにはコロナ以降の様々な要因が関係しているのではないか。そこで、音楽ブログ『ロッキン・ライフ』を運営し、自らライブイベントも主催する“ロッキン・ライフの中の人”に意見を聞いた。

まず、徐々にライブシーンが復活している中、どのような理由や背景があって対バンでの公演が増えているのか。ロッキン・ライフ氏は「集客力」「内向きだった活動の打破」、二つの理由が挙げられるのではないかと考える。

「コロナ禍を経て、一部のアーティストを除くと、ライブでの集客が大きく下がったと聞いています。それを改善するための一つのアプローチとして、対バンイベントを組んでいる、と考えられます。単独の場合、そのアーティストのファンしか足を運ばないケースが多いですが、対バンだと対バン相手のファンも足を運ぶ可能性があります。また、ワンマンよりも“お得感”や“その日限りの特別感”が出てくるため、参加することの意味づけを強く打ち出せる=集客が上がると考えられるのです。加えて、ここ数年は閉じた空間での活動を余儀なくされていたアーティストがほとんどだったため、今年は積極的に外向きに活動したい、現場で実際に人と組んで活動したい、というモチベーションから積極的に対バンイベントを開催しているのではないでしょうか」

確かに、先に挙げた対バンツアーのラインナップを見ても、特別な公演、パフォーマンスが目撃できるかもしれないという期待が生まれる。またそうした祝祭感に包まれた空間を、なるべく多くの人と共有したいという気持ちも芽生えてくるように思う。

しかし、そうした特別な演出や祝祭感はワンマン=単独公演でも感じられるはず。また反対に、対バンであるがゆえのデメリットなどはないのか。ロッキン・ライフ氏にメリット/デメリットを聞くと、演者側/観客側の目線に分けて以下のように答えが返ってきた。

■演者側
<メリット>
・集客力が上がる(対バン相手のファンも呼び込める可能性がある)
・モチベーションの向上
・自分のファン以外にもライブを観てもらえる可能性がある

<デメリット>
・披露できる曲目が減る
・リハーサル・準備などに手間や時間がかかる可能性がある
・初めての対バン相手の場合、ホスト側は単独よりも気がかりな点が増える(裏でのケアやファン同士の交流など)

■観客側
<メリット>
・その日限りのセットリスト(カバー曲の披露など)が観られる可能性がある
・その日限りのMCが聞ける可能性がある(互いのエピソードなど)
・両者の熱の入ったパフォーマンスを目撃できる

<デメリット>
・単独よりもアーティストごとのライブ尺が短くなる
・単独とは違う客層に対して違和感を持ってしまう可能性がある
(違う文化を持っているアーティスト同士の対バンだと、まれにファン同士で衝突する可能性も。例えばペンライトを持つ・持たないなど)
・セットチェンジする間(転換中)の時間が単独より長い

個人差があるのは前提にメリット/デメリットはあるものの、やはりその日限りでしか味わうことのできない特別な体験を期待してしまう。演者も観客も、そうした予定調和ではない瞬間を生み出したい、体験したいからこそ対バン形式のライブに可能性を見出しているのかもしれない。

では、対バン形式のライブがシーンの勢いを取り戻す一つのきっかけになるとして、今後ライブシーンはどうなっていくのだろうか。ロッキン・ライフ氏は以下のように語る。

「まずは、今までライブに行けなかった人たちも、ライブに行けるような空気感・状況になってほしいです。そして、落ち込んでいたライブの集客力が改善できたら良いなと思います。その結果、音楽を生業にしている人たちも潤うようなレベルにまで持ち直したら嬉しいですね。今はまだ“声を出してはいけない”、“ソーシャルディスタンスを保つ”など一定の制限が課されています。そういうルールをなくしても問題ない、安心してそういった制限なしにライブができる、という状況にまで改善されたらと考えています。ただ、その流れで懸念があるとすれば、観客のスタンスはここ数年で大きく分断されており、下手に“自由”を標榜すると、“前の声を出さないライブがよかったのに……”となる可能性もある。イベントなどのコンセプトに沿って、参加する人全員が納得のできる形で次のフェーズに進むことができるのが望ましいと考えています」

対バンでのライブが生む特別感や祝祭感、そこで味わった体験と経験は、きっとこの先のライブシーンにおいてメリットとなるはずだ。制限がなくなるのを待つのではなく、ライブを行いながら、そして足を運びながら、コロナ以降も楽しむことができる状況を作り出していくべきではないだろうか。(文:小田淳治)

ロッキン・ライフの中の人

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