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痛みを鎮痛剤で抑えると「他人の痛みに共感する能力」までも低下する

痛みを鎮痛剤で抑えると「他人の痛みに共感する能力」までも低下する

  • GIGAZINE
  • 更新日:2021/07/21
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人は自分の体に肉体的な痛みを感じる時もあれば、他人が痛みを感じている姿を見て「痛そう」と共感することもあります。この「実際の痛み」と「共感した痛み」には関連性があり、実際の痛みを軽減した場合共感した痛みも同時に軽減されることが偽薬を使った実験により明らかになりました。

Placebo analgesia and its opioidergic regulation suggest that empathy for pain is grounded in self pain | PNAS

https://www.pnas.org/content/112/41/E5638

Why it hurts to see others suffer: pain and empathy linked in the brain

https://theconversation.com/why-it-hurts-to-see-others-suffer-pain-and-empathy-linked-in-the-brain-48336

人間は実際の痛みを感じる時と痛みに共感する時、脳の同じ領域が働くことが分かっています。しかし、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使用して脳内の血流の変化を測定したこれまでの研究では、実際の痛みと共感した痛みの関連性は証明されませんでした。そこで、ウィーン大学のMarkus Rütgen氏らは鎮痛剤の偽薬を利用した2つの実験で、実際の痛みと共感した痛みの関連性を調べようと試みました。

Rütgen氏らは研究へ参加した177人に対し、左手に電流が流れるデバイスを装着させました。そしてデバイスから強さを変えた電流を複数回にわたって流し、感じた肉体の痛みを「1(まったくない)」から「7(非常に痛む)」までを評価してもらいました。その後、同様の肉体的な痛みを受けている参加者の姿を見せ、1から7まで「どれほど痛そうに見えるか」を評価させました。

その後、全ての参加者に「承認された非常に効果的で高価な市販の鎮痛剤」であると伝えて錠剤を与えました。しかし、参加者の誰も本当の鎮痛剤を与えられておらず、全ての錠剤は偽薬でした。Rütgen氏らは薬が全ての人に効いていることを確認した後、参加者に対し実験を行いました。

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1つ目の実験は参加者のうち基準を満たした102人に対し行われました。Rütgen氏らは102人を2つのグループに分け、片方のグループの参加者らには「6(非常に痛みを伴うが耐えられる)」、もう片方のグループの参加者らには「1(知覚できるが明らかに痛みを伴わない)」の強さの電流を流しました。また、参加者らは痛みを感じている別の参加者の姿を見せられました。

実験中に行われたfMRIのスキャンにより、電流を流された時と他人が痛みを感じている姿を見た時両方で、偽薬を投与されてない時と比較して、痛みを処理する脳の領域の活動が低下していることが確認されました。これは鎮痛剤として与えられた偽薬が、実際の痛みと共感した痛みの両方に作用したこと意味します。

続いて、基準を満たした50人の参加者に対して行われた2つ目の実験では、Rütgen氏らは最初の偽薬を与えた後、参加者らの半分に「鎮痛剤の作用を打ち消す」と伝えて別の偽薬を与え、残りの半分には「鎮痛剤の作用を打ち消す本物の薬」を与えました。その後1つ目の実験と同様に肉体的・共感的な痛みを与えたところ、両方のグループで実際の痛みと共感した痛みに対する偽薬の効果が打ち消されたとのこと。

Rütgen氏らは「実際の痛みと共感した痛みの両方が、鎮痛剤の偽薬や鎮痛剤の作用を打ち消す薬によって同じように変化するため、実際の痛みと共感した痛みが脳内で非常によく似た方法で処理されている可能性があります」と報告しています。

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さらに、過去に行なわれた別の研究では、痛みを処理する脳領域が損傷があったり疾患があったりする人は、しばしば痛みに対する共感能力が低下することが報告されており、これは「痛みに共感するためには自分自身も痛みを感じる能力が必要だ」ということを示唆しています。Rütgen氏らは「将来的には、この研究が社会的拒絶などの他の状況での痛みの共感を調査するのに役立つ可能性があります」と述べました。

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