スポーツを止めるな 音楽を止めるな 武井壮が新プロジェクトに挑むワケ

スポーツを止めるな 音楽を止めるな 武井壮が新プロジェクトに挑むワケ

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/05/05
No image

「百獣の王」を名乗り、タレントとして活躍する武井壮が、新たなプロジェクトを始動する。「#スポーツを止めるな #音楽を止めるな」──コロナ禍で活躍の場を失ったり、不安を抱えたりしているアスリートやミュージシャンら、異業種の才能を結びつける活動だ。コロナ禍でアピール機会を失った学生アスリートを支援する活動「#スポーツを止めるな」(一般社団法人スポーツを止めるな主催)とも連携する。

武井は24歳で陸上十種競技の日本チャンピオンに輝き、その後ゴルフの経験ゼロでメーカーが主催するキャンプの特待生として米国留学へ。台湾のプロ野球チームでコーチをしたり、本田圭佑氏がオーナーをつとめるサッカーチームEdo All United で監督を務めたり、いまでも毎日のトレーニングも欠かさない。スポーツとは切り離せない人生を送ってきた。

そんな彼が今回のプロジェクトで手を組んだのは、シンガーソングライターの川崎鷹也だ。2020年8月、TikTokで「魔法の絨毯」が大きな話題に。同曲を使った動画が2万7000 本以上アップされ、トータルで約2億6千万回以上もの再生回数を誇る。

意外とも思えるこのコラボでできたのが、プロジェクトを象徴するキャンペーンソングだ。5月5日には、そのショートバージョン(60秒)がTikTokで先行配信される。歌唱には多くのアスリートたちが参加する予定だという。

コロナ禍によるイベントや大会の中止などで、いま、スポーツ業界も音楽業界も苦境に立たされている。しかし、苦しい時に希望や勇気を与えてくれるのもまた、スポーツや音楽の持つ力だ。

発起人の武井と楽曲を手掛けた川崎に、このプロジェクトに込めた思いを聞いた。

──なぜこのプロジェクトを始めたのでしょうか?

武井壮(以下、武井):オリンピックが1年延期されたことは、僕や周りのアスリートたちにとっては、近年経験したことがないほど大きな出来事でした。オリンピック出場って、アスリートにとっては、人生を変えられるチャンス。それが奪われた衝撃は大きく、いまも不安のなかで過ごしている選手は多いと思います。

このコロナ禍で僕が改めて痛感したのは、スポーツって安全で平和な暮らしがあってのものなのだということ。落ち込んだアスリートも多かったはずです。音楽業界でも似たようなことが起きていますよね。ライブやイベントがどんどん中止になって、ミュージシャンだけでなく、支えるスタッフさんたちも苦しんでいる。

しかし、人々が辛いときにこそ力をもらえるのも、スポーツや音楽、そしてエンターテインメントの力ですよね。だって、僕らはただ働いて人生を終えるために生まれてきたわけじゃない。人生って楽しいとか、毎日が幸せだとか、地球って美しいとか、それを感じるために生きているんだから。

いまスポーツや音楽を止めてしまったら、未来に対して大きな損失になる。その歩みを止めないために、いまスポーツ界や音楽界は何をするべきなのか。既存のやり方に縛られず、何ができるのか。大好きなスポーツと音楽を混ぜ合わせたら、何か新しいエンターテインメントが生まれるんじゃないか。そういう思いで、一歩進もうと始めました。

──その一歩が、どうして「曲づくり」だったのでしょうか?

武井:このプロジェクトは、アスリートたちに、競技の成績だけじゃない「生き抜く力」を身につけてもらいたいという思いから始めたものです。

スポーツ以外の分野との「掛け算」をしかけて、アスリートたちが自分の新たな可能性に気付いたり、違う輝き方ができる場所を見つけたり、新しい道をみんながどんどん切り開いていけるようになったらいい。その1つ目が「音楽」とのコラボでした。

コロナ禍で失ってしまったものって、もしかしたら「誰かがつくってくれた場所」「用意してもらっていた職場」だったのかもしれない。だから、自分たちが輝ける場所を、自分たちの手でつくり、広げていく。もっといろいろな人に届けられる力をアスリート自身、ミュージシャン自身が持てば、大きなムーブメントになるんじゃないかなって。

今回の音楽とスポーツの掛け算で、交わったことのない現場の人たちやそれぞれのファンたちが、この楽曲をきっかけに盛り上がれればいい。川崎くんの歌詞で、アスリートたちの気持ちが奮い立ったら嬉しい。

そう考えて、音楽やスポーツを武器に世の中で戦っていく、お互いのそういう「ファイティング・スピリット」が混ざり合うような曲をつくってみたくて、川崎さんに声をかけて実現しました。

No image

──そうしてつくられた楽曲が、今回のキャンペーンソング。サビに出てくる「戦士」という歌詞は、川崎さんらしくないような気もしましたが、曲に込めた思いとは?

川崎鷹也(以下、川崎):武井さんがおっしゃったように、これは「ファイトソング」です。実は最初、武井さんにも「ある意味、川崎鷹也っぽくない曲」と言われたんですけど、実は、僕自身のすごく奥底にある強い思いとか、歩んできた道が見えてくるようなものになったと確信しているんです。テイストは確かに川崎鷹也っぽくないかもですけど、自分では、本当に深いところで川崎鷹也らしさが書けたのではないかと。

普段ラブソングやバラードを書くときは、そのときの感情や、何気ない日々にフォーカスしているんですけど、今回は自分の人生を振り返ってつくりました。特に辛かったことや苦しかったこと、そういった轍(わだち)的な部分を確認して「俺も歯を食いしばってここまでやってきたんだな」と思える、自分に対しても誇れる曲を書きたかったから。

僕はうまいこと自分の感情表現ができないし、だからこそミュージシャンをやっているんですけど、曲を書く作業を通して初めて、自分で新たに気づくことがたくさんあるんです。この曲は、自分自身に対して気付かされたことがすごくたくさんありました。

──川崎さんが曲作りの軸にしていることは?

川崎:最近、子供が1歳になったんですよ。僕は音楽をやるにしてもやらないにしても、「子供にとって、カッコいい父ちゃんでいたい」っていうのがまず大前提である。誰かたった1人でもいい、その人にとってのヒーローになれれば、それでいいんです。

オリンピックで金メダルをとるとか、ミュージシャンとして武道館のステージに立つとか、それもすごくカッコいいことではありますよ。でも、たとえお客さんが3人でも5人でも、僕は本気でステージに立ち続けてきたし、そのお客さんにとっては僕がヒーローに見えていたかもしれない。僕はそういうことこそ大事にしたいし、それをずっと忘れないつもりでいる。

誰かにとってのヒーローであること、その人のために生き抜くこと、そういう意味で「戦士」と表現したつもりです。

僕自身も1人で曲をつくって、弾き語りして、歯を食いしばって踏ん張って、なんとか戦って、自分の夢とか願いとか希望とかを叶えられるように、一歩一歩進んできた。泥臭くてもいいしカッコ悪くてもいい。与えられた状況に「悲しい」「悔しい」って言ってるだけじゃなくて、必死になって前に進んだら、何か光が見えてくるんじゃないかな。

No image

──スポーツを「止めない」、音楽を「止めない」というのは、具体的にどういうこと?

武井:アスリートが歩みを「止めて」しまうきっかけって、大事な大会の代表選にもれたり、試合に負けたり、ライバルに抜かれてしまったりしたときかなと。

でもね、僕は大会に出ていい成績をおさめられなかったら、果たして惨めな人生なんですかと問いたい。試合がなくなった、金メダルがとれなかった、思ったような結果が出せなかった──そんなことで、アスリートのみんなは、自分の人生を止めちゃっていいんですか。そうじゃないでしょって。

そこまでの努力やトレーニングの積み重ねって、決してそのフィールドでしか活かせないものなのかと。自分たちが積み重ねてきた力を使えば、フィールドの上じゃなくても、ピッチの上じゃなくても、どこだって輝きを放つことができる力があるんだから。

目標の結果に辿りつけなかったとしても、「価値ある自分」でいなければいけないし、そういう希望のある業界でなくちゃだめだと思う。勝者以外のアスリートに価値がないんだったら、そんな業界だめですよ。

ビジネスパーソンだって、例えば20年働いたら、その分の価値が積み上がるじゃないですか。スポーツ選手だって、勝負に負けて思った場所に辿り着けなくたって、そこまで積み重ねてきた価値はなくならないはずです。

それはミュージシャンも同じ。例えば、武道館や東京ドームでライブができなければ価値がないのかといったら、絶対そうじゃないよね。楽曲やファンの人たちに届けてきた思いにはもう十分価値がある。ライブハウスがなくなってライブができなくなったら、音楽って止まっちゃうんですか?いや、絶対違うでしょ。

No image

──アスリートが持つ競技の力だけではない、この世を生き抜く「戦士」としての能力とは、どんな力だと思いますか?

武井:「成長する力」ですね。競技をやっている子たちって、目標を達成するためにお金になろうがなるまいが、とてつもないトレーニングを続けられる努力家がいっぱいいます。でもみんな、その成果は自分が選んだ競技でしか発揮できないと思い込んでしまっている。

決してそうじゃないんですよ。みんなが普段から鍛えているのは、自分と向き合い成長させられる力であって、どんな仕事についても、ビジネスをやろうとしても、実は評価されるもの。

だから、僕自身は芸能界に入っても勝負できると思ったし、自信を持って次の業界にも進めた。アスリートとして肉体で戦うことをやめたとしても、いくらでも戦える場所は地球上にある。そこを見つけて、選んで、スポーツ以上に楽しんで、スポーツ以上のものを手に入れられるように成長していかないと。

そういう意味で、1人でも多くのアスリートたちに、競技の成績だけじゃない力を自分たちが持っていることに気付いてほしかった。

このプロジェクトを通じて、音楽やスポーツ、アートやビジネスなど、さまざまな分野と掛け算をすることで力を発揮できる「ファイター」が増えて、新しい道や可能性をみんながどんどん切り開いてくれたらいい。

そうなれば、スポーツや音楽の未来は、もっともっと明るいものになると信じています。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加