「似た者同士」タッグが目指す、薬局DX起点の「医療のリデザイン」 カケハシ中尾豊、中川貴史

「似た者同士」タッグが目指す、薬局DX起点の「医療のリデザイン」 カケハシ中尾豊、中川貴史

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/11/25
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発売中のForbes JAPAN2023年1月号の特集「日本の起業家ランキング2023」で8位に輝いたのは、薬局向けSaaSを提供するカケハシの中尾豊、中川貴史。

「日本の医療をリデザインする」ことで意気投合した二人。似たもの同士が交わることで生まれたシナジーは、薬局業界を大きく揺れ動かしている。

「薬局業界は動線が変わってこなかった。そこに起きる変化は、どんなものであれ私たちに追い風になる」

薬局DXを推進するカケハシ共同創業者のひとり、中尾豊は自社を取り巻く環境についてこう語った。

一例をあげよう。2022年4月、日本でリフィル処方箋が解禁された。リフィル処方箋とは、医師の診察なしに最大3回まで繰り返し利用できる処方箋。ただ、有効期限は次回調剤予定日の前後7日間。それを過ぎると医師の診察が必要だ。

従来なら薬局は患者が処方箋をもってくるのを待っていればよかった。しかし、診察不要で患者が薬をもらうことを忘れやすい状況になると、安全性の確認を前提に薬局からアプローチして治療継続を促す役割が求められる。

「カケハシの『Pocket Musubi』は単なるおくすり手帳を超えて患者さんをフォローするツール。私たちは21年11月、業界に先駆けて次回受診確認メッセージ機能を追加して、お客様から広く支持された。まさに変化はチャンスです」

SaaSには、業界横断の共通業務向けであるホリゾンタル型と、特定業界の業務に特化したバーティカル型がある。カケハシの「Musubi」シリーズは、薬局業界特化のバーティカルSaaSだ。

これまで薬剤師は患者に服薬指導後、薬歴を手動で入力していた。電子薬歴システム「Musubi」は、薬剤師がタブレットで患者に服薬指導すると薬歴の下書きが生成され、業務効率が向上する。

「Musubi」は中小薬局を中心に導入されていたが、近年は大手チェーンでの採用が進み、契約店舗は全国薬局の10%にあたる6,000店を突破。直近1年の成約店舗数は前年から倍増し急成長を遂げている。

なぜ大手がカケハシを選んだのか。もうひとりの創業者、中川貴史はこう分析する。

「プロダクトとして優れているだけではダメ。ユーザーへの教育研修や365日即時対応のカスタマーサポートなど、プロダクト以外でも安心いただける体制をつくったことが評価されました。体制構築には時間がかかりますが、私たちのゴールは患者さんや薬剤師さんに付加価値を与えることであり、創業当初からカスタマーサクセスを意識して準備してきた。それが実を結んだと考えています」

目指すは医療プラットフォーマー
タカとユタカ―。お互いにそう呼びあうふたりが似ていたのは名前だけではない。

中尾は身内に薬剤師がいる環境で育ち、武田薬品工業に就職。MR(医薬情報担当者)として活躍していたが、規制緩和の流れを見て「患者により付加価値を届けられる仕組みをつくりたい」と退職届を出した。業務の引き継ぎをしているときに出会ったのが、マッキンゼー・アンド・カンパニーにいた中川だった。中尾は出会いをこう振り返る。

「勉強会で『医療をリデザインしたい』と語っても、『いくら儲かる?』という反応ばかり。唯一、『面白いじゃん』と言ったのがタカでした。能力面はわからないけど、視座の高さは同じ。さっそく翌日、ランチに誘いました」

一方の中川は、学生時代から教育系や音楽ストリーミングサービスで会社を起こした起業家だった。しかし、当時はリーマンショック後で逆風が吹き、音楽のサブスクも普及前で理解されなかった。「起業はタイミング」という苦い教訓を得て、いったんマッキンゼーに入社。コンサルタントとして活躍していたが、スタートアップのエコシステムが徐々に形成されていく様子を見て、「いい頃合い」と勉強会に参加した。

中尾の話を聞いて一緒にやることを決めたのは、医療に変革が起きる時機だと確信したからなのか。そう問うと、中川は「そこはわからなかった」と笑った。

「ただ、失敗してもチャレンジする意義のあるテーマだと思いました。タイミングは重要ですが、結局、一歩踏み出すかどうかは社会課題を解決したいという思いの強さ次第でしょう」

日本の医療をリデザインする―。起業から6年たったいまもふたりが描くゴールは一致している。目指すは、バーティカルSaaSの枠を超え、薬局起点の医療プラットフォーマーになることだ。例えば、21年には在庫医薬品売買サービスを提供するPharmarketを買収し、薬品流通の領域に進出している。

領域を広げると、変革を拒むステークホルダーと衝突するおそれもある。しかし、中尾は「ディスラプター(破壊者)ではない」ときっぱり。

「感覚はCo-デザイン。一緒に設計するには、ステークホルダーをハッピーにすること、そして理念を語ることが大切」

一方、中川からは別の文脈から理念の重要性を説いた。「社員数は300人近くに増えました。組織をまとめるにはミッション、ビジョン、バリューが必須。私自身、この一年はそこに向き合うことに時間を費やしました」

中尾は外、中川は中という役割分担ができているようだが、どちらもビジョナリーなアプローチをするのは同じ。やはり似た者同士である。

中尾 豊◎医療従事者の家系で育ち、武田薬品工業でMRとして活躍後、2016年にカケハシ創業。

中川貴史◎東京大学法学部卒。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て2016年にカケハシ創業。

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