「売れ筋ランキング」の投資信託を買った初心者が「だいたい失敗する」ワケ

「売れ筋ランキング」の投資信託を買った初心者が「だいたい失敗する」ワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/06/10
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金融庁は2015年頃から「貯蓄から投資へ」あるいは「資産形成へ」と政策を加速し、将来の年金不安、老後2000万円問題などの解消を目的に、個人への資産運用の推奨を始めた。前回の記事『金融リテラシーが低い日本人が「投資に踏み切れない」歴史的理由』で、高度経済成長期からの歴史が日本人の金融リテラシーにどのように影響しているのかを述べた。日本人がより投資に踏み出しやすくするために、金融庁が推奨する政策のポイントの2つめのポイントである「正しい長期・分散・積立投資」について解説していきたい。

売れ筋・進められた投資信託が安心という勘違い

金融庁や全国銀行協会が推奨する「長期・分散・積立投資」はリスクを軽減し、長期投資を行うための投資手法として特に、堅実な考え方の40代以下を中心に浸透し始めている。

しかし、長期・分散・積立の意味を勘違いして投資を行っているケースも散見される。今回は、よく陥りがちで、間違った、あるいは正しく理解されていない長期・分散・積立投資(投資信託)を例に、長期の資産形成に通じる投資方法とは何かを解説したいと思う。

投資信託を買うきっかけ、あるいは決め手として「売れ筋ランキング」を参考にしたり、証券会社の対面で営業マンなどから勧められたりするケースが多いかと思う。みんなが買っているのだから安心という心理的な理由で購入する方が多いが、長期の資産形成にはあまりお勧めできない。

例えば、次の表はいわゆる売れ筋ランキングといわれる「2020年純資金流入額上位5ファンド」だが、1位と2位は発売されてから1年が経過していない新規設定のファンドである。

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(モーニングスターのデータをもとにオリックス銀行にて作成)

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非常に不思議な現象だ。年金や金融機関などのプロの機関投資家が、投資するファンドを選ぶ場合、過去の運用実績を見ないで選ぶ場合は皆無である。プロ野球選手のドラフト指名で全く実績のない選手を選ぶようなものだ。指名しても活躍できない外れが多いのは当たり前である。

では、なぜ投信の「売れ筋ランキング」に無名の選手のような新規設定のファンドが連なるのか。理由は営業担当者が勧誘しやすく、買う方もわかりやすいから売れるのだ。AI、EV、ESG、モビリティ、デジタル、フィンテック、次世代医療など旬の儲かりそうなトピックや、バラ色の未来を想像できる「テーマ型投信」が多い。

今回のランキングでいうと、すべての企業の長期評価に必要と言われるESGですら旬のテーマにされてしまう。下記の表2でもわかるように販売手数料が2~3%と高い投資信託が売れている傾向であり、売りやすく、短期で新しいファンドを買ってくれる(乗り換えしてくれる)、つまり「販売会社が売りたいファンドがランキングしていることが多い」のだ。

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表2.投資信託の平均販売手数料率の推移

(金融庁:令和2年7月3日、投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営モニタリング結果について)

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信託報酬の「低さ」ではなく「何に投資」が重要

投資信託を買う際に「信託報酬の低さ」を重要視しているという声をよく聞く。投資ブログやツイッターでは「あるファンドの信託報酬が0.01%下がって業界最低水準に!」と話題になり、喜ぶ声、称える声が多数並ぶ。

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もちろん投資を行う際に発生する手数料などの費用は気に掛けることも重要だが、あくまで投資の判断軸は信託報酬ではなく、「何に投資するか」がポイントである。参考にはなるが、次の表3は1999年末を100とし、日経平均と米国ダウ平均の推移を比較したもので、日経平均は1.5倍だが、米国ダウ平均は2.5倍となっている。

単純に比較はできないが、約20年前にどちらを選ぶかで、結果は大きく違う。日本経済なのか米国経済か、あるいは世界株、欧州株、新興国株、債券、バランス型なのか。信託報酬の低さにこだわるのではなく、何に投資したら長期的な成長が期待できるのかをぜひ考えてみてほしい。

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拡大画像表示表3.1999年末を100とし、日経平均株価と米国ダウ平均株価の推移

(取引所のデータを元にオリックス銀行にて作成)

分散投資は「同時に下がらない」がポイント

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分散投資は損失リスクを抑えるために、さまざまな投資対象に分散して投資を行うことが目的だ。しかし、複数の銘柄に投資する株式ファンドや複数の株式ファンドに分散投資を行い、満足しているケースがあるが、このような分散投資では効果が薄い。

極端に言えば、株式という1銘柄に投資しているのとそう変わらず、結果分散になっていないため、リスクを抑えられているとは言えない。 以下の表4に、NYダウ、日経平均の過去の最大下落率をまとめてみた。

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表4.「株式指数の過去の最大下落率と時期」(取引所のデータを元にオリックス銀行で作成)

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この表を2つの視点で見てほしい。

1つ目は過去の最大下落率が両方とも50%を超えていることだ。コロナショックで経験した人も多いと思うが、インデックス・積立・低手数料などの考え方の前提に、株式指数(単独)というのはそれなりに大きなリスクがある。

もう1つは例えばダウと日経平均で分散投資しても、株式指数である限り同じような時期に下落するため、分散の効果が小さいということである。逆に言えば、同じような時に下落しない銘柄やファンドを組み合わせることで分散投資は効果を発揮し、リスクを減らすこいとができる。

例えば、株式×債券ファンドを組み合わせてみたり、投資信託以外にも値動きの異なる複数の資産(預金、株式、債券、不動産、金銭信託)を保有したり、あわせて広く国や地域の分散も行うとより効果的だ。

プロの機関投資家は「積立投資」はしない

プロの投資家は、毎月決まった日にちなどに投資を行う積立投資ではなく、割高で買わないよう、相手にわからないようにタイミングを分散して投資を行う。月次の積立投資のように、毎月決まった日にちに一斉に投資を行う、一度に多くの買い注文を出すとなると、結果として割高な価格で購入してしまうケースもあり、長期の資産形成につながらない可能性もある。

また、「安い時に買い、高い時に売る」という考え方のもとでプロは投資を行う。相場が下落したときに底値と思ってまとまったお金を投資し、その後、株式が上昇したケースや、明らかに連日過剰な高値更新が続いたときに売却したなど、積立投資より大きな利益を得ることは個人投資家でもできる。

手間を省くという意味で便利な積立投資だが、それは「安く買って、高く売る」という投資結果を期待するものとは少し違う。定時・定額(少額)の積立投資は、購入の投資タイミングを分散させることが目的の1つであって、それは相場や資金の状況を見て自分で判断してもよい、というということは理解しておいた方がよい。

長期・分散・積立投資は、リスクを避け長期資産形成を行うには有効である。しかし、それは正しく行わないと意味がない。言い換えれば、多くの投資家がしているつもりで、実際には理解していない、できてない場合が多い。

20~40代のミレニアル世代は手数料や信託報酬に敏感である。それは非常に大事なことであるが、実際に信託報酬を基準に選ぶインデックス投資家の意見を聞いてみると、その理由が「選べない、時間がない、その能力もない」という話をよく聞く。

「長期・分散・積立でインデックスにほったらかし投資」、それも1つの長期資産形成の方法だ。しかし、投資は学ばないとリテラシーも向上しない。時間を見つけて、自分の投資したい対象は何か、リスクは何かなど、自力で確認してほしい。

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また、昨年のコロナショックの急落は、一部の投資家には絶好の買い場とみて投資を増やした人も多い。積立投資では、相場水準に関係なく毎月一定額を購入するため、このような機会を逃す。自分で投資タイミングを分散する、あるいは、買い時を判断するような積立以外の方法も試してみることも資産運用においては1つの方法である。

投資を自分で理解し、自分で判断できることは判断し、経験を積むことで、金融リテラシーや投資の知識・技術も上がり、より納得感のある資産運用・形成が実現できると筆者は思う。

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