中国iPhone工場で抗議活動、生産低下で商機逃す恐れ

中国iPhone工場で抗議活動、生産低下で商機逃す恐れ

  • JBpress
  • 更新日:2022/11/25
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鴻海精密工業(写真:ロイター/アフロ)

米アップルからスマートフォン「iPhone」の製造を請け負う、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の中国・鄭州工場(河南省鄭州市)で従業員の大規模な抗議活動が起きたと、ロイター通信米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが11月23日に報じた。

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手当や衛生環境の不備が原因か

数百人の従業員が抗議に参加した。従業員のチャットグループで広まった動画には、屋外のテントが引き倒され、ガラスの建物入り口ドアが破壊されている様子が映っている。十数人の警察官と工場の警備員とみられる白い防護服を着た男たちが従業員を繰り返し殴ったり、警棒でたたいたりしている。

抗議活動は、人員補充のために新たに雇った新人工員に対する手当の支払いや工場内の衛生環境の不備などを巡って起きたとみられている。ロイターによると、鴻海はiPhoneにとって最大の電子機器受託製造サービス(EMS)企業。世界のiPhone出荷台数の70%を生産しており、これが鴻海の売上高の45%を占めている。混乱が工場の稼働状況に影響を及ぼしているとみられ、年末商戦時のiPhoneの供給・販売にも影響が出そうだ。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、鴻海は「手当に関する契約上の義務を常に履行しており、事件の再発を防ぐために従業員や政府と連絡を取り合う」と述べた。

宿舎と工場内に隔離する「クローズドループ」操業

従業員20万人超を抱える鴻海の鄭州工場では、多くが近隣の宿舎に住んでいる。同工場は、新型コロナウイルスを封じ込める中国政府の「ゼロコロナ政策」の下、従業員が宿舎と工場間のみを移動できる「クローズドループ」操業を行うという条件で営業が許可されている。

同工場では22年10月下旬、新型コロナの感染者が確認され、外出を禁止された従業員たちが集団で脱出する事態に陥った。工場では人員補充のために新人工員を募集した。これを受け、河南省当局は退役兵と公務員に対し、同工場での一時的な勤務を呼びかけるなど人員補充の支援に乗り出した。ロイターによると今回の混乱は、こうして新たに雇った新人工員が引き起こしたという。

鴻海は、従業員のつなぎとめや新人の応募を促すため、手当の支給や報酬の引き上げを余儀なくされた。だが、関係者によると、今回手当や宿泊施設などを巡り、新規採用者との間で「誤解」が生じた可能性がある。

鴻海が実施している「クローズドループ」操業について、従業員らは、十分な食事が提供されるかどうか不安を抱いている。工場内における不十分な新型コロナ対策も懸念しているという。

今回の混乱の直前には、会社が生産目標を達成するために感染者も働かせているといううわさが流れた。これより、「さらに何千人もの従業員が工場から逃げ出した」(ウォール・ストリート・ジャーナル)という。

ロイターによると、香港に拠点を置く人権団体は、「クローズドループは新型コロナが都市に広がるのを防ぐ効果はあるものの、工場内の労働者にとっては無策を意味する」と指摘する。

iPhone、供給不足で商機逃す恐れ

米証券DAデビッドソンのアナリスト、トーマス・フォルテ氏は今回の混乱について、iPhone販売の一部は、1年で最も重要な年末商戦時期から次の四半期(23年1~3月)にずれ込む恐れがあると予測している。

香港のカウンターポイント・リサーチによると、鴻海の鄭州工場では、新製品「iPhone 14」の普及モデル(14/14 Plus)の80%以上を、同上位モデル(Pro/Pro Max)の85%を製造する計画だった。

アップルは、22年11月初旬に異例の声明を出し、「鄭州の主要な14 Pro/Pro Maxの組立施設は生産能力を大幅に縮小して操業しており、顧客の手元に届くまでの待ち時間が長くなることが予想される」と説明した。

ロイターによると、鴻海は鄭州工場を22年11月中にフル生産体制に戻すことを目指していた。だが、関係者は今回の騒動が、新規採用従業員の稼働体制に影響を及ぼすと指摘する。「我々は当初、22年11月末までに新人工員を生産ラインに立たせることができるかどうか見極めていた。今回の混乱により、11月末までに通常の生産を再開できないことが確実になった」(関係者)。

米ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏は、工場が閉鎖されれば、アップルに逸失売上高が生じると指摘する。1週間におけるiPhoneの逸失売上高は約10億ドル(約1400億円)になるという。21年の年末商戦時における1週間あたりのiPhoneの売上高は約60億ドル(約8300億円)だった。

小久保 重信

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