加藤浩次にオリラジほか...脱藩芸人が続出中!お笑い芸人と事務所の関係に変化?

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2021/05/05

コラムの連載を始めてもうすぐ1年が経つ。お笑い、芸人、エンタメについて元芸人目線で好き勝手考察しているように見えると思うが実は題材を決めるまでに意外と時間がかかっている。

そんなアイディアが枯渇した僕にとって、毎日エンタメ業界でアンテナを張り、常に次に何が流行るかをチェックしている編集長さんからの『次は◯◯について書いてみてはどうですか?』というアドバイスが非常に助かるときがある。

今回はそんな編集長さんからいただいた題材。「芸人と事務所の関係性」について、元芸人目線で分析していこう。

僕が現役だったのはもう10年以上前だ。その頃と今では、芸人と事務所の関係性は大きく変化したと言える。

事務所が売り手で芸人は商品。これはいつの時代も変わらない。

僕らの世代は特にダウンタウン、ウッチャンナンチャンに憧れてお笑いの道に進んだ芸人が多い。その影響で、尖っているほうがカッコいいとか、人と違う事をアピールしたり、人間的にも未完成で素人同然の若手が大量にいた時代だった。

事務所はそんな調子にのった若手に礼儀を教え、事務所が絶対的な存在であることをしっかり身に染み込ませる。事務所が上で、芸人が下、今の時代なら嫌悪感を抱かれそうなマウンティングやパワハラにもとられる言動も、日時茶飯事だった。

ところで 『め組の大吾』(小学館)という若手消防士の活躍するマンガがある。

そのマンガの中で、レスキュー隊の訓練をする回があるのだが、レスキュー隊というエリート集団に入れた若者たちは、浮足立って訓練をしている。しかし教官たちは必死の形相で若手を訓練しているのだ。「若手のまま火事の現場に行くと、必ず足手まといになる。それは災害をひとつ抱えるのと同じだ。なのでどうしても我々と同じレベルになってもらう」というようなセリフがあり、愛がある故の厳しさであると物語っている。

当時の事務所の行いは、まさにこれと同じだ。

芸人の身分をわきまえない言動は事務所間の問題や、最悪の場合はテレビ局との問題に発展する可能性もあり、そうなると事務所が大打撃をくらうだけでなく、本人の芸人生命も終わってしまう。

「芸人と事務所の関係性」は、一蓮托生とまでは言わないが、厳しさを伴う家族のような存在だったと言える。

よく、“昔は尖っていた”と話す芸人がいるが、これはある程度売れてからの話で、全く売れていない時代に尖っていて、そのまま尖り続けて大成した芸人はいない。

誰しもが事務所や先輩芸人の指導のもと、礼儀や業界で生き抜く様を学ぶ。獰猛な大型犬を躾け、だれかれ構わず噛みつくのを防ぐのと同じである。

ここで反抗する者は早々にフリーになるか、マネジメントが甘い個人事務所へ移籍し、未完成のまま世にも出ず芸人人生を終えることも多い。

厳しい指導に耐えた芸人は晴れて事務所のファミリーとして迎えられ、何かあったときは事務所が矢面に立ってくれた。

例えば、テレビ局で何か怒られるようなことをしてしまったとする。人としては怒られるようなことでも芸人として正しければ、事務所が芸人の代わりに怒られて、芸人の代わりに怒ってくれるのだ。そのように芸人を守り、時には叱咤激励しながら育て、運をつかみとれるようサポートしてくれる。

僕はこういった温かい事務所を多々知っていた。

では今はどうだろう?

芸人と事務所の関係性が変化したと述べたが、具体的に大きく変わったと思う点は”距離感”だ。心の距離感とでも言おう。

僕が現役だった頃は、一度事務所に入ったら他の事務所への移籍なんて考えたとこもなかった。やむを得ない場合を除き、基本的には最初に所属した事務所で芸人を全うするイメージがある。だからこそ事務所は惜しみなくお金を注いてプロモーションし、売れるための道筋を作ってくれた。その期待に応えるべく芸人は、全力で日々真剣にお笑いに向き合う。事務所と芸人が信頼と愛情を持って二人三脚していた。

ところが今は事務所を変えるというのは、そう垣根の高いことではないらしい。売れている芸人が好条件の事務所へ移籍するだけでなく、売れていない若手も平気で事務所を変えるのだ。

現在、僕がお世話になっているお笑い事務所も、芸人の入れ替わりが激しい。相方と気が合わない、ネタが書けない、他事務所の方が売れそう、就職したいなどなど、僕に言わせたらどれもこれも本気でお笑いを目指していると思えない理由だ。

相方と気が合わないなら何故組んだ? ネタが書けないなら書けるように勉強しろ。ましてや、「他の事務所の方が売れそう」だなんて、最高に頭の悪い発言だ。

事務所の大小関係なく、オーディションの募集は平等であり、ライバルが多い事務所より小さい事務所で頭角を現したほうが道としては近道なのに、その発想がないのだ。しかも今の時代はYouTubeやTickTok、そのほかSNSを通じて世の中に広く知ってもらうチャンスが溢れている。

僕が現役の頃、『ホームチームはマセキだからテレビに出られた』と話す人がいた。しかし振り返ってみても、他の事務所よりチャンスが豊富だったとは思えない。

バカリズムでさえ、テレビで認知されるようになったのは30歳過ぎてからだ。彼の才能からして、もっと早く売れて良い存在だったと思う。どう考えても事務所の規模や知名度は関係ないのに、売れないのを事務所のせいだと思いたい若手が多いようだ。事務所はそんな若手を育てたいと思わない。

そしてもう一点、ファミリー感が薄れて ビジネス色が強くなったように感じる。芸人、事務所どちらに対してもだ。

まず吉本興業で行われたエージェント制からの解雇。

もちろん芸人と事務所の関係はあくまでもビジネスだ。ビジネスとして、「事務所へ害を及ぼすであろう芸人は必要ない」という判断での解雇だとは思うが、あまりにも情が無さすぎる。

芸人サイドは逆に情に訴えかけ、ここまで一緒にやってきたのだから仲間を助けてくれと言っていたように見えたのだが、意味がなかった。もしかしたら事務所側は情が無いのではなく、逆に「ここまで育ててやったのに」という可愛さ余って憎さ100倍という感覚だったのだろうか。

どちらにせよ、何年も一緒にやってきたのに悲しすぎる結末だ。退職代行を使って長年勤めた会社に辞表を提出するようなものなのだろうか……。

ただこれは長い年月事務所に貢献してきた芸人に限る話で、若手で売れ始めた芸人が事務所へ対して反抗するのは話が違う。前述したが、事務所は若手芸人を世に出す為にかなりの投資をしている。芸人が事務所へ貢献するより、事務所が芸人へ与えているものの方が圧倒的に多いのだ。

ライブハウスを借りるのもタダではない。自社の会場を作るには毎年莫大な資金が必要で、もちろん維持費もかかる。テレビへの営業をする為にスタッフは足を運び、マネージャーはスケジュールを管理し、テレビやライブで必要となる衣装は会社が雇ったスタイリストが用意する。芸人が稼いだお金でやっているといえばそうだが、人材を集めているのは事務所だ。人件費はタダではない。タダではないのにいつの間にか当たり前になり、長年受けた恩恵より、短い期間であっても自身が貢献したことの方が大きく思えてくるのだ。そして感謝は不満に変わっていく。

本物の親子だったら、子供が反抗期を迎えても大人になる為の通過点だと理解し、愛を持って叱り道を踏み外さないように見守る。家族だからだ。だがビジネスであれば、切り捨てるという選択肢がある。

悲しい関係になってしまったように見えるが、今後は独立した芸人が事務所を構え、その事務所に若手が所属するというパターンも増えていくだろう。

組織主義から個人主義に変わりつつある世の中だが、いつの時代も第三者の目は新しい発見を生む。自分では見えなかった才能に気づいたり、得意分野を発見したり、アイディアをいただいたり編集長さんがネタを提供くれるように) 。

個人で戦うことを否定しないが、愛ある事務所で一緒に切磋琢磨する素晴らしさを現代の若手にも感じて欲しい。

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