ルノー独自の「E-TECHハイブリッド」で燃費と走りの良さを両立
2022年6月に日本で登場した、ルノーのフルハイブリッド、新型「ルーテシアE-TECH HYBRID(E-TECHハイブリッド)」。
人気のBセグメント・コンパクトハッチバックに、ルノー独自の革新的なハイブリッドシステム「E-TECHハイブリッド」を搭載したこのモデルは、WLTCモード燃費は25.2km/Lという、輸入車として最高レベルの低燃費を実現しています。

新東名高速道路をひた走るルノー「ルーテシアE-TECHハイブリッド」
【画像】ルノー「ルーテシア・ハイブリッド」で800kmの長距離ドライブ!実燃費を画像でチェック(30枚)
そんなルーテシアE-TECHハイブリッドを駆って、横浜から愛媛県・松山市までのメディア対抗のエコラン競争がありました。
もちろん公道を走りますから、あくまでも順法&安全運転重視という枠組みでのトライとなります。イベントの狙いは、当然、「ルーテシアE-TECHハイブリッド」の走りと燃費性能がどれほどのものかを実感し、それをレポートするというものとなります。
ここで最初に説明すべきは、ルノーのハイブリッド技術であるE-TECHハイブリッドでしょう。これはルノーがF1参戦で培った技術をベースとした本格的なハイブリッド技術だといいます。
エンジンと発電用と駆動用という2つのモーターを組み合わせるというところは日本製ハイブリッドとあまり変わりません。ユニークなのは、ルノーのE-TECHハイブリッドでは、エンジンとモーターをミックスさせるのにドッグクラッチを使っていること。ドッグクラッチは、かみ合いクラッチと呼ばれるように、まったく滑りません。パワーをロスせず、しかもレスポンスがよいためモータースポーツでよく使われています。
具体的に言えばE-TECHハイブリッドでは、エンジン側に4個のギヤ、モーター側に2個のギヤがついており、それらをドッグクラッチで切り替えます。普通に考えると、変速のたびにガクガクとか、ドンとかショックが発生しそうなもの。ところがE-TECHハイブリッドでは、エンジン回転数とタイヤの回転数に合わせて、モーターの回転数を緻密にコントロールすることで、まったく変速ショックを感じさせることなく走ることを可能としています。

スタートはルノー・ジャポンがある横浜から。830km先の愛媛県松山市を目指す
そしてルノーは、この最新のハイブリッドシステムを2022年5月の新型SUV「アルカナ」を皮切りに、コンパクトSUVの「キャプチャー」や、このルーテシアへと搭載を拡大してきました。
その販売は順調で、2022年だけでルノーのE-TECHハイブリッド搭載車は1360台。2022年のルノーは年間8615台という過去最高の日本での販売を記録していますが、その好成績にはE-TECHハイブリッドも貢献していたというわけです。
横浜−松山 831kmの実際の燃費はWLTCモード燃費を超えた
では、実際の燃費レースはどうだったのでしょうか。
まず、朝にスタート地点となる横浜で、「ルーテシアE-TECHハイブリッド レザーパック」を受け取りました。名称の通り、レザーシートを使う上級グレードです。

繊細なアクセル操作で高速道路を走行中
システムの構成は、最高出力67kW(91馬力)の1.6リッター直列4気筒ガソリンエンジンと、最高出力36kW(49馬力)・205Nmのメインモーター、そして15kW(20馬力・50NmのHSG(ハイボルテージスターター&ジェネレーター)、1.2kWhのリチウムイオン電池というもの。
メーター内に「瞬間燃費」を表示させながら、エコランをスタートします。燃費を少しでも稼ぐため、エアコンはOFF。EV走行のできるE-TECHハイブリッドで燃費を伸ばすには、いかにエンジンを停めて、モーターのみで走るEVモードを多用するかがポイントとなります。
ジワリとアクセルを操作しつつ、エンジンが始動して「瞬間燃費」の数字が大きくなると、アクセルを戻して、EVモードに入れることを繰り返してゆきます。日本のハイブリッドと違って、アクセルを戻すと、簡単にエンジンが停止してくれます。そういう意味で、繊細なアクセル操作と注意力は必要になりますが、やることは単純です。
しかしその一方で、高速道路の流れに合わせる必要もありますから、運転には一時も気が抜けません。一見すると、高速道路の一番左車線を淡々と走っているようにしか見えませんが、ドライバーは、ものすごく気を張って運転していたのです。
そんな努力を後押しするように、今回は幸運にも恵まれました。終始、高速道路がよい塩梅で混んでいたため、全体の流れが遅かったのです。そのため、東名高速道路の御殿場ICまでの上り坂でも、カタログ数値を超える好燃費が維持できたのです。

神戸淡路鳴門自動車道の淡路SAに着いた頃はもう日が暮れていた。燃費チャレンジは定期的な休息が大切になる
そして新東名高速道路経由で名古屋の伊勢湾岸道を抜けて、京都、大阪、神戸、淡路島を抜けて四国へ。エアコンOFFですから、3月とはいえクルマの中は暑く、窓を開けて走行します。そして途中宿泊を予定していた香川県の高松市に着いたときは、すっかり日も暮れてしまっていたのです。ちなみに日が暮れると、今度は寒い。暑さ寒さに耐えるのもエコランです。
2日目のスタートは、高速道路へ向かう市街地走行から。ここで問題が発生です。なんと暖気で燃費が悪化してしまったのです。とはいえ市街地走行自体はEV走行が主体となっていて、意外に燃費の悪化はありません。
それよりも高速道路に乗ってからのほうが厳しかった。四国の高速道路は、意外にアップダウンがきつく、しかも流れがスムーズ。速度域が高いため、さらに燃費が悪化していきます。
なんとか燃費を稼ごうと、アクセルを微妙にON&OFFを繰り返しながら、昼前にゴール地点となる愛媛県松山市にある萬翠荘(ばんすいしょう)に到着。
2日間にわたって、ずっと繊細なアクセル操作に気を配り、そして日中の暑さ、日没後の寒さに耐えてのドライブ。感極まるゴールとなったのです。
ちなみに走行距離は831.2㎞。そのうちEVモードは457.2㎞。つまり半分強を、エンジン停止状態で走っていたのです。
そして気になる燃費は、見事にカタログ数値の25.2km/Lを超え、なんとリッター30km近くの数値を達成しました。ほとんど高速道路だけで、しかも加減速を極力少なくしたのが好成績の理由でしょう。
しかし、これほど燃費のよい欧州車は初めて。実燃費なら日本車のハイブリッド車と良い勝負ができます。
ちなみにルーテシア E-TECHハイブリッドの走りは、今回は高速道路中心&エコランだけですが、非常に好印象なものでした。
ステアリングは中立付近から絶妙に舵が効きつつも、直進性がよくてビシッと走行レーンの真ん中をキープします。
ロールやピッチングが少なく、足回りがしなやかに動きます。乗り心地がよいのも魅力でした。レザーシートの座り心地にも大満足。神経を張りっぱなしの2日間のドライブでも、疲労感はそれほど大きなものではありませんでした。

ゴールは愛媛県松山市にある国の重要文化財「萬翠荘」。大正11年旧松山藩主の子孫にあたる久松定謨伯爵が、別邸として建設した純フランス風の建物だ
Renault Lutecia E-TECH HYBRID Leather Pack【ルノー・ルーテシアE-TECHハイブリッド レザーパック】
・車両本体価格(消費税込):344万円
・全長:4075mm
・全幅:1725mm
・全高:1470mm
・ホイールベース:2585mm
・車両重量:1650kg
・エンジン形式:直列4気筒ディーゼルターボ+モーター
・排気量:1597cc
・駆動方式:FF
・変速機:ドッグクラッチマルチモードAT
・最高出力:91ps/5600rpm
・最大トルク:144Nm/3200rpm
・メインモーター最高出力:49ps/1677−6000rpm
・メインモーター最大トルク:205Nm/200−1677rpm
・サブモーター最高出力:20ps/2865−10000rpm
・サブモーター最大トルク:50Nm/200−2865rpm
・燃費(WLTC):15.3km/L
・サスペンション形式:前ストラット・後トーションビーム
・タイヤサイズ:205/45R17
鈴木ケンイチ