<純烈物語>コロナ禍で白川裕二郎は「僕にとってたった一つの打ち込めるものが純烈であり、ほかのものを求めたらバチが当たる」と言った<第67回>

<純烈物語>コロナ禍で白川裕二郎は「僕にとってたった一つの打ち込めるものが純烈であり、ほかのものを求めたらバチが当たる」と言った<第67回>

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2020/10/22

―[ノンフィクション連載「白と黒とハッピー ~純烈物語」]―

No image

◆<第67回>ゴールのないマラソンを走る歌い手、白川裕二郎が高揚する大きな一歩

お客さんの喜ぶ笑顔が見られない――これは、コロナ禍の中ですべてのスポーツ&エンターテインメントに携わる者たちが味わった辛さと思われる。徐々に有観客イベントも再開してきてはいるが依然、飛沫対策で声援やコールは飛ばせぬ状況にある。

本来は声をあげることでストレスを発散し、ライブに参加する醍醐味を味わうものだが、それを禁じられても会場へ足を運ぶのだからファンとはありがたい。今、チケットを買って応援に来てくれる観客は相当のモチベーションを持っているといっていい。

声を出せない代わりに、すべての感情を拍手によって伝えようとする。同じ手を叩く行為なのに、コロナ前と比べると明らかに味わいが違うのだ。

その意味で、以前よりも一緒にライブの空間を作り上げようという意思が伝わってきて、パフォーマーとの距離感は近づいている。有観客によって確かに顔は見られるようになったがその分、本当の意味での楽し気な姿には戻っていない気がする。

「そういったものを気にすることなく楽しめるようになったところが、純烈ライブの再開のタイミング」と、酒井一圭は言っていた。ソーシャルディスタンスを取り、声出し禁止でやるなら今でも可能だろう。

でも、それが純烈のライブかというと違う。ラウンドにて至近距離でふれあいながら、MCに爆笑しながら、そしてメンバーとオーディエンスが一緒に歌いながら……その“らしさ”を発揮できないのであればやるべきではないというのが、リーダーの考えだ。

◆なくなって分かる価値

「なくなってみてわかる価値ってあるじゃないですか。普通にあることが、どれほど恵まれていたかを、こうした状況になって痛感しますよね。毎日歌って、そのあとに何人ものファンの皆さんと写真を撮って、その中で当たり前に疲れると思うことがあったのが、今ではその疲れさえも楽しかったなあって思えるんです。でも、なんでこんなに嬉しそうにしているんだろうと思う機会が今はまったくない。

この仕事をやらせてもらい、人を見て喜べるのってすごく素敵なことだと思うようになったんです。歌の力や演出の仕方、僕たちの歌を好きと言ってくれる人も、トークが好きだという人も、純烈の雰囲気が好きだと言ってくれる人もいるけど、人が喜んでいる顔を見てそれを仕事にできるのはすごくありがたいものだと。それを、こういうことになって改めて思わされました」

人前で何かを表現するとは、そういうものだと白川裕二郎は考える。誰かに喜んでもらいたいと思っても、それができる人間は限られる。夢破れ、消えていく者は星の数ほどいる。

その使命を全うしたいとの思いで純烈を続けてきた。それが、受け手側との直接的なかかわりを遮断されるようになるなど、まったくの想定外だった。

◆たった一つ、打ち込めるものが純烈

自分の力や姿勢、信念さえも及ばぬ事態とあれば、ジタバタしたところでどうにもならない。白川は脇目を振ることなく、ただただ歌の向上に没頭し、その中で実力という現実とも向き合った。時間ができた分、ほかの活動に手を伸ばすことは考えなかったのかと聞くと……。

「俳優さんとかですか? 全然考えなかったですね。ここまで来られたのは純烈のおかげだし、僕が酒井に誘われていなくてあのまま役者を続けていたら、間違いなく紅白に出られていないし、この業界にさえいなかった。僕の人生をいい意味で変えてくれたのが純烈でありお客さんだから、ほかの仕事にシフトするという考えはなかったです。

普通なら、何かしらやらないと自分を保てないってなるのかもしれないけど、僕はそういうのを考えられる頭がないんで。だから、これと決めたらもうそれしかできないし、ほかのことをやる勇気も根性もないです。僕にとってたった一つの打ち込めるものが純烈であり、それでほかのものを求めたらバチが当たりますよ」

今よりも先が見えない段階でも、メンバー同士でどうするかという話し合いはなかった。「俺、このまま純烈を続けてええんやろうか」と、酒井が家族会議をした話は白川もチラっと聞いたそうだが、山本浩光マネジャーも含め、何があってもユニットとしてそこに在ることに関しては、コンセンサスがとれていた。

◆純烈が存在することで支えられている

ライブができない間、バラエティー番組等に出演しているのも「純烈だから。そこだけはしっかり残しておいて、復活したら全力でやろうなというのが暗黙の了解としてある」(白川)。ただ芸能人としての活動は継続できても、やはりアーティストとしてステージに立てないのは、パズルの一番大きなピースが抜けているようなものだ。

「たとえライブができなくても、純烈としての仕事を継続していかなきゃいけないし、同時にそれは気持ち的に難しいことです。でもそこは、僕よりも一人でやられている歌い手さんの方が大変だと思う。僕らはまだ、グループだから落ち込んだりしても誰かが声をかけてくれるけど、ソロのアーティストさんはそうもいかないだろうし」

純烈が純烈として存在することで、白川も支えられている。相撲の立ち合いのごとく、射るような視線で歌に打ち込みその結果、落ち込んだとしても「もうやめた!」とはならないし、なれない。

それを言うなら、コロナ禍になるよりも前からその繰り返しだった。デビューして10年経っても「いつも物足りないし、今日はすげえできた!ということがまずない」。おそらく白川は、終着点を立ててそこを目指すよりも、ゴールのないマラソンを走ることで自己表現をしていくタイプの歌い手なのだろう。

◆11月にはお客さん1人をいれたライブを行う

11月5日、純烈はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて生配信ライブをおこなう。そこにファンクラブ会員の中から抽選で1人を観客として招待する。無観客からの小さな小さな、されど人類初の月面着陸ばりの大きな思いがこめられた第一歩。

「(無観客の前で歌うのは)慣れないっスよ×2。調子狂いますもん、やっぱり。11月はお客さんが1人選ばれますけど、いるといないとでは違うじゃないですか。1人でもいてくれるのは、僕たちもまたお客さんの前で歌える日がやってきたんだなって思えるし、たった1人のお客さんに救われるかもしれない。

たぶん、いろんなことが見えたり救われたり、こんな感じだったのかと思えるでしょうね。メンバーに見られすぎて目を合わせられないとか、その方にとっては大きなプレッシャーかもしれないけど、そこで自己変革があるかもしれない」

純烈のことだから何かを仕掛けてエンターテインメントに仕上げると思われるが、白川は「リラックスして見てくださいね」と言わんばかりのやさし気な笑顔で、来たるべき一歩に対する高揚をにじませた。たった1人のファンに純烈を独り占めしてもらうという企画も、この状況でなければ浮上しなかったかもしれない。

マイナスをマイナスと考えず、プラスに持っていく力技こそが純烈の真骨頂。この状況下だからこそ見せられるエンターテインメントに期待していただきたい。

◆おまけのプチ情報

それでは最後に、裕ちゃんマニアへ送るプチ情報を。何かと苦悩する日々の中で出逢った新たなる楽しみを聞いたところ、それは「海苔」だった。

「自粛期間が終わって飲み屋で友達になったご夫婦がいて、よくいくというお寿司屋に連れていってもらったんです。そこのご主人から『ちょっと裕さん、おいしい海苔が入ったから持っていきなよ』といただいたのが、今まで食べたことのない、表現できないほどのおいしさだったんですよ。安い海苔だと歯の裏にまとわりついたりするけどパリッとしていて、薄いのに歯応えとか歯切りがよくて。風味とか潮の香りが口の中でぶわっと広がる。

そんなに老舗のものでもないらしく、一枚50円ぐらいなのにご飯やおにぎりとかじゃなく、海苔オンリーで食べるのが一番というほどで。でもお寿司屋さんで卸しているものだから普通には買えないんですって。海苔の名前も書いてないんで、調べようがない。だからそのお店にいかないと食えない。その後、すでに3回いきました」

歌も日々の楽しみも、ノリが大切――そろそろ、おあとがよろしいようで……。

―[ノンフィクション連載「白と黒とハッピー ~純烈物語」]―

【鈴木健.txt】

(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』が発売

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加