「天国か地獄か」がないJ1後半戦。監督解任もなく緊迫感も薄らいでいる

「天国か地獄か」がないJ1後半戦。監督解任もなく緊迫感も薄らいでいる

  • Sportiva
  • 更新日:2020/10/16

三浦淳寛監督の就任を機に、ヴィッセル神戸が復調の気配を漂わせている。

前体制では7試合勝利から見放されていたものの、暫定的にコーチが率いたサガン鳥栖戦を経て、三浦監督が指揮を執り始めた第19節の北海道コンサドーレ札幌戦から3連勝を達成。その後2試合は足踏みを強いられているが、アンドレス・イニエスタを中心とした攻撃スタイルを前面に押し出し、目に見える結果を手にしている。

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勝利に結びつかず苦しい状況が続く清水エスパルス

一方で第20節の横浜・Fマリノス戦では徹底的に相手の弱点を突き、シュート3本で3得点と効率のいい戦いを披露。あるいは直近の大分トリニータ戦では引き分けに終わったが、前節からスタメン全員を入れ替える大胆な用兵を行なうなど、ハードスケジュールを見据えたマネジメント能力も発揮している。

前監督が家庭の事情を理由に退任したことを受けての緊急登板となりながらも、この新人監督の堂に入った采配ぶりは、なかなか見事なものである。

7月上旬に再開した今季のJ1リーグも、気づけば3分の2を消化した。例年であれば優勝争い、残留争いの熱が帯びてくる頃だが、ずば抜けたチームの存在と降格のないレギュレーションのために、緊迫感は薄らいでいるように感じる。

なかでも、天国と地獄を隔てる残留争いの悲壮感は、当然ながら存在しない。

この時期に来れば、残留争いに巻き込まれたチームから監督交代のリリースが出てきてもおかしくないが、今季は神戸のみ。その神戸にしても成績不振が直接的な要因ではないから、任を解かれた監督は今のところひとりもいない。降格の恐怖がないのだから、ナタを振るう必要がないのである。

第22節終了時点で下位3チームに沈むのは、ベガルタ仙台、清水エスパルス、湘南ベルマーレの3チーム。例年であれば降格ゾーンに位置しており、監督交代の噂が出ても不思議はないだろう。

ちなみに昨季のJ1では、神戸、清水、名古屋グランパス、鳥栖、湘南、ジュビロ磐田の6チームで監督交代が行なわれている(神戸と磐田は二度交代。湘南に関しては成績不振が理由ではなかったが)。ほかのシーズンも、その数字はさほど変わらないだろう。

今季の下位3チームのうち、仙台と清水は「新監督」という共通項があるのが興味深い。同じく新監督を招聘した鹿島アントラーズが序盤戦に苦戦したことからも、新たな指揮官を迎えることの難しさがあらためて浮き彫りとなっている。

シーズン中の監督交代には賛否がつきものだ。V字回復するケースもあれば、状況を悪化させる例も少なくない。当然監督が代わればスタイルも変わり、チーム作りはイチからの構築を余儀なくさせる。シーズン中にそれを執り行なうのは、ある種のギャンブルだろう。

チーム作りに求められるのは、確かな信念と、そこに向かう継続性であることは言うまでもない。

たとえば、2007年のサンフレッチェ広島は入れ替え戦で京都サンガに敗れ、J2降格の憂き目を見た。しかし、チームを率いたミハイロ・ペトロヴィッチ監督は翌年も指揮を執り、1年でJ1復帰を成し遂げると、昇格1年目に4位と躍進。その後に続く黄金期の土台を築き上げている。

アンジェ・ポステコグルー監督率いる横浜FMにも、同様のことが当てはまる。就任1年目は残留争いに巻き込まれながらも、1年目に蒔いた種が花を咲かせた2年目に、見事にリーグ制覇を成し遂げている。

ふたつのクラブに共通するのは、成績だけに監督交代の判断を置かなかったこと。チーム作りの正しい方向性と、未来への希望を見出していたことが大きかった。

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10月14日に味の素スタジアムで見た清水からは、残念ながらその両方を感じることはできなかった。FC東京を相手に、清水はいいところなく1−3で敗れている。

ここまでわずか3勝で、失点53はリーグ最多。一方で、攻撃も外国籍選手の個の力に依存する部分が大きく、組織性を大いに欠いている。

今季の清水は、昨季まで横浜FMでコーチを務めていたピーター・クラモフスキー監督を招聘。圧倒的な強さを示した王者同様の攻撃スタイルに舵を切ったはずだった。

しかし、開幕5連敗といきなりつまずくと、第11節からは7連敗を喫し、第18節からはまたしても5連敗。特殊なスタイルを求める以上、ポステコグルー体制1年目の横浜FMのように、戦術浸透には時間がかかると予想されたが、シーズン半ばを過ぎても光明を見出すことができないでいる。

継続性、という部分にも疑問符がつく。

当初は4−3−3の布陣による攻撃スタイルに向かっていたが、失点が減らずに結果が出ない状況が続くなか、9月16日に行なわれた第24節の横浜FM戦から3バックに変更。実質5バックとも言える守備的なシステムへと移行したものの、成果は表れていない。

結果が出ない状況下でもスタイルを貫くか否かは、難しい判断だろう。たとえ降格がなくとも、勝ってファンを喜ばせることが、プロとしての務めであるからだ。もっとも、この方向転換が状況を悪化させている事実も否定できない。キャプテンを務める金子翔太は言う。

「開幕当初から4−3−3でスタートして、そういう形での練習や試合を通して割と固まっていましたが、結果が出ずに5−3−2にトライしているなかで、まだ攻守に形を見いだせていない。いい場面もありますが、意図的に作っているかと言ったらそうではなくて、個人個人のスキルでどうにかしようとするシーンが続いている」

培ってきたものを一度崩し、新たな道を模索するも、構築するには時間が足りない。今の清水からは、そんな混乱が感じられるのだ。

ボール支配の意欲は高く、ポテンシャルを秘めた若手も台頭し、外国籍選手の質も決して低くない。十分に戦える戦力を備えていながら、その方向性がブレてしまったら、チームは前に進むことはできないだろう。

降格がない状況は、一方でクラブとしての決断を難しくする。これは清水だけの問題ではないだろう。何を目的とし、どこにベクトルを向けるのか。成績に左右されないシーズンだからこそ、明確な指針を持つことがクラブの未来を明るく照らすはずだ。

原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

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