作家・中島京子のおすすめ作品6選!直木賞受賞作品から、短編まで

作家・中島京子のおすすめ作品6選!直木賞受賞作品から、短編まで

  • ホンシェルジュ
  • 更新日:2021/11/25
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登場人物たちの姿を生き生きと描き、その巧みな文章構成で読者を引きつける、中島京子。これまで数々の文学賞に輝き、直木賞を受賞した『小さいおうち』は映画化もされ話題になりました。そんな中島京子作品を6作、厳選してご紹介します。

直木賞など多くの文学賞を受賞する作家、中島京子とは?

中島京子は1964年、東京都に生まれます。大学卒業後は出版社に入社し、編集者として働きます。1996年に渡米し、帰国後はフリーライターとして活躍します。

2003年、『FUTON』で小説家デビューを果たすと、その後もクオリティーの高い作品を続々と発表していき、2010年には『小さいおうち』で第143回直木賞を受賞します。2014年、『妻が椎茸だったころ』で第42回泉鏡花文学賞、2015年、『長いお別れ』で第10回中央公論文芸賞・第5回日本医療小説大賞をそれぞれ受賞するなど、数々の文学賞に輝く人気作家となっています。

中島京子の直木賞受賞作!

女中として生きてきた主人公が、奉公先の家で起こった、様々な出来事や戦争の記憶を思い起こしていく長編小説『小さいおうち』。本作で直木賞を受賞したことで、中島京子は一躍、注目の作家となりました。2014年、松たか子主演で映画化もされた話題作です。

小さいおうち (文春文庫)著者中島 京子 出版日2012-12-04

主人公・タキは、小学校卒業以来、女中として人生を歩んできました。タキは、米寿(べいじゅ・88歳)も越えようかという歳になった頃、長年の女中経験を活かし、家事術に関する本を出版します。好評を得たため、次の本を書かないかと編集者から誘いを受けます。懐かしい東京の思い出について、と提案されたタキは、女中として生活してきた日々を思い起こしながら、ペンを走らせることにしました。

物語は昭和初期を舞台に、タキが「終の棲家」と心に決めた、赤い瓦屋根の洋館・平井家で過ごす日々を中心として描かれます。誰もが振り返るほどの美貌を持つ時子奥様、玩具会社で働く旦那様、かわいいぼっちゃんとおしゃれな洋館で過ごす裕福な生活。平井家には、明るく幸せな雰囲気が満ちていました。タキはやがて平井家の秘密を知ることになります。日本には戦争の影が忍び寄っていました。

当時の東京の人々の暮らしが華やかに描かれ、日本が太平洋戦争を迎えようとしている時でも、登場人物たちに危機感はありません。トキの目に映る世界を通して、戦争の状況を把握できていない当時の人々の姿を知ることができます。

美しい奥様に憧れるトキの心情や、自らがしたことへの後悔には、なんともいえない切なさを感じることでしょう。最終章では驚きのストーリーが待っており、構成力の素晴らしさには感激するばかり。ドラマティックな展開に魅了され、読後には絶妙な余韻を残す傑作です。

認知症の父と家族をコミカルに描く、連作短編集

認知症を患った父とその家族の姿を、ユーモアを交えながら描く連作短編集『長いお別れ』。父との最後の10年間を、8編の物語で綴った本作は、中央公論文芸賞と日本医療小説大賞を受賞し、多くの人から絶賛されています。

長いお別れ著者中島 京子 出版日2015-05-27

父、母、娘3人と孫。久しぶりに家族全員が揃った父・昇平の誕生日会ですが、昇平の言動には、どうもおかしいところがあります。実は昇平は、アルツハイマー型認知症と診断されていたのです。

アメリカでは、認知症のことを「ロング・グッドバイ」と呼ぶこともあるそうです。認知症とは、徐々に記憶が薄れていき、別れの時が少しずつ、ゆっくりとやってくるものなのでしょう。昇平を介護する妻・曜子の苦労は計り知れませんが、それでも絶えず明るく、娘たちも巻き込んで右往左往する姿には、コミカルな微笑ましさがあります。病気が進行していくにつれ、読者には悲しみが募りますが、作中の家族たちはいつも父のことを思いながら心穏やかです。

介護問題は、多くの人にとって他人ごとではいられない問題でしょう。本作の家族たちのようなお別れの仕方ができれば幸せだろうと思わずにはいられません。

中島京子が描く、ドタバタ大家族

思いがけず大所帯となってしまった、家族のドタバタを描いた連作短編集『平成大家族』。家族1人ひとりを主人公に、それぞれの視点から大家族の日々を描きます。

平成大家族 (集英社文庫)著者中島 京子 出版日2010-09-17

緋田家の家長・龍太郎は、72歳。歯科医として働いていましたが、2年前に引退し、老後の生活を満喫しようと考えています。彼は、妻の春子と、春子の母親・タケ、引きこもりの長男・克郎と暮らしていました。ある日突然、事業に失敗し破産した長女一家が舞い戻ってきます。さらには次女までもが離婚して戻ってきたため、緋田家は4世代8人の大家族となります。

次女・友恵は離婚後、妊娠していることが判明します。長女・逸子の息子であるさとるは、私立中学から公立中学への転校でトラブに。トキはうっすらボケ始め、龍太郎の妻・春子はこんな生活に疲れ果て……。問題続出一家ですが、その姿がとてもコミカルに描かれており、笑いがこみ上げてくることでしょう。

なんだかんだありながらも、家族の姿はどこか幸せそうに見え、明るい希望が感じられます。ほんわかと温かい余韻の残る1冊です。

15年振りにコタツを捨てる女性?

「へやのなか」で起こる人間ドラマを描く短編集『さようなら、コタツ』。7編の物語が収録された本作には、様々なタイプの部屋が登場し、それぞれの部屋には魅力的な住人たちが存在します。どの物語も味わい深く、独特の世界観に浸れる作品です。

さようなら、コタツ (集英社文庫)著者中島 京子 出版日

表題作「さようなら、コタツ」の主人公・由紀子は、15年間使い続けたコタツを捨てることにします。自分の誕生日に男を部屋に招くことになったためですが、恋に臆病になっている36歳の由紀子は、15年ぶりのことにあたふたするばかり。

その他、妻に出て行かれたイラストレーターの心情を綴る「インタビュー」、厳しさに耐えられず、新入りが逃げ出した相撲部屋の様子を描く「八十畳」、結婚を控え、神経質になっている男が元彼女と再会する「陶器の靴の片割れ」など、様々なタイプの主人公の日常が鮮やかに切り取られています。

心理描写が巧みなので、どの話にも感情移入して読み進めることができます。悲しくなったり切なくなったり、嬉しくなったり優しい気持ちになったり……いろいろな感情を味わうことができるでしょう。読後は、心地よい気分になるはずです。

現代に鮮やかに蘇る明治時代の恋

横浜で中学校の教師を勤める久保耕平は郷土部の顧問をしていますが、部員は4名しかおらず実質は赤堀というやる気のない男子生徒1人だけです。休日に実家に帰省した久保は、彼のひいおじいさんが保管していた書類の中から「イトウ」という人物の手記を見つけます。

イトウとは伊藤鶴吉という明治時代の日本の通訳の草分け的存在であることがわかり、久保はイトウを郷土部の研究材料にしようと思うのですが、手記は途中で終わっていました。そこで久保はイトウの孫娘の娘にあたる田中シゲルという女性に会いに行きます。シゲルは男性向け漫画の原作者をしており、シゲルの漫画のファンである赤堀はイトウの研究に乗り気になっていきます。

しかし、シゲルの母はシゲルが物心つかないうちに父と自分を捨てて家を飛び出しており、心優しい義母に育てられたシゲルは実母の存在を封印するように成長したため、最初は久保の話に全く興味を示しませんでした。ところが久保から渡されたイトウの手記を読むうち、シゲルはイトウという人物に強くひきつけられていくのです。

イトウの恋 (講談社文庫)著者中島 京子 出版日2008-03-14

手記はイトウが自らの生い立ちを回想するところから書かれていました。イトウは武士であった父を早くに亡くし、母はイトウを養育するために武士の妻の誇りを捨て横浜の商家で女中となり、辛い現実を忘れるため毎晩酒浸りになってしまいます。

そんな境遇の中イトウは横浜に来る欧米人から独学で英語を学び、成長して通訳となるのです。しかし欧米人の日本を露骨に見下す態度に不快感を覚えており、ハリーズという植物学者に雇われて植物採集の旅をしていた際、彼のあまりにも傲慢な態度に嫌気がさし途中で横浜に戻ってきてしまいます。そして次の仕事として得たのが、イギリス人の女性旅行家I・Bの通訳として彼女の東北を巡る旅に同行することでした。

I・Bは小柄ですが体格が良く、年齢はイトウの母に近い年頃でしたが、他の欧米人と違い日本を愛し日本人に敬意を払うI・Bと接しているうち、いつしかイトウの心に恋心が芽生えます。しかしI・Bはイギリスに帰らねばならず、そこで手記は途切れていました。イトウの恋の結末を知るため、シゲルは自分を捨てた実母と連絡を取ることを決意するのです。

本作は実在の人物にヒントを得て描かれたフィクションですが、本当にこんな事があったのではないかと思われるような作品です。現代ではすでに失われた日本の風景の中を旅するイトウとI・Bは、現代を生きる久保やシゲルよりもはるかに生気に満ち鮮やかに描かれ、読む者の心を美しい世界へと引き込んでくれます。

中島京子のハイセンスなタイトルに、ご注目

なんとも奇妙で愛おしい、独特の世界観で描かれた、5編の物語が収録された短編集『妻が椎茸だったころ』。中島京子のセンスが光るこのタイトルは、2013年、優れた書籍タイトルに贈られる「日本タイトルだけ大賞」を受賞し、泉鏡花文学賞にも輝いた作品です。

妻が椎茸だったころ著者中島 京子 出版日2013-11-22

表題作「妻が椎茸だったころ」の主人公・泰平は、妻を亡くします。泰平は、料理が好きだった妻が遺していたレシピノートを発見します。そこには「私は私が椎茸だった頃に戻りたい」と書いてあるのです。妻はかつて椎茸だったのでしょうか……。

「ハクビシンを飼う」では、叔母の遺品整理をしていると、叔母の甥だという男性が訪ねてきます。甥は叔母の意外な過去を語り始め……。

作品全体に不思議な空気が流れ、ほろりとさせられたり怖くなったり、じんわりと温かい気分になったりする短編集です。夢なのか現実なのか、美しい文章で表現される情景にはうっとりさせられることでしょう。

中島京子が作り出す魅力的な世界に迷い込んでみてはいかがでしょうか。

中島京子のおすすめ作品を6つご紹介しました。どの作品も読み始めたら、作品の世界に引き込まれる傑作ばかりです。ぜひ読んでみてくださいね。

横山修

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