グランドスラム王座への道~第5回 逆境を乗り越えイギリスの英雄となったアンディ・マレー

グランドスラム王座への道~第5回 逆境を乗り越えイギリスの英雄となったアンディ・マレー

  • WOWOWテニスワールド
  • 更新日:2022/06/23
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このシリーズではこれまでにグランドスラム制覇を遂げたチャンピオンたちや、これから優勝を目指す選手たちをランダムに取り上げ、それぞれの「王座への道」を紹介していきたい。今回ご紹介するのは、グランドスラムを3度制覇した元世界王者のアンディ・マレー(イギリス)だ。

1987年5月15日生まれ、現在35歳のマレーは、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に並ぶビッグ4の一人だ。18歳だった2005年にプロへ転向し、同年にワイルドカード(主催者推薦枠)で「ウィンブルドン」に初出場。当時世界ランキング312位のマレーは、世界13位のラデク・ステパネク(チェコ)を下すなど3回戦まで駒を進め、幸先良いグランドスラムデビューを飾った。しかし、そこからグランドスラム王座に至るまでの道は険しく、幾度もほかのビッグ4に阻まれてきた。

初めてグランドスラム決勝にたどり着いたのは、2008年の「全米オープン」。決勝の相手は当時2連勝中と相性の良かったフェデラーだったが、結果は2-6、5-7、2-6の完敗。2年後の「全豪オープン」決勝でリベンジのチャンスが訪れるが、またしても1セットも取れずに敗れた。試合後のセレモニーでマレーは、目に涙を浮かべ声を震わせながら「ロジャーのように泣くことはできるけど、彼のようにプレーできないのは残念だ」と語っていた姿が印象深い。

涙を呑んだ2010年大会の翌年、マレーは再び「全豪オープン」の決勝へと戻ってきた。ここで立ちはだかったのが当時世界3位のジョコビッチで、マレーは3度目もストレートで敗れ、悲願のタイトル奪取は叶わなかった。また、その年の「全仏オープン」「ウィンブルドン」「全米オープン」ではいずれも準決勝でナダルに敗れている。

マレーは2012年、8度のグランドスラム優勝を誇る元世界王者のイワン・レンドル(アメリカ)をコーチに迎える。この年に初めて「ウィンブルドン」の決勝の舞台に立ち、“芝の王者”ことフェデラーと対戦。約1690万人のイギリス人がテレビで見届けたこの試合で、マレーはグランドスラムの決勝で初めてセットを先取したが、逆転負けを喫した。

国民の期待に応えられず批判を浴びることもあったマレーだが、それらを全て受け止め日々の原動力に変えていった。すると努力が結果に結びつき始めた。「ウィンブルドン」決勝での敗戦から1ヶ月後、その時と同じコートで行われた「ロンドンオリンピック」の決勝でフェデラーに6-2、6-1、6-4でリベンジを果たして、金メダルを獲得。それから2ヶ月後には「全米オープン」決勝で前回王者のジョコビッチと対戦。オープン化以降最長となった4時間54分の決勝戦を、7-6(10)、7-5、2-6、3-6、6-2で制したのはマレーだった。マレーはフレッド・ペリー(イギリス)以来76年ぶりとなるイギリス人のグランドスラム王者に輝き、歴史に名を刻んだ。

そして翌2013年の「ウィンブルドン」では、決勝でジョコビッチを6-4、7-5、6-4で下し悲願の優勝。フェデラー、ナダル、ジョコビッチ以外の選手が「ウィンブルドン」で優勝したのは実に11年ぶりのことで、イギリス中が歓喜に沸いた瞬間だった。マレーは試合後のオンコートインタビューで「前回大会はキャリアの中で最も辛い瞬間の一つだったから、今日勝つことができて良かった。信じられないほどタフな試合や長時間の試合がたくさんあった。どうやって最後の試合を勝ち抜いたのか…信じられないね。ついに優勝できて嬉しい」と語り、喜びを噛み締めた。

グランドスラムでも勝てるようになったマレーが黄金期を迎えたのは2016年。ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)にストレートで勝利し3年ぶりに「ウィンブルドン」を制すと、「リオデジャネイロオリンピック」でシングルス史上初となるオリンピック連覇を達成。自身最多の9大会優勝を果たし、11月には初めて世界1位の座を手にした。

しかし、充実した時間は長くは続かなかった。2017年に股関節唇損傷を負い、世界王者であるものの歩くことすらままならない状態まで悪化。「ウィンブルドン」連覇に失敗した後、怪我によりシーズンを終える。翌年1月には手術に踏み切り、6月に復帰を果たすが、痛みが完全に消えることはなく体も心も限界を迎えていた。

現役続行は不可能かというところまで追い込まれたマレーは、2019年に「全豪オープン」の記者会見で涙の引退宣言。それでも「ウィンブルドン」のコートに戻りたいという想いが消えることはなく、直後に金属の人工関節を挿入する手術を受け、懸命にリハビリに励んだ。6月にダブルスとして出場したツアー復帰戦で優勝すると、目標に掲げていた「ウィンブルドン」のコートにも立った。

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2020年と2021年はツアーに参加するも決勝の舞台からは遠ざかっていた。だが今年3月に黄金期をともにしたコーチのレンドルと再びタッグを組むと、「ATP250 シュトゥットガルト」で準優勝。グラスコートでおよそ6年ぶりの決勝進出を果たした。世界ランキングでも約4年ぶりにトップ50に返り咲くなど、調子が上がってきている。

「コートでの最高の思い出はグラスシーズンに集中している」と語るマレーが、手術やリハビリを乗り越えコートに戻ってきたのは、もう一度「ウィンブルドン」で輝くためだろう。体の状態や年齢を踏まえると、「ウィンブルドン」で彼を見られるのは今年が最後になってしまってもおかしくない。現在は腹部の怪我を抱えているようだが、これまで幾度も試練を乗り越えてきたマレーならかつての強さをまた見せてくれるに違いない。

(WOWOWテニスワールド編集部)

(Getty Images)

WOWOWテニスワールド編集部

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