ジャルジャル福徳、又吉と連載並び「比べるものになったらあかん」もがいて見つけた自分流の文章

ジャルジャル福徳、又吉と連載並び「比べるものになったらあかん」もがいて見つけた自分流の文章

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/11/22
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●改稿を重ねて4年かけて完成「全然違うストーリーに」

ジャルジャル、13回目で悲願のKOC優勝「諦めず挑み続けてよかった」

今年9月に一般女性と結婚、同月に『キングオブコント2020』で悲願の初優勝を成し遂げ、幸せなニュースが続いているお笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介。“日本一のコント師”としてさらなる活躍に期待が集まる中、11月11日に初の書き下ろし小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を刊行し、小説家デビューを果たした。本人にインタビューし、執筆の経緯や制作の裏話、また、『キングオブコント』優勝後の変化など、話を聞いた。

同著は、冴えない毎日を送っている大学2年生の主人公が、ある日、大教室で学生の輪を嫌うように席を立つ凜とした女子に出会い、次第に彼女に惹かれていく様を描いた恋愛小説。すべてが福徳の実体験に基づいているかのように情景や心情がリアルで、物語の中に引き込まれる。

吉本興業が刊行していた情報誌『マンスリーよしもと』で連載「恋愛文」を持っていた福徳。その文章を見た人からの「小説を書いてみたらいいのでは?」という声を人づてに聞き、「書いてみよう」と思ったのが小説執筆のはじまり。書き始めたのは約4年前で、「3カ月くらいで書き終え、そこから改稿を繰り返し、2年くらい経って『何のためにしているんやろう?』となりかけたときに出版につながり、そこからプロの編集の方を交えて2年間かけて仕上げました」と経緯を説明する。

3カ月で一度書き終えるも、「原型は5%くらいしか残っていない」とのこと。「最初は、冴えない大学生が気になる女の子にアタックするかしないか、という話でしたが、4年間改稿を重ねていたら、全然違うストーリーに。1か所変えると、どんどん変わっていきました」

大きくストーリーが変わったのは、「ここはなくてもいいと思うのですが……」という編集担当者の提案で全体の半分となる約6万字をカットしてから。「そこから新たに展開をつけたら、話がガラッと変わった感じがしました。ヒロインの女の子との待ち合わせのところで違った設定に変えて書き進めたら、あっという間に6万字復活しました」と、設定を変えてからアイデアがどんどん浮かんだようだ。

どれも福徳の実体験ではないかと思うくらい人と人とのやりとりがリアルに描かれているが、実体験の部分はないという。「登場人物の言葉も、僕が実際にかけられた言葉はひとつもなく、この状況でこの登場人物を救える言葉はなんやろうと考えた言葉です」

主人公との共通点も「大学をそんなに満喫できていなかったことくらい」で、頭の中で0から作り上げたキャラクター。「自分なりに主人公のキャラを決め、この子はどういう女の子を好きになるのか考えたら、ああいう女の子を好きになるなと。この冴えない大学生はどこでバイトをしているか? 銭湯でバイトしているのかな。その銭湯にはどんな子がいるかな? という感じで主人公を軸に考えていきました」と明かす。

●「ウルフルズさんでいこう!」直球的でオリジナルな言葉を意識

文章のスタイルは、『マンスリーよしもと』での連載時に見出していった。福徳の連載は、いまや芥川賞作家として注目されるピース・又吉直樹の連載の対向ページに掲載されることが多く、当時から又吉の才能をひしひしと感じたという。

「圧倒的な才能を見せられ、これは『マンスリーよしもと』のレベルじゃないやろって。見開きで僕が左で、右が又吉さん。それが嫌で嫌で。僕が1ページで、又吉さんが1ページの半分のときもあって、又吉さんは短い文章なのに美しく、僕は1ページとっているのに、のっぺらぼうみたいな文章で、どうにかしないといけないなと。比べるものになったらあかん。全然違うものにせなあかんという気持ちがメラメラ湧きました」

そして、又吉とは違った文章を目指すことに。「又吉さんの文章はあまりにも美しいので、僕は文章で人を惹きつけようなんて思わんとこうと。単純なまっすぐな言葉で伝えていきたいなと。表現としては間違っているかもしれせんが、ウルフルズさんみたいにいこうと思ったんです。『ガッツだぜ パワフル魂……』。直球的ですが、『パワフル魂』という言葉はないですし、『バカサバイバー』という言葉もない。単純だけど見たことない言葉を使われている。僕もストレートに。ウルフルズさんでいこう! と思いました」

本作に書かれている言葉で、自身がウルフルズ流だと感じているものは、タイトルにも用いられている「今日の空が一番好き」。「『今日の空が一番好き』ってあまりにも単純で、小学1年生でもわかる言葉。思いついたときに、これはさすがにいろんな人が言ってそうだなと思ってネットで検索したら誰も言っていなくて、こんな単純な言葉の組み合わせなのに誰も言ってないんだと思って、これええわ! と。ちょっとウルフルズさんに近づけたかもって思いました」とうれしそうに話す。

さらに、「今日の空が一番好き」という言葉がどう生まれたのか聞くと、「単純に、主人公が幼少期に感銘を受ける言葉ってなんやろうと考えたときに思い浮かびました。子供なので天気にまつわることやろうし、単純な言葉やろうし」と明かした。

執筆にはスマートフォンとタブレットを使用。「電車の中とかはスマホで、喫茶店で書くときはタブレットで。好きな子にメールしてご飯を誘うくらいの感覚。メール感覚で書きました」

話すよりも書くほうが自分自身をさらけ出せるという。「僕はエピソードトークをするのが苦手で、芸人がたくさんいる状況で、これ言ったほうがいいとか、これ言ったらあかんとか、そういう空気を読む力がなく、書くほうが1人の世界で自由に書けるので楽しいなと感じますし、書いているときは自分をさらけ出すことができます」

書くほうが得意というのは昔から。「作文や、中学のときにあった、その日のことを書く生活帳などは、ふざけられたんです。しゃべるときはつっかえたりするけど、文字にするとどんどん書くことができて、さらけ出せるなという気持ちがありました」と明かす。

●芸人と小説家の二刀流「お互いがフリになっていい」

芸人だけど話すのは苦手、だけどネタを作ることは大好き。「芸人になったきっかけは、まぎれもなくネタを作るのが好きやったからです。ネタをいろんな人に見てもらいたいから芸人になりました。そこは1回もぶれてないです」と胸を張る。

いまではトーク中心の番組にはあまり出演せず、ネタにすべてを注いでいるジャルジャル。「以前は、苦手だからといってトーク番組に出ないのは逃げているだけなので、成長してうまくなるかもしれないと思って頑張って出ていました。だけど、一向にトークがうまくならないし、一向に空気読まれへんから、向いてないとはっきりわかって、ジャルジャルはネタだけでいくことに。初心に返って、俺らはネタしたいからこの世界に入ったやん! って」。そう腹をくくったのは5年前くらい前とのこと。

ネタだけで勝負すると覚悟を決めた後、2018年2月からYouTubeでコント動画を毎日投稿。コント師としての力を存分に発揮し、人気コンテンツとなっている。その実力は周知の事実だが、『キングオブコント』でキングの称号を手に入れ、実力を改めて証明。この優勝により、世間の目が少し変わったと感じているという。

「僕らジャルジャルは尖っていて、変なコントをしているというイメージがありましたが、『キングオブコント』に1年目から出続け、13回目で優勝。ふたを開けたら誰よりも尖ってなかったんちゃうかって。本当に尖っていたら、一度落ちたらそれ以降受けないだろうし、ボロボロになりながら挑戦し続けて、世間の目がちょっとだけ優しくなった気がします。こいつらほんまにコント好きなんやな、尖ってないんやなって、世間の目が変わった気がします」

このたび小説家としての顔も加わった福徳。「こんな真面目な本を書いたやつがコントでふざけてたら、それはフリになっておもろいと思うし、コント中にふざけまくっているやつが、こんな真面目な本を書いているとなると、それもフリになる。お互いがフリになっていいなと思います」と二刀流のメリットを語る。

小説執筆とコント作りに関しても、お互いに刺激があるのだろうと思ったが、「それはあんまり感じてない」という。「ネタはジャルジャルとして2人で作りますし、そのときはジャルジャル脳。小説を書くときは福徳秀介の脳。全然違うと思っています」

福徳にとって大きな人生の転機となるであろう2020年。思い描く将来像を尋ねると、「芸人としてはコントをやり続けていくというのが最大の目標です」とブレない。小説に関しては何か野望があるのか。「何かを狙うとかそんなことはおこがましいです。ただ、自分の本が誰かの思い出になる一冊になってくれたらうれしいなと願っています」と答えた。

早くも小説第2弾を期待してしまうが、まだ白紙だという。「書けるであればまた書きたいですけど、アマチュア作家なので、まぎれもなく時間をかけなあかんと思っています。改稿を重ねて丁寧に丁寧に時間をかけて仕上げていくタイプ。今回4年で書きましたけど、下手したら次は6年くらいかかるんちゃうかなという気がしています」と笑った。コント師としての福徳の活躍を追いかけつつ、気長に次回作を待ちたい。

■福徳秀介
1983年10月5日生まれ、兵庫県出身。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ・ジャルジャルを結成。テレビ、ラジオ、舞台、YouTubeなどで活躍中。『キングオブコント』に第1回から出場し、13回目の挑戦となった2020年大会で悲願の優勝を達成した。一方で、絵本『まくらのまーくん』は第14回タリーズブックアワード大賞を受賞するなど、著作活動も。近著に絵本『なかよしっぱな』がある。そして、11月11日に初の書き下ろし小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を刊行した。

酒井青子

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