議員のプライベートはどこまで公開すべき? 「住所公開を懸念して立候補ためらう」という声も

議員のプライベートはどこまで公開すべき? 「住所公開を懸念して立候補ためらう」という声も

  • AERA dot.
  • 更新日:2022/11/25
No image

過去には付きまといや宅配すしを送り付けられるなどの被害にあった議員もいるという。住所の公開が本当に必要なのか、議論が必要だ(photo 写真映像部・上田泰世)

未だに多くの地域で公開が義務づけられている、議員の連絡先住所公開。ストーカー被害の経験がある女性議員は「大きなリスクがある」と話す。議員の情報公開について専門家に聞いた。AERA 2022年11月28日号の記事を紹介する。

【図表】東京都での議員の住所公開状況はこちら*  *  *

公職選挙法では、選挙に当選して議員となるものについて「住所および氏名を告示しなければならない」と定めている。総務省選挙課によると、「誰が当選したのか、個人を明確にするため」だという。ただ、告示は役所庁舎の掲示板への掲出や公報への記載によって行われ、ホームページでの公開は法律で定められた要件ではない。日本大学の林紀行教授(地方政治)は、ホームページへ掲載する必然性は低いと指摘する。

「ホームページへの住所掲載は、情報公開の必要性が広く叫ばれるようになり、さらに議会のホームページを充実させようという流れのなかで広まりました。ただ、本当に必要なのか、そこまで公にすべきなのかという議論が置き去りになっています。確かに地方議員には居住要件がありますし、どの地区に住んでいるかが投票行動に影響することもあります。それでも、町名や字までの公開で十分でしょう」

■80万円の防犯カメラ

女性の政治参画を推進する「WOMAN SHIFT(ウーマン シフト)」代表で、台東区議会議員の本目(ほんめ)さよさんもこう指摘する。

「住所を公開されることを懸念して立候補をためらうという声はよく聞かれます。80万円ほどかけて防犯カメラを設置したという議員もいました。当選すると自宅住所が告示されますが、それでも指先一つでそれを見られるホームページで公開されるとなると、レベルが違ってきます。女性を含めた幅広い層の政治参画を促すためにも、改善が必要だと思っています」

一方、自宅住所の公開が必要だとする声が全くないわけではない。引退した男性の元市議は、「こんなことを言うと考えが古いと思われるんだろうけど」と前置きしつつ、こう話した。

「我々は地元に根を張り、地元の声を代弁するのが仕事です。ここに住んでいる議員だと地域の人にぜひ知ってほしいし、住所を公開しているから相談に来る人もいた。公人なのに住所を知られたくないとは、そんなことでいいのかと思いますね」

ただ、議員にアプローチする方法はさまざまある。最近ではSNSを運用している議員も多い。先出の林教授は言う。

「市民が議員へアクセスする方法は担保されるべきですが、必ずしも自宅の住所である必要はありません。公開したい人はそうすればいいし、選択できるのが本来のあり方でしょう」

■かつては立候補時にも

情報公開と個人情報保護のバランスは、ここ数年議論が続いてきた。かつては立候補時点でも自宅住所が告示されており、それがそのままホームページに掲載される例も少なくなかったが、本目さんらWOMAN SHIFTからの働きかけもあって、総務省は2020年7月、立候補者の住所の告示を「市区町村または字まで」とする通知を都道府県選管に出した。当選後の告示内容を変更するには法改正が必要だというが、自治体の対応も変わりつつある。東京都議会の場合、かつては議会事務局ホームページに事務所などの連絡先住所を掲載するのとは別に、選挙管理委員会が当選人の住所を含む告示内容をそのままインターネット上で公開していた。ただ、現在は、14日間は住所の全部を掲載し、その後は町・字までにとどめる方式に運用を改めたという。

「選挙人が当選人の被選挙権の有無を確認し、異議を申し出る権利を保障するため、異議の申し出期間に当たる『決定等の日から14日間』は住所の全部を掲載しますが、それを超えた日以降は住所の一部を掲載することとしています。都民への情報公開の重要性と、個人情報保護の要請とのバランスを図るためです」(東京都選挙管理委員会)

また、大阪府四條畷(しじょうなわて)市では議会事務局のホームページに議員の自宅住所の掲載を続けてきたが、今年、疑問視する投書があった。現在対応の変更を検討しているという。

自宅住所を公開している自治体でも、「慣例として続いてきた」「変更したいという申し出がなかった」というケースがほとんどのようだ。地方議員のなり手不足や女性の政治参画の遅れが全国的な大きな課題として叫ばれるなか、議員の役割とは何なのか、政治家のプライベートはどこまで公にすべきなのか。幅広い議論が必要だろう。(編集部・川口穣)

※AERA 2022年11月28日号より抜粋

川口穣

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加