保育料、給食費無料の条件に「マイナカード取得」 岡山・備前

保育料、給食費無料の条件に「マイナカード取得」 岡山・備前

  • 毎日新聞
  • 更新日:2023/01/25
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岡山県備前市から配布された保育料などについての通知=大西岳彦撮影

無料だった保育料や給食費が、マイナンバーカードがないことを理由に有料になったら――。岡山県備前市は2023年度から、市内の保育園・こども園の保育料や小中学校の給食費などの無償化に、世帯全員分のマイナンバーカード取得を条件とする。カードの普及促進が目的。商品券などの特典を付ける事例はあるが、行政サービスと引き換えにするのは異例だ。保護者らは「カードの取得は任意で、教育の機会均等に反する差別だ」と反発し、識者も「市の勇み足だ」と問題視している。

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市は16年度に1、2歳児の保育料を無償化し、17年度からは0歳児にも対象を広げた。22年度には小中学校の給食費、工作や理科に使う学用品の一部も無償とした。少子化対策として移住者を呼び込む目玉施策でもある。

ところが市教委は22年12月16日付で、保育園や小中学校を通じ「デジタル社会の構築に必要なツールであり、カードを全市民が取得することを目指している」として、23年度以降の無償化適用は世帯全員分のカード取得を条件とすることを通知した。取得しない世帯は保育料や給食費が有料になる。

反対の署名運動

市は同日、市議会厚生文教委員会に報告。出席した委員によると、複数の委員から「(カード普及と無償化は)目的が違う」「無償化という優れた制度が台無しになる」などの反対意見が出たという。

これを受け、地元の市民団体「びぜん子育てほっとスペース」は同22日、吉村武司市長と松畑熙一(きいち)教育長に対し、今回の方針の撤回を求める文書を送った。同団体の共同代表で元小学校教諭の松下香(かおり)さん(69)は「小中学校の校長らからも『カード取得を目的化するのはおかしい』との声が上がっている」と話す。松下さんらは反対の署名運動を進めている。

市内の保育料は所得や利用時間で異なるが、最大で月4万円。給食費は23年1月現在、小学校で1食当たり295円、中学校は335円かかる。市立小とこども園に長男と長女を通わせる吉本陽子さん(46)は東京電力福島第1原発事故を機に13年、東京を離れた。備前市に縁はなかったが、「都会過ぎず、田舎過ぎでもない」ところが気に入って移住した。市の方針について「脅迫状のようなものだ。家計を考え、やむを得ずカード取得を選ぶこともあるだろう」と憤る。

識者「市の勇み足」

政府は全国民へのカード交付を目標に掲げ、デジタル田園都市国家構想交付金の一部をカード交付率に応じて各自治体に分配する。総務省によると、全国の交付率は57・1%(22年12月末時点)。備前市は67・6%(同)で、県内トップを走る。一方で個人情報流出への懸念や国による市民の監視強化につながるとして慎重な見方も根強い。松下さんは「交付金も(方針変更の)背景にあるのではないか」といぶかしがる。

教育評論家の尾木直樹さんは市によるカード普及自体には理解を示しながら「取得していないと(行政サービスを)受けられないのは、明らかに行き過ぎだ。市は勇み足を認めて、撤回すべきだ」と批判する。総務省マイナンバー制度支援室の担当者は、カードの交付を行政サービス受給の条件とする施策について「他のサービスを止めてまでカードを配布しろとは言っていない」としつつ、備前市の取り組みについては「市の考えや事情もあると思うので、(評価を)申し上げることはできない」としている。

市「他のサービスでも」

市教委教育振興部の担当者は「取得率100%を目指す市の施策の一環。デジタル社会構築のためには必要」と説明。市広聴広報課は「保育料などに特化したわけではなく、ほかの行政サービスでも進めていく予定」と理解を求めている。【堤浩一郎、平本泰章】

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