退職金2000万円の“受け取り方”、間違えると手取りで135万円損することも 制度改正に備えて対策も必要

退職金2000万円の“受け取り方”、間違えると手取りで135万円損することも 制度改正に備えて対策も必要

  • マネーポストWEB
  • 更新日:2023/09/19
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退職金の“受け取り方”には注意が必要(イメージ)

定年を迎えた時に、まず選択を迫られるのが退職金の受け取り方だ。一括払いでもらう「一時金方式」と何年かにわたって分割で受け取る「年金方式」が一般的だが、選択を誤ると大損する可能性がある。

【図解】退職金は受け取り方でこんなに変わる 「一括」と「年金方式」を比較

ファイナンシャルプランナーの有田美津子氏が語る。

「それぞれ控除に違いがあり、一時金方式は受け取り時に勤続年数に応じた『退職所得控除』を受けられ、年金方式の場合は『公的年金等控除』を受けることができます。現役時代の働き方や退職金の額、老後の過ごし方といった違いによって受けられる恩恵も異なってくる。受け取り方次第では、100万円以上も損得が違ってきます」(以下、「 」内は有田氏)

掲載の図は、38年勤続した会社を60歳で定年退職、その後は64歳まで年収200万で再雇用で働いた人が、退職金2000万円を一時金方式でもらったケースと、年金方式(利率1%)で20年間受け取った場合を比較したものだ。

後者のほうが受け取り総額が額面上は約340万円増えるが、手取りを比較すると約135万円の損となっている。

「退職金を年金方式で受け取ると、公的年金と合わせた収入が増えていくので、天引きされる税金や社会保険料がアップしてしまいます。

一時金方式の控除金額は、勤続年数20年までは『40万円×勤続年数』、それ以降は『800万円+70万円×(勤続年数-20年)』と長く勤めた人ほど大きくなるうえに、一括でもらうためその後の年収も低く抑えられ、天引きが少なくなります」

もちろん、勤続年数が短い人や年利が高い企業の場合は、年金方式のほうが得するケースもある。

「ただし、現在の企業年金の年利は1%台のところが多く、2%に達している企業は少ない。この利率を低いと感じるのであれば、一括で受け取って自分で運用する選択肢もあります」

制度改悪に気を付けろ

とはいえ、注意が必要なのが、岸田政権が人材の流動化を促進するという名目で、「退職金課税の見直し」を検討している点だ。

「時期や内容は未定ですが、一時金で受け取る際の『勤続20年以降は1年勤めるごとに控除額が70万円増える』という現制度から、控除の増額が1年につき40万円に削られる可能性があります」

仮にそうした変更が行なわれた場合、別掲図のケースだとこれまでは退職金2000万円全額が控除されていたが、「勤続38年×40万円」なら1520万円までの控除となり、480万円の2分の1が課税対象になる。所得税や住民税などの税金が約38万5000円増える計算だ。

一時金方式の制度に“改悪”が待ち受ける可能性があるなか、どう対策するのがよいか。

「変更がなされても受け取る退職金の額が控除の枠に収まっていれば気にする必要はありません。ただ、もし枠を超えてしまうようなら、全額控除の範囲まで一時金方式で受け取り、残りを年金方式で受け取る“併用”という選択肢もあります。ただし、金額の計算が複雑になるため、可能であればFPなどお金の専門家に相談したうえで選択するのが適当です」

まずは自分がいつ、どれくらいの退職金を受け取れるかを調べることから始めたい。

※週刊ポスト2023年9月29日号

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