サッカー日本代表 攻めの姿勢で生まれた化学反応で手にした勝利

サッカー日本代表 攻めの姿勢で生まれた化学反応で手にした勝利

  • テレビ東京スポーツ
  • 更新日:2021/10/14
No image

浅野拓磨、田中碧、吉田麻也 Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

サッカー日本代表が攻めの姿勢と新たな化学反応を得て、2022年ワールドカップ(W杯)の出場権獲得に望みをつないだ。

10月12日に埼玉で行われたアジア最終予選第4戦でグループB首位に立っていたオーストラリアに、日本は途中出場したFW浅野拓磨選手(ボーフム)の終盤のシュートで相手のオウンゴールを誘って2-1で勝利。無条件で予選突破となるグループ2位以内確保へ、軌道修正につながる大きな勝利を手にした。

3試合で1勝2敗と結果が出ず、グループ上位2チームに勝点6差をつけられていた日本。巻き返すには勝つしかない、重圧のかかる一戦を攻めの姿勢で制した。

前半8分にMF南野拓実選手(リバプール)が左で仕掛けて中央へパスを送ると、最終予選初出場初先発のMF田中碧選手(デュッセルドルフ)がゴール前に駆け上がり、ゴール左へ蹴り込んで先制に成功した。

その後、日本はボールを保持しながらも攻め急がず、相手に攻め込まれる場面を作られても集中力のある守備で対応して試合を進めたが、後半20分過ぎにDF長友佑都選手(F東京)が攻め上がった後のスペースを使われたのをきっかけに、ゴール正面でFKを与えてしまう。これを直接決められて後半23分に追いつかれた。

しかし、後半41分、浅野選手がペナルティエリア左からゴールを狙うと、これが相手のオウンゴールを誘った。試合終了直前の決勝点で日本が試合を制し、オーストラリアは勝点9のまま2位へ後退し、日本との勝点差は3に縮まった。

日本が2018年ロシア大会への出場を決めた2017年8月のオーストラリア戦でもゴールを挙げていた浅野選手は、「チャンスはあると思っていたし、自分が試合を決める気持ちで試合に入った」と話し、「ホッとしたというか、嬉しいというか。爆発し過ぎてジャガーポーズをすることも忘れていた」と笑った。

勝利の立役者は、ゴール直後にはベンチ前でチームメイトからの手荒い祝福でもみくちゃになった。重要な試合で勝つときにはベンチスタートで活躍する選手が現れる、と言っていたのはDF吉田麻也選手(サンプドリア)だったが、まさにその通りの展開になった。

ラッキーボーイの存在

チームに勝利を呼び込むラッキーボーイは、ベンチスタートの選手ばかりではない。この試合で言えば、田中選手もその一人だ。

これまで森保一監督はメンバーもフォーメーションもほとんど変えずに戦ってきていたが、この試合で指揮官は7日(日本時間8日)のサウジアラビア戦先発から3人を入れ替え、フォーメーションも馴染みの深い4-2-3-1から4-3-3へ変更した。そこで出場機会を得た一人が田中選手だった。

東京オリンピックでも全6試合に出場して日本の4強入りに大きく貢献していた田中選手は、2019年12月の東アジア4か国によるE-1選手権以来の先発。

同じく、最終予選初先発のMF守田英正選手(サンタクララ)、累積警告での出場停止から復帰した右ウィングのMF伊東純也選手(ヘンク)とともに、ここ数試合、日本に欠けていた積極的で果敢なプレーを披露。特に田中選手は、最終ラインからゴール前まで広いエリアでのハードワークが光った。

田中選手と守田選手は、中盤の底を務めたMF遠藤航選手(シュツットガルト)と中盤でオーストラリアにプレッシャーをかけて相手の攻撃の芽を摘み、素早く切り替えて自分たちの攻撃につなげた。彼らからパスを受けた伊東選手やDF酒井宏樹選手(浦和)が序盤から右サイドで仕掛けて攻撃のリズムを作った。

No image

大迫勇也 Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images

その一方で、この日は最終ラインから左サイド高い位置へ、絶妙なタイミングで顔を出したDF長友佑都選手(F東京)へのロングフィードも効果的に機能。そこから長友選手が繰り出すクロスに、FW大迫勇也選手(ヴィッセル神戸)が飛び込むハーフチャンスを何度か作っていた。

中盤の顔ぶれと形を変えてバランスが良くなり、安定感が生まれた。チーム全体に積極性が戻り、プレーが活性化された。新たな起用が生み出した化学反応だ。

無条件でのW杯出場へ勝利が求められる大一番に、田中選手は「この試合で引退してもいいぐらい、後悔のないゲームをしたいと思っていた」と振り返り、「全力は出せた。質には満足していないが、勝って良かった。ほっとしている」と安堵の表情を見せた。

森保監督は田中選手と守田選手の起用と中盤のシステムを変更について、「自分たちの力を出すために、ここまでの活動を踏まえて調子のいい選手を使おうと考え、オーストラリアに対して我々のアドバンテージが多いと考えた。二人ともトレーニングで存在感のある、いいプレーをしてくれていた」と説明した。

新システムの練習は試合前2日ほどしかできていなかったというが、長友選手は「守田と田中碧が入って中盤でタメができてボールを持てる時間が増えた。そこで時間を作れるので僕が高い位置を取れたし、南野がフリーになって大迫と近い距離でプレーできた」と評価し、遠藤選手も「チームとして新たなオプションができた。相手が分析してくる中で、どっちでくるのかと思わせられる」と話した。

機能したベンチワーク

この試合では、いつもより早い時間にベンチが動いたこともプラスだった。

後半21分のFW古橋亨梧選手(セルティック)の投入は、大迫選手が足を傷めた様子を見せていたのでその影響もありそうだが、古橋選手が早めにピッチに立ったことで、持ち味のスピードで相手の背後を突く攻撃を仕掛ける機会が増えた。

その後、後半33分に浅野選手が入ると、相手の裏を狙う動きがダブルになり、オーストラリアにとっては警戒すべきポイントが増えた。浅野選手の投入直後には、縦パスに反応した古橋選手が攻め上がってシュートを放ち、その跳ね返りを捉えた浅野選手が右足を振る決定機が生まれていた。

この時は相手GKにセーブされたが、後半41分には浅野選手の推進力と思い切りのよいシュートが決勝点につながった。

DF吉田麻也選手(サンプドリア)からのロングパスを受けて、浅野選手がペナルティエリア左から左足を振ると、シュートは右ポスト内側に当たってゴールライン手前に跳ね返った。そこに、田中選手と古橋選手が詰めて、二人の間でクリアを試みた相手DFがゴールに押し込んだ。3人のゴールへの積極的な姿勢が形になった得点だった。

その瞬間をベンチに下がって「入れ!」と見守っていたという長友選手は、「途中から入った選手たちが、相手がばてている中でスピードを活かして裏をつけていて、チームとしてやり続けられた。選手のストロングポイントをしっかり理解して、勝負をかけ続けられた」と語った。

森保監督は、「選手たちが今日の試合で起こり得ることを想像して、イメージを共有してくれたのが大きい」と選手たちを称えた。

No image

Photo by Koji Watanabe/Getty Images

敵将も痛感した観客の存在感

日本戦での黒星でグループ2位に後退したオーストラリアのグラハム・アーノルド監督は、「大勢のファンがいたことで違いが出た。後半我々がギアを上げて1-1に追いついたが、最後の10-15分はファンがいたことで日本がエネルギーを得て勝利を手にした」と、観客の存在の大きさを指摘した。

オーストラリアはコロナ禍の影響で自国での試合を開催できておらず、最終予選ではホーム試合をカタールのドーハに移して無観客の中で行ってきた。今回の日本戦の前もドーハでオマーンと戦い、3-1で勝利して2次予選からの連勝を11に伸ばしたところだった。

この日は観客動員上限の1万人に、ワクチン接種・陰性確認での「ワクチン検査パッケージ」枠で最大5千人分が追加されて、14,437人がスタジアムに駆け付けた。満員の6万人には遠い観客数だったが、それでもオーストラリアにはアウェイ感を感じた。日本代表にとっても、これまで以上に力強かったに違いない。

試合終盤には、一部のサポーターが感染防止策として禁止されている大声での応援を行ったことが問題となっているが、それを除けば、日本のチャンスやゴール場面だけでなく、守備のカバーリングやボール奪取などの好プレーにも、スタンドの観客から大きな拍手や手拍子が送られ、選手たちを励ましていた。

森保監督は、「選手が最後まで勇気を持って踏ん張って戦えたのは、サポーターのおかげ。感謝したい」と話し、試合後にはその気持ちを伝えようとスタンドのサポーターへ「一緒にワールドカップに行きましょう」などと、声をかけていた。

2位以内浮上へ、求められる連勝

この結果、日本は2勝2敗で勝点6としたが順位は4位へ1つ後退。日本と勝点で並んでいるオマーンがベトナムに3-1で勝利し、総得点で日本を上回って3位につけた。グループ首位は中国に3-2で勝ったサウジアラビアで、4連勝で勝点は12。オーストラリアは勝点9で2位に後退し、中国は勝点3で5位、ベトナムは4連敗で6位だ。

最終予選は来年3月まで行われ、グループ上位2チームまでが無条件で出場権を獲得。3位チームはグループA3位とプレーオフを戦い、勝者は最後の1枠をかけて大陸間プレーオフを戦うことになる。

今回、日本は人とシステムの変更で勝利を手にした。これまでの3試合に比べてプレーに積極性とリズムが戻ってきたことも、新たな戦力の登場も今後へ大きなプラス要素だ。だが、好調時の流れるような連動性や躍動感を見るまでには戻っていない。

GK権田修一選手(清水)は、今回の勝利を「勝点3は絶対条件だった。今は喜ばしいが、まだ何も変わっていない」と話し、プレー内容についても「本当の部分でまだまだ」と冷静に見つめている。

特に2連戦の一戦目はエンジンがかかりきらない試合が多く、以前から見られていた傾向だ。今予選も敗れたオマーン、サウジアラビア戦はそれぞれの2連戦の初戦だった。日本の2位以内浮上へは連勝が不可欠だ。交代のタイミングを含めた選手起用やプレーシステムの変更など、今回見せたような積極的な姿勢は今後も維持したい。

森保監督は「初戦をどう勝つか。次の11月へ、過去の敗戦を分析して、次の勝利につなげられるようにしたい」と述べている。権田選手も「しっかり2勝できる状況をつくっていきたい」と前を向いた。

日本は11月、ベトナム、オマーンとアウェイでの連戦に臨む。

取材・文:木ノ原句望

テレビ東京

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加