58歳娘が青ざめた...母から「9000万円の自宅」を相続した後に届いた「突然の支払い請求」

58歳娘が青ざめた...母から「9000万円の自宅」を相続した後に届いた「突然の支払い請求」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/06/23
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筆者は17年間にわたり、多くの方々に資産形成や相続対策のアドバイスを行ってきた経験から、これまであらゆる相続争いのケースも見てきた。

今回は母親が良かれと思って書いた遺言書のせいで、もともと仲が良かった姉妹が最悪の関係になったしまったというエピソードを紹介する。

<【前編】母の死後、「1000万円」を相続した娘が絶句…遺言書が招いた「最悪の相続トラブル」>では、姉に9000万円の自宅を、妹に1000万円の預金を相続するという内容の遺言書が姉妹の争いを招いたしまった経緯を紹介した。

後編となる本稿では、引き続きトラブルの内容とそのポイントを解説する。

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[PHOTO]iStock

妹から突然の支払い請求

遺言が開封されて話し合いが進まないまま1ヶ月ほど経ったある日、妹から届いた郵便の中身を見て長女は驚愕した。

「速やかに1500万円を支払ってほしい」という金銭の支払いを求める内容だったからだ。

長女には「なんで1500万円?」という疑問もあったが、何より少し前まで仲が良かった妹から前触れもなく支払いの請求書を送られたことがショックだったようだ。

こういった請求や相続の争いに巻き込まれるのは初めてだったので、知り合いに相談していたところ私が紹介されたわけである。

遺留分

私はまず長女に妹からの1500万円の請求の根拠となる遺留分について説明した。

遺留分とはどんな内容の遺言書があっても各相続人が最低限、受け取ることができる財産のことである。

遺留分は法定相続分(法律で定められた相続の取り分)の1/2である。今回は母親の相続財産が1億円で、姉妹それぞれの法定相続分が5000万円なので、遺留分はその1/2の 2500万円となる。

2500万円から妹が遺言で受け取る預金1000万円を差し引いた1500万円を長女に金銭で支払うよう請求があったわけである。

つまり妹は正当な権利を主張しているということである。

また「金銭」で支払うというのもポイントである。実は相続法の改正で2019年7月から遺留分は相続財産の金銭での精算が基本になった。

つまり長女は妹にきっちり1500万円を金銭で支払う必要がある。

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イラスト/iStock

遺留分を支払うために奔走

妹からの請求通り1500万円を支払うしかないとわかった長女だが、実は1年前に自宅のリフォームにまとまった支出をしており、手元にすぐに支払える現預金がほとんどなかったのだ。

資金を用意するために銀行で長期の定期預金を解約したり、証券会社で持っていた株を売却したりと資金繰りに奔走したがどうしても1000万円ほど足りなかった。

長女は相続した自宅を売却することも検討していたが、その手段は私が止めた。不動産を焦って早く売却しようとすると買い叩かれて相場よりも安くなってしまうことが多いからだ。

最終的には相続した自宅を担保に銀行から融資を受け妹への1500万円の支払いに充てた。

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長女いわく「財産がもらえても、もう相続はこりごり。仲が良かった妹家族とは険悪になるし、資金繰りで頭がいっぱいになるし、精神的に疲労困憊してしまった」とのことだ。

母親が生前に家族のために綴った遺言書。しかし、その遺言書のせいで仲が良かった家族が引き裂かれたとあっては浮かばれない話である。

遺言書でもめないためのポイント

それでは今回のエピソードを元にどうすれば遺言書でもめないか考察しよう。

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(1) 遺言内容の生前の共有と理解

もっともポピュラーな対策は遺言書の内容を生前に家族に伝え、納得してもらうことである。納得しない家族がいる場合は説得するか、もしくは遺言の内容を納得のいく形に軌道修正する。

今回の姉妹のケースも母親が生前に妹に遺言の内容を説明し納得してもらっていれば、心変わりしない限りはもめていないわけである。日本では家族間でお金の話はしづらい傾向にあるが、自分の死後に家族が険悪になるよりはいいはずだ。

(2)遺言書の付帯事項

付帯事項とは家族へのメッセージや遺言の想いなど遺言書の成立とは直接、関係ない文章のことである。遺言書の成立と関係ないので書かない人の方が圧倒的に多いが、遺言がきっかけでの争いを回避するためには有効となることがある。

今回の姉妹のケースも母親が自宅を長女に譲る明確な理由や想いを付帯事項で綴っていれば、妹がそこまで憤慨して泥沼の争いになることはなかったかもしれない。

請求された側が困らないための対策

(3) 不動産の時価評価

遺言書を書く前にやらなければならないのが不動産の時価評価である。誰に何を渡すかは大事だが、相続した方は現在の価値でいくらもらったかと考えるので、渡したい財産が今いくらの価値があるかを遺言の内容を考える前に理解しておかなければならない。

今回の姉妹のケースも母親は自宅の価値が9000万円もあるとは思ってなかったと私は推測している。自宅は母親が購入した時代から土地価値が数倍になっているエリアだった。母親に自宅を購入したときの価格しか頭になければ、今回の遺言書もそこまで不公平とは思わなかっただろう。

不動産鑑定まで入れるとそれなりに費用もかかるので、保有する物件数が少なく金額も数億円未満なら国税庁が発表している路線価や不動産売買サイトなどで簡単に確認するだけでも十分だろう。

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(4) 遺留分対策

これまでの(1)から(3)の対策と異なるのは、今回の姉妹のケースでも問題となった遺留分の請求が実行されることを想定している点である。つまり請求された側が困らないための対策だ。

遺留分対策では例えば生命保険を使うことが多い。今回の姉妹のケースでも母親が亡くなったときに長女が受取人の生命保険が1500万円かけられていたとすると、次女が遺留分を請求してもその保険金で全て支払えるわけだ。

また生前贈与も有効である。遺留分は相続財産に対する割合で決まるが、生前贈与しておけば相続財産ではなくなり、贈与を受けた人の資産になっているので遺留分は関係ないというわけだ。

まとめ

今回の姉妹のエピソードでもわかるように「遺言書を書けば相続争いは大丈夫」というのは間違った認識である。むしろ遺言書が家族の仲を引き裂く元凶になっている可能性が高いのだ。

遺言書を書くなら相続や法律に詳しい専門家に相談するべきである。少しの相談料と家族間の平和を天秤にかけたとき、どちらが重いかは明らかだろう。

本記事が少しでも相続や遺言書について考えるきっかけになってもらえれば幸いである。

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