女殺し屋、仕事と同性との恋に揺れ動く...『殺し屋やめたい!』から目が離せない!

女殺し屋、仕事と同性との恋に揺れ動く...『殺し屋やめたい!』から目が離せない!

  • mi-mollet(ミモレ)
  • 更新日:2022/01/15

「仕事やめたい!」「恋愛と仕事どっちが大事なの?」という台詞、つい口にしてしまうことも多いのでは? コミックDAYSで連載中の『殺し屋やめたい!』の主人公・ローズは、異国の地で生きるために殺し屋を生業としていたものの、ある日、この命題に直面することになります。物語の設定や登場人物の複雑な関係性が絶妙で、「青田買いしとけ!」と声を大にして言いたい作品です!

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『殺し屋やめたい!(1)』(コミックDAYSコミックス)

常に冷静で感情を露わにせず、完璧な仕事ぶりを見せる殺し屋のローズ。戦争や貧困によって難民となり、流れ着いたある国で、元兵士だった彼女は殺し屋という職に就くことになりました。人類最古の職業は娼婦やスパイと言われたりしていますが、依頼を受けて利害関係にある人を殺す「殺し屋」という仕事もかなり古くから必要とされてきました。

この日も事故に見せかけた“仕事”をきっちりとこなしたローズですが、最近、「恋か仕事か」ということをよく考えるようになりました。

尾行に注意しながら変装し、監視カメラを常に確認しなくてはいけないという生活を送っていますが、それがローズにとっての日常。仕事にしても、給料はいいものの、ただ淡々とこなすだけ。そんな無味乾燥状態だったため、仕事の意義や生きる意味を考えることもなかったのですが、ある“恋人”との出会いによって、ローズの心境は変わりつつありました。

来週に“恋人”と会う約束をしたローズですが、彼女にはその前にやっておくことがありました。それは教会での告解です。顔の見えない神父に向かって、自分が行った仕事をこれまた淡々と告白していきます。「この手はのろいに塗れ この魂は穢れています」と。そして神父は、罪深きローズに赦しの言葉を与えます。このことで自らの罪や穢れが消えてなくなるわけではありませんが、この告解の場と神父の言葉が、ローズの精神的な支えになっています。

告解には守秘義務があるとはいえ、毎回、詳細な手口とともに悩める殺し屋の独白に耳を傾ける神父の背負うものの重さよ……。犯罪と分かっていても、立場上、警察に突き出すわけにもいきません。告解室から出るや否や、タバコをふかしたくなる気持ちも分かります。そんな白舟神父も、帰宅すれば一人の父親。紅華という高校生の娘と二人暮らしです。

この紅華が、父を適当にあしらって夜に外出した先にいたのは、なんと殺し屋のローズでした。紅華のバイト先で知り合ったのがきっかけで交際がスタート。ローズは殺し屋をしているなんて言えるわけもなく、理学療法士と伝えています。一方の紅華は、父が神父であるがゆえに、自分に彼女がいて、同性愛だということを言えずにいます。

モノクロームの世界が少しずつ色づきはじめたローズ。父には言えない恋だけど、幸せを噛みしめる紅華。どうも誰かと付き合っているらしい娘を心配しつつ、例の告解の殺し屋をどうするべきか悩む神父。この3人の複雑な関係性はどうなっていくのか!?

難民の殺し屋や同性愛など、なかなか公にできないマイノリティーの人々が登場し、1話目からぐっと惹き込まれる本作ですが、作者の外木寸さんは、はじめから難民や同性愛を描こうと思っていたわけではなかったそう。

「最初に思い描いたのが、『疲れた女殺し屋がバイトの女学生に愚痴を言ってる』というビジョンで、それを描きたい、そのために世界観を作るぞ!……という順番で考えました。殺し屋が実在するリアリティを考えた時に、嫌な仕事を誰かに押し付けている国々の状況から難民が思い浮かびました。また、仕事に疲れた女の殺し屋の恋愛を私なりに突き詰めた結果、同性愛につながっていきました」(外木さん)

同性愛には、「同性に惹かれる」「同性にしか惹かれない」という“性差”がある愛の場合と、性別は関係なくて、「惚れたのがたまたま同性だった」という、相手の人格に対する場合があると考えている外木さん。

「“性差”がある愛なら、『周りに認めてほしい!』など、どう尊厳を得るかという社会の理解や、承認と軋轢がテーマになり、地に足のついた身につまされる面白さを描くことができます。もう一つの相手の人格に対する場合なら、性差の必然性や社会性は薄れるものの、エンターテインメント的な嘘でマジョリティの共感を呼ぶような盛り上げが作りやすいと思っています。この作品では、そのバランスがとれるように意識しています」(外木さん)

ローズは紅華との恋愛によって、特にやりがいがあるわけでもなく、生きるために手を染めていた殺し屋という仕事をやめたいと考えるようになります。とはいえ、会社を辞めるように簡単に組織を抜けられるわけでなし、さらには別のトラブルがローズたちに容赦なく襲いかかっていきます。現実世界でも、やめたくてもやめられないことや、どうせ変わらないと諦めてしまうこともあるもの。外木さんにそんな問いをぶつけてみました。

「この作品をここまで描いてきた中で考えると、『トップに立てば選択肢が増える』のかな、という気はします。実社会でも出世して社長になれば自由が増えるようなもので、『何かをやめる、変える』のは地道で難しいと覚悟するようなことが重要な気がします」

果たしてローズは覚悟を持って、自ら道を切り開いて選択肢を増やしていけるのか? 物語はまだ始まったばかり。さまざまな人物や思惑が入り乱れてこの先の展開も目が離せません。さらには、1月12日には待望の単行本2巻も発売されました。

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「表紙でギャグものと連想する方が結構いらっしゃるようですが、むしろ中身はシリアスなので、そこはビシっと言っておきたいです!」

と外木さん。ギャグというよりは、物語のところどころでほっこりしたり、くすっとしたりするコミカルな場面があり、そこもまた作品の魅力となっています。1巻の表紙はライダーズジャケットに紫色のボブカット姿のローズですが、個人的には攻殻機動隊の草薙素子を彷彿とさせ、とてもかっこいいので大好きです。

果たして、恋か仕事か? お互いが抱える秘密はバレずに済むのか? 殺し屋は本当にやめられるのか? 「殺し屋やめたい!」というローズの祈りにも似た、切実な願いが叶いますように。神父さま、お願い!

吉川 明子

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