「デパ地下以外は死んでいる」百貨店を支える余力が日本にはもうない

「デパ地下以外は死んでいる」百貨店を支える余力が日本にはもうない

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2021/01/18

百貨店業界が2度目の緊急事態宣言で崖っぷちだ。最初の緊急事態宣言時(2020年4~5月)の百貨店全体の売り上げは前年比マイナス6~7割だった。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「大手百貨店の自己資本比率は問題ありませんが、売り上げが低迷し続け、地方では閉館も相次いでいる。ネット販売の台頭もあり、従来のビジネスモデルの転換が求められる時期であることは間違いない」と指摘する――。

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写真=iStock.com/tylim※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tylim

緊急事態宣言で厳しい状況の続く百貨店

1月7日に首都圏に緊急事態宣言が出されました。

2020年4~5月にかけての第1回目の緊急事態宣言下では、百貨店は食料品売り場以外を閉店にするところが多く、業績を大きく落としました。

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図表1は高島屋とJ.フロントリテイリング(大丸、松坂屋:以下Jフロント)と三越伊勢丹の業績です。

前者2社は2月が決算期で、2020年3~11月までの業績、三越伊勢丹は2020年4~9月までの業績ですが、前年度(2019年度)は新型コロナウイルスの影響が全くない期間、今年度は新型コロナウイルスの影響が大きく出た期間です。

第2回目の緊急事態宣言でさらなる業績の落ち込みか

売上高を見ると、高島屋が29.1%、Jフロントが36.7%、三越伊勢丹が41.8%と大きく減少しています。当然、営業利益への影響は大きく、高島屋が前年度は202億円の利益を計上していたのが105億円の赤字となり、Jフロントは同じく370億円の黒字が184億円の赤字に、三越伊勢丹が138億円の黒字が178億円の赤字になっています。その結果、親会社株主に帰属する純利益も3社とも大きな赤字を計上しています。

ただし、中長期的な安全性を見る自己資本比率を見ると、高島屋33.2%、Jフロント28.1%、三越伊勢丹43.1%と、前年同時期よりは落としているものの、安全性という観点からは、いまのところ全く問題ないといえます。

今回、第2回目の緊急事態宣言が出て、前回ほどの厳しい対応にはならないと考えられます。しばらくは業績が落ち込むことが考えられますが、もう少し長い目での業績の検討も必要です。後半でそのことに触れます。

消費全体では10月、11月は持ち直し傾向だったが百貨店は…

消費全体や、百貨店業界全体の動きをもう少し俯瞰的に見てみましょう。

図表2をご覧ください。新型コロナウイルスの影響でGDPの半分強を支える家計の消費支出も一時期は大幅に減少しました。その後、ウィズ・コロナの状況が続きましたが、全体的な消費支出は徐々に回復してきました。しかし、百貨店業界に限っていえば回復が鈍いのが分かります。

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数字を細かく見ていきましょう。まず、「消費支出2人以上世帯前年比」という数字です。この数字は家計の支出を表す典型的な数字です。2019年9月は消費税増税前の駆け込み需要があり、大きく上がっていますが(9.5%)、増税後の10月(-5.1%)には大きく落ちています。

その後、ポイント還元などで消費を促しましたが、全年比数%のマイナスが続きました。そして、コロナの影響が大きく出始めた3月以降は、マイナス幅が-6%と一気に大きくなり、緊急事態宣言が出た4月は前年同月比で-11.1%、5月は-16.2%と大きく下がったわけです。先ほども述べたように、家計の支出がGDPの半分強を支えていますから、日本経済全体も大きく落ち込んだわけです。

しかし、巣ごもり需要もあり、10~11月の全体的な消費支出は、それぞれ1.9%、1.1%とわずかですが前年比プラスにまで回復しています(ただし、前年の2019年10~11月は、消費税増税の影響で落ち込んでいたということもあります)。

例えば、家電などの製造販売をするアイリスオーヤマでは、2020年12月決算の速報値で、売上高が前年比で38%増の6900億円、経常利益は2.2倍の621億円で、ともに過去最高と絶好調です。家庭内を快適に居心地よくするために多くの人が支出したのでしょう。

また、日清食品ホールディングスなどの一部食品メーカーも業績を上げています。日清食品では、9月までの第2四半期までの数字ですが、売上高が前年度比で8.9%増の2411億円、営業利益は61.5%伸びて318億円です。人々が外食を控えステイホームで食事したことで業績を伸ばしている会社もあるわけです。

消費支出が伸びた時期にも百貨店は厳しかった

しかし、百貨店は業界全体で厳しい数字が続いています。もう一度先ほどの図表2の「全国百貨店売上高」を見ていただくと、消費支出同様に2019年10月の消費増税前後では、大きく上下しています。百貨店では比較的単価の高い商品を売るために、駆け込み需要とその反動が大きいのです。

そして、コロナの影響が出始めたころから、落ち込みがとても大きく出ています。まず、2020年の2月ですが、消費支出全体では-0.3%ですが、百貨店では12.1%のマイナスです。これはインバウンド、とくに中国の春節に合わせた訪日客が大幅に減少したことが影響しています。

そして、3月は日本国内でも消費が大きく下がる中で、百貨店も前年比で33.4%の売上減少となりました。緊急事態宣言が出た4~5月は、多くの百貨店で食料品売り場以外は閉館のところが多かったので、それぞれ前年比マイナス72.8%、65.6%と大幅なマイナスとなりました。

そして、注意して見なければならないのは、1回目の緊急事態宣言が解除された後も比較的大きなマイナスが続いたことです。10月はマイナス幅が1.7%と小さかったですが、これは、前年が消費増税の影響で-17.5%だったことが大きく影響しています。11月は、先ほども述べたように、消費支出全体では1.1%伸びたにもかかわらず、百貨店は-14.3%となっています。百貨店の数字が全く戻っていないのです。ちなみに、百貨店も含めた小売業全体の数字では、11月は前年比で0.7%のプラスとなっています。にもかかわらず、百貨店だけ取り残されてしまっているのです。

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写真=iStock.com/tylim※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tylim

百貨店にとっては今後も厳しい状況が続くことも予想されます。これまで業績を支えてきたインバウンド消費がしばらくは期待できません。訪日客は、化粧品や宝飾品、高級時計などをたくさん買っていましたが、少なくとも数年間は元に戻ることはないでしょう。

デパ地下以外はガラガラ、百貨店の「寿命」

筆者が百貨店に関して心配しているのは、その業態としての「寿命」です。

おおざっぱに言うと、百貨店はピーク時に比べて売り上げが半減しています。近年、地方では百貨店が閉店したところも多く、県によっては百貨店がひとつもなくなってしまったところもあります。

今回のコロナ禍でも地方では閉店が続きました。経済力の弱い地方経済では、百貨店を支えられなくなっているのです。都心の百貨店も、主にスイーツや総菜など食品を扱うデパ地下は夕方になるとテイクアウト需要でにぎわっていますが、洋服などを扱う「上の階」はガラガラな印象です。

そうしたジリ貧の百貨店とは対照的に元気なのがネット販売です。人々のショッピングの仕方や流通が多様化する中で、百貨店のビジネスモデルが今後もどこまで通用するのか。

大手百貨店の中には強みである既存の富裕層顧客に投資信託などを紹介するビジネスを展開しているところもありますが、従来のビジネスモデルの転換が求められる時期にあることは間違いありません。コロナ禍を切り抜けつつ、ビジネスモデルも転換する。そんな難しいかじ取りが経営陣には求められるのです。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。
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小宮 一慶

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