日本復活のカギは「スマボ」、ソフトバンク・孫正義氏が基調講演――SoftBank World 2021が開幕

日本復活のカギは「スマボ」、ソフトバンク・孫正義氏が基調講演――SoftBank World 2021が開幕

  • ケータイ Watch
  • 更新日:2021/09/16

ソフトバンクグループは15日、同社の法人向けイベント「SoftBank World 2021」を開幕した。

初日となった今日15日、基調講演の場にはソフトバンクグループ 代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏が登壇。これからのロボットと日本復活をテーマに語った。

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競争力が低下する日本

冒頭、米テスラ・モーターズが2足歩行のロボットを発売するというニュースに触れた孫氏。自らロボット好きと語る同氏は自社製品「Pepper」にも言及した。

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「Pepper君。数年前にデビューしました。現在、うなだれております」。ソフトバンクロボティクスによれば、Pepperは一時生産を停止している。販売ではなくレンタル式が主流のため、使用を終えた機体をリファビッシュすることでやりくりできるためという。Pepperはソフトバンクショップの受付などのほか、店舗の受付や教育分野でも活用されている。

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「新しい製品を出すというのはなかなか難しいですね」という孫氏は、日本経済復活のカギはロボットにあると語る。1980年代、技術力でも経済力でも日本はトップにあったが、現在では下降の一途をたどっている現状がある。

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三菱総合研究所による世界の競争力ランキングを見るとバブル崩壊直後の1993年までは、1位の座を維持していたものの、2021年時点では31位。GDPでいうと米国に次ぐ2位だったが、現在では米中に続いて3位となっている。

孫氏は「競争力が低下したということは、GDPもこれからどんどん他国に抜かれていくかもしれない」と危機感を募らせる。米国は現在もGDP1位を保っているが、2000年から2019年までの伸び率で考えると大きく伸長しているのに対して、日本はほとんど横ばい。

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孫氏は「競争力」とは「労働人口×生産性」と説く。ところが日本の労働人口は減っていく一方で、総務省のデータによれば2050年には5000万人を下回るという結果になっている。

「労働人口が落ちて、競争力が落ちて、生産性が落ちる。私は日本の将来を非常に危惧している」と孫氏。

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他方、日本企業にはAIやロボット、IoTなどのハイテク活用にも遅れが見られると指摘。総務省の調査では、AIを活用する日本企業は全体の24%、ロボットでは10%、IoTでは28%と、いずれも米国企業に比べて低調な数字が並ぶ。

ただし、これについて孫氏は「本当に24%もあるのか。感覚的にはもっと少ないような気もする」とハイテク化に後塵を拝する日本企業勢への厳しい見方を強める。

ロボットで人口減補う

日本の人口が急に増えることはない、つまり労働人口は急に増えない。孫氏が説くところの生産性もこのままでは下がる一方だ。「『観光立国』なんかも大事。住みよい街、古き良き日本も大事だけどそれだけじゃさみしい。競争力も復活してほしい」。

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そう語る同氏が掲げる日本復活のカギは「スマボ」。スマボというのは、すなわち「スマートロボット」の略で孫氏の造語だ。

日本の携帯電話市場がかつて独自の進化を遂げたフィーチャーフォン(ガラケー)一色だったところに、ソフトバンクが日本で最初にアップルの「iPhone」を導入した。当時は「ワンセグ」や「おサイフケータイ」がないからこんなものは売れない、と否定的な見方が目立った。

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iPhoneが完成した当初、故スティーブ・ジョブズ氏に「すごいものができた! (iPhoneを見たら)漏らすぞ!」とまで言われたという孫氏。「漏らしはしなかったが、膝ががくがくするほど感動した」と当時の感想を語る。

iPhoneが一般大衆へスマートフォンを広めたことには間違いなく、人々のライフスタイルに変革をもたらしたことは大きなトピックスだ。

スマボとガラボ

孫氏は、ロボット業界においても同様のことがこれから起こると未来の予測を語る。

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日本製の産業ロボットは世界中のさまざまな分野で普及していると孫氏。これを「ガラボ」(=ガラパゴスロボット)と評し「スマホが(日本の携帯市場を)一瞬で変えたように、スマボがロボットの世界を一瞬で塗り替えていく」と見通しを語る。

では、具体的にスマボと従来のロボットは何が違うというのだろうか。

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孫氏による説明では、従来型のロボット(ガラボ)は、人がその動作を事細かにプログラムし、決まった動作をする。そして重量物の持ち上げや組み立てといった一部の産業においての需要に応えるものだったと説明。

一方で、スマボはAIで自ら学習。その場で求められる動作を臨機応変に獲得し動作することから、目的に向けた細かいプログラミングが必要なく従来よりも広い産業での需要に応えられるという。

ロボットでさまざまな労働人口を置き換える

「我々もPepperだけではない、うなだれているばかりではない」と孫氏はソフトバンクグループでのロボットに対する取り組みを紹介する。

同社でのロボットに関する取り組みで代表的なものがボストン・ダイナミクスへの出資だ。ボストン・ダイナミクスは、米国企業で現在は韓国現代自動車グループが株式の80%を保有しており、ソフトバンクの保有率は20%となっている。

孫氏は同社を「人型ロボットで最も進んだ企業」と評する。ヒュンダイへの売却について「ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、自分がオペレーションするのではなく、各企業の成長を支援する資本家としての立場だ」と出資者としての立場を説明した。

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「スマボ」の例。ボストン・ダイナミクス社製品

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2014年当時のSoftBank Worldでもロボットの重要性や「ロボット3000万台で製造業人口の1億人に匹敵する」と語られていた。当時はまだAIや機械学習がさほど浸透していなかったが、まさにそうしたものが普及する時代の入り口だったのではと孫氏は回想する。

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「ソフトバンクは、孫正義は何も作っていないと批判されるが、僕に特技があるとしたら『時代の流れを他人よりもちょっと早く、ちょっと的確に読める』ということだ」という孫氏。「スマボは産業人口を置き換えるだけではない、あらゆる労働人口を置き換える」とビジョンを示した。

スマボ1億台で10億人分

休息を必要としないロボットの普及により、生産性は大きく向上すると語る孫氏。労働時間3倍、生産性、3.5倍、これらをかけ合わせて競争力は10倍、1台で10人分の競争力を持つという。

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ボストン・ダイナミクス製の最新型ロボットが鮮やかにバク転などをこなす様を例に取り「いずれロボットが人間の制作さ、機敏さを超えていくだろう」とも語り、こうしたスマボが1億台日本にあれば、10億人分の労働人口を抱える国に生まれ変わると孫氏。コスト面が課題として考えられるが、孫氏は「テスラのロボットがどうなるかわからないが、Pepperなら1台20万円。挨拶する程度だけど接客には使えますよ」とさりげなくPepperもアピール。

加えて「ロボットは手足2本ずつだけじゃなくていい。8本あってもいいしタイヤでもいい。それぞれの業務に最適化されたスマボがたくさんあっていいと思う。ソフトバンクグループはスマボの時代に、いろいろな形で貢献していきたい」とあらためてロボット市場への資本投入を続けて行く方針を示した。

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投資家は「お金を作るもの」、自らが位置づけられる資本家は「未来をつくるもの」と孫氏。ソフトバンクグループが投資してきた未上場AI関連企業への出資額は世界全体の1割に上る。

SVF出資先は300超に

ソフトバンク・ビジョン・ファンドと「LatAm Fund」と合わせて同社が投資した企業は300社超にも上る。

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中でもロボットに関連する18社を「最先端のスマボ企業集団」と位置づける。講演の中では一部の企業の技術が紹介された。

たとえば、AGILE ROBOTは、衝突を検知できるロボットアームを開発している企業。鋭い先端に風船を当ててもそれを認識し風船を割る前に停止する。

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こうした技術は生産ラインで繊細な力加減が必要な作業などに応用可能で、製造ラインの構築も用意になり生産性が大きく向上するメリットがあるという。

加えて倉庫のオートメーション化を手掛けるAutoStoreは、倉庫ピッキングをすべてロボット化することで棚が必要なくなり、同じスペースでも収納量を大幅に増やせるというメリットを売りとする。

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さらに袋に包まれた商品やダンボールと、さまざまな商品に対応するピッキングロボットのBerkshire Grey、人の力だけでは高難易度な手術をアシストする医療ロボットを手掛けるといった企業CMR Surgicalもソフトバンクグループによる出資を受けている。

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また、小売やサービスに向けたロボットメーカーにも投資をしている。Keenon Robotでは、レストランなどにおける配膳ロボットを開発している。混雑の中でも人を認識しぶつかる前に停止する。人形ではないため、人よりも多くの料理を一度に運べるといったメリットもあり、サブスクリプション料は数万円程度という。

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このほか、清掃ロボットのGaussian製品は1時間あたりの清掃面積を3倍、コストを20%減と高い効率が特長。競合製品は固定の清掃ルートを巡るのに対して、同社のロボットは清掃すべき対象を認識しながら動作する。

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オフィスワーク補助の「RPA」も

孫氏は「必ずしもスマボはメタルカラーではない。『透明カラー』のスマボもある」と語る。つまり、オフィスワーカーのサポートをする作業自動化ソフトウェアのことだ。今後、デジタルボットがさまざまな事務作業をスマボ化していくと語る。これにより「ルーティンから開放され、より人間らしい仕事・生活にシフトしていくべき」と持論を展開する。

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ソフトバンクグループが出資するAutomation Anywhereでは、ログインしてから数クリックで作業を自動化できるRPA(Robotics Process Automation)を提供している。ホワイトカラーの大半はパソコン作業。その1/3程度はルーティンだという人は結構いるのではとした上で、それを自動化することで、残りのクリエイティブなアイデアの考案や営業活動などにもっと時間を有効に使えるとコメント。

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ソフトバンクでは実際に、数千人分のホワイトカラー業務をRPAにまかせているという。「これから多くのユーザーに感動・体験を広めていきたい」と語る。Automation Anywhere製品は米国の大企業でも多く導入されているという。米国の生産性が高いのはこういうものを活用しているからだと孫氏。

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このほかにも、自動配送ロボットや自動運転を手掛ける企業、脳外科手術支援のロボットなど多数の企業がソフトバンクグループの出資を受けている。

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AutoStore、Berkshire Grey、Keenon、Gaussian Roboticsの製品はソフトバンクロボティクスから日本でも今後提供される予定だ。また、そのほかの出資先企業の製品についても、日本での展開を検討しているという。

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情報革命の最先端として

孫氏はあらためて、日本復活のカギは「スマボ」だと力説する。

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応援するPepper君

「『ガラボ』さよなら、『スマボ』こんにちは。と新しい時代が来ると思う」と予測を述べる。また、「スマボ1億台で労働人口10億人分。うなだれていたPepperも応援する。日本を応援し、みんなで一緒に光輝くような未来が来ることを心から願っている」と自身の陶中を言葉にした。

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「諦める必要はない。やりたい、やるんだという想いがあれば道は拓ける。ソフトバンクグループは情報革命の最先端として、どんどん応援していきたい」。さらに「『情報革命で人々を幸せに』。多くの人々に本当に幸せになってもらいたい。心の底からそう思っている。ソフトバンクグループを上げて頑張っていきたい」と講演を締めくくった。

北川 研斗

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