
【写真:Getty Images】
●サッカー日本代表に選ばれた西村拓真
明治安田生命J1リーグ第5節、横浜F・マリノス対鹿島アントラーズが18日に行われ、2-1でマリノスが勝利した。マリノスのトップ下・西村拓真はここまで1得点2アシストという結果を残し、サッカー日本代表に選出されている。さらなる高みを目指すべく、西村はプレースタイルの改善に着手しているという。(取材・文:元川悦子)
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【動画】西村拓真も躍動! 横浜F・マリノス対鹿島アントラーズ
「選出されたことを本当に嬉しく思いますし、それと同時に『やってやるぞ』という気持ち。代表は全てにおいてクオリティもレベルも違いますけど、遠慮することなくやらないと生き残れない。自分の良さを評価されて選出されていると思うので、人と比べるんじゃなくて、自分の強みを出して貢献したいです」
第2次森保ジャパンに抜擢された西村拓真は、新体制初陣となる24日のウルグアイ代表戦、28日のコロンビア代表戦に向けて、熱い胸の内を吐露した。
その気迫をまず示さなければならなかったのが、18日の鹿島アントラーズ戦。昨季王者の横浜F・マリノスは12日の前節・北海道コンサドーレ札幌戦で今季初黒星を喫している。連覇を目指すうえで連敗だけは絶対に避けなければいけない。トップ下で先発した西村は自分のやるべきことを整理して、冷たい雨の降りしきる日産スタジアムのピッチに立った。
序盤、攻勢に出たのは鹿島。昌子源、植田直通の両センターバックを中心とした組織的守備から、相手を揺さぶるサイドへの展開、背後を突くロングボールが効果的に出て、知念慶や土居聖真らがゴールの匂いを感じさせた。
それをマリノスの畠中槙之輔、角田涼太朗ら守備陣が的確な対応で阻止し、反撃に転じる。西村も相手アンカーのディエゴ・ピトゥカにマンツーマン気味でつかれたが、彼と駆け引きしながら敵のいないスペースを見出し、嫌なところへ一気に侵入。彼らしいポジション取りでチャンスを窺い続けた。
●西村拓真が取り組んだプレースタイルの改善
こうして前半は一進一退の攻防が続き、スコアレスで折り返すことになった。
「難しいゲームになることは最初から分かっていた。その中で何ができるかを考えながらやっていました」と言うトリコロールの背番号30が意識したのは「あえて動きすぎないこと」だった。
これまでの西村は、14.38kmを走った2月25日の浦和戦に象徴される通り、圧倒的な走行距離を誇っていた。が、あまりにも走りすぎるあまり、味方のスペースを消したり、自分自身もここ一番でパワーを出し切れなかったり、フィニッシュの精度を欠くようなシーンがあったようだ。それをコーチングスタッフから指摘され、改善の必要性に気付いたという。
「映像をもらったんですけど、無駄な動きが多いことが分かった。力の使いどころや強度はもっと伸ばせる部分があるし、走りの質も上げられる。相手に怖さを与えないと意味がないんで」と本人も語る。その結果、この日の走行距離は11キロ台に低下したが、本人の目指す「メリハリ」の一歩にはなったはずだ。
確かに、緩急をつけた走りができるようになれば、ゴール前への入ってくる鋭さや迫力も増し、得点数も伸びてくるだろう。20日から始まる代表活動で、鎌田大地や久保建英といったテクニカルなタイプのトップ下を競うことを考えると、オフ・ザ・ボールの精度を上げていくことは必須。そういった異質な選手が1人いることによって、代表の攻撃バリエーションも広がる。西村は「新生・森保ジャパンの新たなエッセンス」として生き残りを図る布石を打ったのである。
●試合で現れた「動きすぎない効果」
そんなトライもマリノスの攻撃活性化につながったと見ていい。彼らは後半11分、松原健の豪快なミドルシュートで待望の先制点を手に入れる。この場面でも、直前のスローイン時に西村が左サイドで相手2人を引き付けながらエウベルにパス。鹿島守備陣が全体的にマリノスの左サイド寄りになり、右サイドに大きなスペースが空くきっかけになった。これも「走り過ぎずにポジショニングで勝負する」という彼らしいプレーだったと言える。
さらにマリノスはこの6分後、オウンゴールから2点目を奪い、勝負を決定づける。喜田拓也が右からクロスを上げた瞬間、西村はゴール前に詰めることなく、ペナルティエリア内のやや外側の位置にステイしていた。
最終的には常本佳吾が蹴り込む形にはなったが、もしもアンデルソン・ロペスやエウベルが競っていたら、こぼれ球を押し込むような決定機が生まれた可能性が大だ。それも「動きすぎない効果」と言える。
西村はもともと走力では群を抜いているのだから、賢い走りと位置取りに磨きをかけられれば、もう一段階、上のステージに行けるはず。そんな希望がこの日の一挙手一投足から見て取れた。
●西村拓真がサッカー日本代表で輝くには?
その後、マリノスは1点を返されたものの、最後は相手の攻撃をしのいで2-1で勝利。オリジナル10対決で貴重な勝ち点3を積み上げ、暫定3位に浮上した。西村自身は85分間のプレーでシュートゼロと数字上はやや物足りない印象もあったが、勝利に貢献できたことで安堵感を覚えたに違いない。
これで気分よく代表活動に行けるわけだが、「つねに味方とつながりながらゴールに絡む」というスタイルを未知なる面々と構築するのは難しいテーマだ。その作業を早く進めるためにも、未知なる欧州組と意思疎通を図り、信頼関係を築くことが大事。自らアクションを起こすことをより強く意識していく必要がある。
「板倉(滉)とダン君(シュミット・ダニエル)は仙台でやってたんで、久々に会うのが楽しみです」と彼は嬉しそうに話した。チームの軸を担いそうな2人が近くにいることは大きい。それも追い風にしたいところだ。
いずれにしても、西村のようなタイプは周りとの連動がなければ輝けない。本人もそのことは誰よりもよく分かっているはず。だからこそ、周囲の特徴を把握したうえで、自分を生かしてもらえる関係性を作っていくことが肝要だ。
短期間の代表活動でどこまでそれを遂行できるのか…。与えられた貴重なチャンスを最大限生かすべく、積極的かつ貪欲に向かっていってほしいものである。
(取材・文:元川悦子)
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元川悦子