
西武は3月18日、予定されていたロッテとのオープン戦が雨天中止となり、ZOZOマリンフィールドの室内練習場で、約2時間の調整を行なった。
「(現役時代)雨は『ラッキー』だと思っていました。野球選手は雨、好きです。後からしんどくなるのはわかっていても、いいリフレッシュになるので。ドームが多くなって、なかなか中止にはなりませんけどね」
そう言って、報道陣の笑いを誘った松井稼頭央監督だが、今はチームを預かる立場。開幕までの貴重なオープン戦が中止となったことをどう受け止めているのか。
「自然には勝てないんでね。まあいい休養にもなるだろうし、(開幕まで)残りも少ないなかで、こういった時間も大事でしょうし。自分がやりたいことをやれる時間でもあるので、そこに時間を費やせるという意味では有意義に使えると思います。今の自分は何が必要なのか。そういう時間も大事にしてくれというのは、(平石)ヘッドからも伝えているのでね」
プロ野球選手としての基本的な心構え。そうした松井監督の考えを早速実践したのが、ドラフト1位・蛭間拓哉だ。この機会を逃さず、以前から松井監督に聞きたかったことを尋ねた。
「バットを握った時、上にくる手はどう握っていましたかと尋ねました。僕は左投げ左打ちなので、その特徴を生かしてこう握ったらいんじゃないかなど、言っていただきました」(蛭間)
「本人もいろいろ考えて話してきたことがあって、それに対して自分の思っていることを伝えたりして。本人も何かを感じて『こうしようかな』と思っていることがあるのでね」(松井監督)
ひとつの質問をきっかけにマンツーマンレッスンがスタート。蛭間と松井監督がディスカッションをしながら、時には蛭間の体に触れたり、実際に松井監督がバットを振るなど身振り手振りも交え、約30分間続いた。
ここまでオープン戦8試合に出場し、22打数3安打。打率.136と結果を残せない試合が続いている蛭間。速球に対してタイミングが取れていないような打席も多かった。
「速い真っ直ぐに対応しようとしすぎて、手で打ちに行ってしまっていたんですが、しっかり割りを作った状態から打ちに行って、手が残っているくらいのイメージという話をしていただきました」
マンツーマンレッスンを終えてから、最後に行なった打撃練習では、現状打破へ向け好感触を得たという。
「自分の場合は打ちに行けてなかったので、トップをしっかり作って、しっかり打ちに行く。それを言われて、最後に赤田コーチに投げてもらって打ったんですが、その時に新しい感覚というか、今までにないいい感覚だったので、これを実戦でどれだけできるかなっていうふうに思っています。きょうはいい1日になりました」
予定されていたわけではなかった練習時間を、自分にとって有益な時間に変えた蛭間。その表情からも、確かな手応えを得た様子が伝わってきたが、開幕一軍への思いを尋ねられると、その表情がキュッと引き締まる。
「このままだったら本当に通用しないのは自分でもわかっています。何か変化しないと絶対結果は残せない。自分のなかでいろいろ挑戦して、とにかく自分は食らいついて毎日成長していきたいです。今日は本当にいい練習ができたので、これを今後に活かしていければと思います」
守備の面でもプロの打球を体験しながら、学びの日々が続いているドラ1ルーキー・蛭間拓哉。雨の幕張で得た気づきを浮上のきっかけにつなげられるか。開幕まで残り2週間、今後のアピールに注目したい。
取材・文●岩国誠
【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。
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