
特集・キャッチです。3年前、佐賀県唐津市の『虹の松原』で折れた松の木と車が衝突し、当時小学5年生の男の子が亡くなりました。この事故をめぐり管理が不十分だったとして、遺族が国などに損害賠償を求めた裁判が始まりました。
特集・キャッチです。3年前、佐賀県唐津市の『虹の松原』で折れた松の木と車が衝突し、当時小学5年生の男の子が亡くなりました。この事故をめぐり管理が不十分だったとして、遺族が国などに損害賠償を求めた裁判が始まりました。
誕生日ケーキを前にピースサインをするのは、川崎辿皇さんです。
幸せだったあのときから4年、そこには愛する我が子の姿はありませんでした。
佐賀県唐津市にある国の特別名勝、『虹の松原』、約100万本の松が4.5キロ連なる場所を通る県道で、痛ましい事故は起きました。
■山田記者
「事故が起きた現場です。折れた松は幹の太さが最大3メートルと比較的大きいです。道路側に斜めにせり出していて、途中で無残にも折れています。」
2019年7月、道路脇の松の木が折れて走行中の軽乗用車に衝突しました。助手席に乗っていた当時小学5年生の川崎辿皇さんが亡くなりました。
辿皇さんの母親の内山明日香さんと祖母の京子さんがこの日向かったのは、辿皇さんの命が奪われた場所です。
■辿皇さんの母・内山明日香さん(39)
「お菓子足らんやったね。これ(松の木)が道を挟んでアーチ状に伸びていて、ちょうどこの上のあたりで折れかけていた感じ。」
事故が起きたのは午後11時すぎ、辿皇さんは夏休みに入ったばかりでした。
事故当日は台風の影響で、楽しみにしていた近所の神社での縁日が中止になりました。落ち込んでいた辿皇さんを元気づけようと、大好きな『鬼滅の刃』の漫画を買いに行く途中でした。
■母・明日香さん
「いきなりドンという感じで、上から(松の木が)落ちてきた感覚があって、隣を見たら息子の胸の上に大きな木が載っていて、ずっと名前を呼んで声をかけたりしたんですけど、返事もなくて。脈もふれなくて。」
折れた松の木は、助手席に乗っていた辿皇さんの胸に刺さっていました。
■母・明日香さん
「(松の木の)管理をしっかりしてもらっていたら起きていない事故なので。それでいきなり命を奪われて悔しいですよね。」
実は折れた松の木は『放置すると将来重大な事故が発生するおそれがある』として、事故の6年半前に佐賀県が唐津市に伐採を求めていました。
にもかかわらず、事故発生まで伐採されることなく、放置されていたのです。
内山さんは、松と県道の管理体制が不十分だったなどとして国と佐賀県、唐津市に対し約3000万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
■母・明日香さん
「いままでの管理体制が本当に十分だったのか、同じことを防ぐためには今後どのような管理をすべきなのか、裁判を通していま一度しっかりと考えてほしいと思います。」
現在、内山さんは鹿児島県内で生活しています。
わが子の生きた証が並ぶ自宅で、日常が突然失われて3年がたったいまも、悲しみと向き合い続けています。
■母・明日香さん
「夏休みの宿題もそのまま。普通だったらそう思わないでしょうけど、“道”いままで自分の道を歩いてきた上で、“成長”して、“絆”が生まれて、“星空”みたいな。嫌でもそんなふうに考えてしまいますね。」
■辿皇さん
「こっちのほうが食べやすい。」
■母・明日香さん
「ママと食べ方一緒。」
内山さんと、似ている部分が多かったといいます。
6月5日は辿皇さんの誕生日でした。生きていれば14歳、中学2年生になっているはずでした。
『このむなしさを、ほかの人に味わってほしくない』。内山さんはそんな思いで、今回の訴えを起こしました。
6月10日、第1回口頭弁論が佐賀地裁で行われ、国・佐賀県・唐津市はいずれも請求の棄却を求めました。
国と唐津市は虹の松原の管理体制に問題はなかったなどとして全面的に争う姿勢です。
佐賀県は道路管理体制が不十分だったことは認めましたが、事故は倒れていた松の木に車が衝突したものだとして、「賠償責任は負わない」と主張しています。
■母・明日香さん
「人が一人亡くなったくらいじゃ、そこまで(国・県・市は)危機感がないのかなって思うし、逆に何人被害者が出たら動いてくれるのか。」
事故が起きた虹の松原の県道沿いには倒れる危険性が高いと判断された松の木が、いまも200本以上残されています。
二度と同じ事故が起こらないために、虹の松原の責任ある管理を訴える内山さんの闘いです。