追悼・門田博光さん「監督にならなかった名選手」が語っていた「野球指導は難しい」

追悼・門田博光さん「監督にならなかった名選手」が語っていた「野球指導は難しい」

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2023/01/25
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現役時代は通算567本塁打を放った門田さん(撮影・杉原照夫)

プロ野球の南海などで活躍し、40歳にして本塁打、打点王に輝いて「不惑の大砲」と呼ばれた門田博光さんが亡くなった。74歳だった。通算567本塁打、同1678打点はいずれも歴代3位の記録だが、引退後にプロ野球の世界で監督となることはなかった。しかしながら、現役選手の解説に際しては確かな“観察眼”を披露していた。

【写真】門田さんが「二等辺三角形」と評したヤクルト村上のフォーム。写真からは門田さんの指摘の意味がよくわかる

プロ野球で第一線を張る選手たちをどう見ているのか、門田さんは本誌・週刊ポストの取材に何度も答えてくれていた。昨年の日本シリーズ終了後には史上最年少で三冠王に輝いた村上宗隆(ヤクルト)について、「ボクには村上がホームランバッターではなく、アベレージバッターに見えるんですよ」と語っていた。その理由について門田さんはこう続けたのだった。

「(頭から両足が)二等辺三角形で始まり、二等辺三角形で終わる。つまり軸足にはあまり体重を乗せず、体重移動をしないで打っている。これは安打製造機と呼ばれるようなバッターの打ち方なんですよね。我々が教わったのは軸足に体重を乗せ、インパクトの瞬間にパワーを全開させるために体重移動をして遠くへ飛ばそうとするやり方。軸足に体重を移すところからインパクトに向けて、出力を『弱』から『強』へと上げていくイメージです。村上はその『弱』がなくて、ゼロからいきなり『強』になる印象。若さと恵まれた肉体があるからできること」

村上は昨年、シーズン56本塁打を放ち、王貞治さんの持つ日本選手最多記録(55本)を更新した。門田さんは1981年7月に当時の日本記録となる月間16本塁打を達成しているが、この記録もまた王さんの記録を塗り替えるものだった。その経験と重ね合わせながら、こんなふうに話していた。

「(村上が56本目を打つまでに時間がかかったのは)プレッシャーですよ。ボクも月間ホームラン記録の時は、大先輩の名前にこんなに気圧されるのか、報道にこんな重圧を感じるのか、と思った。村上も勉強したでしょうが、この先もいろんなことがある。それにどう立ち向かえるかでしょうね。

来季以降は、史上最年少三冠王、日本選手最多の56本という看板を背負っていかないといけない。56本打ったことでみんなが意識する。打てないとマスコミが騒ぐだろうし、打席では勝負を避けられることが多くなる。勝負を避けられるようになると体が動き始め、スランプにつながる。それでも(打てるボールを)待たないといけない。その我慢ができるかでしょうね」

「狸や鹿、猪が玄関先に座っているようなところ」での療養生活

23年の現役生活で3度の本塁打王に輝いた門田さんならではの「ホームランを打ち続けるために必要なこと」の解説だった。門田さん自身は1988年に惜しくも三冠王に届かず二冠だったが、村上については、「打率はまだ上がる。打率が上がるということは、これからも三冠王のチャンスは何回もあると思いますね」と嬉しそうに話していた。

衰えぬ観察眼を披露していた門田さんだが、1992年の引退後はプロ野球の監督としてユニフォームに袖を通すことはなかった。引退後は糖尿病を患い、脳血栓で倒れた。その後は腎不全で週3回、1日4時間の透析を受けるなど、病魔との戦いが長く続いた。

58歳の時、兵庫県内の山間部の一軒家でひとり暮らしを始めた。誰も知らない静かなところで療養する目的だった。「朝起きると野生の狸や鹿、猪などが玄関前に座っているようなところ」と説明していた。ただ、そうしたなかで門田さんは“野球指導”にあたったことがあるとも明かしていた。

「このあたりは阪神ファンばかりで、パ・リーグのボクのことは誰も知らなかった。数年すると徐々に知られるようになり、子供たちに野球を教えたこともあります。でも、早く上手くさせてやろうと、どんどん教えてしまう。子供たちはすぐに消化不良ですわ。子供相手では成果が見えてこないから難しいですね。それですぐに諦めました(苦笑)」

昨年の夏過ぎのこと、門田さんに連絡を取ろうとしたが1か月近くつながらないことがあった。自宅の電話に留守電を残しておいたところ、「家の前で転んで両足を骨折して入院してたんや」と笑いながら連絡をしてきてくれた。年末も門田氏の元気な声を聞いたところだった。あまりに急な訃報に信じられない思いである。

■取材・文/鵜飼克郎(ジャーナリスト)

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