松尾スズキが語るコロナ禍で芽生えた連帯感と責任感「声を上げられる機会をいただいたんだから、上げないわけにはいかない」

松尾スズキが語るコロナ禍で芽生えた連帯感と責任感「声を上げられる機会をいただいたんだから、上げないわけにはいかない」

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  • 更新日:2021/09/15
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「第11回衛星放送協会オリジナル番組アワード」授賞式が9月7日に都内で行なわれ、番組部門文化・教養部門で最優秀賞に選出された「劇場の灯を消すな!Bunkamuraシアターコクーン編 松尾スズキプレゼンツアクリル演劇祭」(WOWOWライブ)より松尾スズキが登壇した。

同番組は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて公演中止が続いていた劇場において、オリジナル番組を制作するWOWOWの演劇プロジェクトの第一弾。松尾が芸術監督を務める東京・Bunkamuraシアターコクーンを舞台に、アクリル板で作られたアクリルボックスの中に入った演者が歌、踊り、対談、朗読、演劇、剣劇などを、唯一の観客である松尾の前で繰り広げるというもの。

今回、授賞式後の松尾にインタビューを行ない、受賞の感想や番組制作に込めた思い、コロナ禍の演劇界を憂う心境などを語ってもらった。

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――受賞した感想は?

「こういった賞があることを知らなかったので、本当に降ってわいたような話なのですが、素直にうれしかったですね」

――番組を手掛けることになった経緯は?

「新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中断された公演が山ほどあって、(演劇に携わる)みんな状況が見えない苦しさの中にありました。そんな中で、『劇場の灯を消すな!』っていう番組を作りませんかというお話をいただいて、なにかどんな形であれ演劇という文化を忘れられないように、あれこれ知恵を絞ったという感じです」

――オムニバス形式で舞台のさまざまな要素が楽しめる構成が魅力でした。

「ひとりひとりの稽古時間がとれない状況なので、パートごとに分かれたバラエティショーにしようということで、ああいったかたちになりました。元々、舞台を使ったバラエティショーをやりたいという構想があったので、そういった意味ではちょうど良かったなと」

――アクリルボックスの中に演者を入れてしまうというコロナ禍を逆手に取った発想に驚かされました。

「ちょうど世間がアクリル板に注目していた時期だったので、それを使ってやるというのは自然だし、実際に(感染症対策としても)安全だなと思いました(笑)」

――また、出演者の皆さんの豪華さにも驚きました。

「そうですね。皆さんテレビのタレントさんではなく、舞台を大事に思ってくださっている俳優さんたちなので、この番組の意義を感じてくれたのかなと思って、すごくありがたかったですね。多分、みんなすることないだろうなと思ってたんですけど(笑)。それでもあんなに集まってくれたのはすごくうれしかったです。自分自身がBunkamuraシアターコクーンの芸術監督でもあるし、空いている劇場が本当にもったいないなと思っていたので、出演してくださった皆さんも同じ思いで劇場を愛しているんだなと感じました」

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――視聴者にどういったところを見てほしいという思いで演出されたのですか?

「出鼻をくじかれた人間たちがジタバタするさまですね。『コロナ禍だからって人間は生きていかなければならないんだから、それは右往左往するよ』という。『不要不急』と言われて舞台がバチンバチンと切られていって、お酒を飲むところが閉ざされていく中で、『どう闘うか知恵を絞るのが人間だろう』と思うので、滑稽さも含めた“生きざま”をエンターテインメントや笑いというかたちでできればいいなという思いで作りました」

――作品から松尾さんの舞台への深い愛情を感じました。

「『どうも僕らのやっていることは演劇界では評価されない』という思いがずっとあって、『だったら勝手にやってるわ』みたいな気持ちでずっとやっていたのですが、急にコロナ禍になってどの劇団も平等に苦しいわけで、そういった悲鳴をあちこちから聞いて、『そういえば同じ仕事をしてたんだよな』と急に連帯感みたいな気持ちが芽生えたんです。そんな中で、俺が代表して声を上げるなんておこがましくてありえないんですけど、声を上げられない人たちがいる中で声を上げられる機会をいただいたんだから上げないわけにはいかない、ということですよね」

――一方で、コロナ禍という状況を皮肉った側面から、松尾さんの“怒り”みたいなものも表現されたのではと感じたのですが?

「『新型コロナウイルスというものが、どれくらい怖いものなのか』ということが今よりもっと分からないという状況の中で、劇場に関わる人間は二転三転する政府の方針などにすごく振り回されていたんです。また、風評被害みたいなものもあって『舞台なんか要らない』という人たちもいたりして…。そういった中で、『俺たちのやっていることは要らないのか? 要るのか?』という自問自答もあったり、たとえやるにしても『やるから来てください』とは言えない。そういった袋小路感というのは、(番組での)アクリルボックスの中で闘おうとしているのに闘えないという座頭市の姿とかに出てるんじゃないかなと、後から思いましたね」

――最後に演劇ファンに向けてメッセージをお願いします。

「なかなか『来てください!』と言えない部分があってつらいのですが、先の状況が見えない中で何らかの形で演劇界を応援していただけるとうれしいです。『少しでも応援していただけるのなら、グッズでもいいから買ってくれ』『なんとかして生き延びさせてくれ』そういった思いです」

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<放送情報> 「劇場の灯を消すな!Bunkamuraシアターコクーン編 #1 松尾スズキプレゼンツ アクリル演劇祭」 放送日時 :10月31日15時30分~ チャンネル:WOWOWプライム ※衛星放送協会オリジナル番組アワード 番組部門 文化・教養 最優秀賞 受賞記念として、特別にリピート放送します!

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原田健 撮影=中川容邦

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